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次の1日は机に座りぼんやりパソコンと向き合いながら、 昔好きだった歌手の曲をyoutubeで拾い上げては涙を流した。その 次の1日は24時間荒れ狂い、部屋中のものを手当たり次第に壊して回った。 万能19
2014-03-29 19:17:08マンションの下の階のOLが苦情を入れに来たのを鬼の形相で追い返し、 のみならず呆れて帰ったそのOLの後をつけ、この女性の部屋の表戸を思い切り蹴飛ばした。 日がのぼるころ、 ようやく頭を冷やした彼女が達した結論は、決して座しては黙さぬというものであった。 万能20
2014-03-29 19:19:31(横取りされたのだ) 女学生はコンビニから大量に調達してきた惣菜をほお張り食いつつ、 数日前の新聞一面を飾る万能細胞発明者の写真を睨み付けた。 万能21
2014-03-29 19:20:27(盗み取られたのだ。私の高貴なるアイデアを。こんなどこの馬の骨とも知れぬ不遜な輩に) 彼女はこの研究者が成し遂げた業績に関する記事を斜めに読み飛ばすと、 その結びに記された彼のプロフィールに着目した。 万能22
2014-03-29 19:22:50研究者の履歴にはいずれも錚々たる大学や研究所の名が連なり、 彼がこの分野で常に第一線を走り続けてきたエリートであることは誰の目にも明らかであった。 (知らない) しかしながら彼女はその経歴を一笑に付した。 万能23
2014-03-29 19:23:45(私はこの男を知らない) (私がこの男を知らない) あらゆる栄誉の装飾を剥ぎ取り、かの研究者に「愚物」の烙印を押すには、 彼女にとってはたったそれだけの事実で十分であった。 万能24
2014-03-29 19:25:34(こいつが真に優れた存在であれば、とっくの昔にこの私に認知されているはずだ) (私の目にもかからぬ小物が、生物学の歴史を書き換えようなど人類に対する冒涜でしかない) (この男は世界を愚弄している) 万能25
2014-03-29 19:26:26(そもそもこんな輩が、なぜ本来私の手柄となるはずであった世紀の大発見に達しえたのか?) (捏造ではないのか?) (捏造であるべきだ) 万能26
2014-03-29 19:27:16(細胞にある種の細工を施せば、それが個体を超え先代の形態に遡るのではという着想をやつが抱けたこと自体納得いかない) (そんな奇抜なアイデアは、世界中のどこを探してもこの私にしか思いつかないものであるはずなのに) 万能27
2014-03-29 19:27:55女学生は不服に顔を歪ませながらパソコンを操作し、 研究者が籍を置く大学のホームページから彼についてのさらなる情報を漁った。 ある文字列が彼女の目に飛び込んできた。 万能28
2014-03-29 19:28:36それは某細胞生物学学会が1年前に開いた研究発表大会のプログラムに関するもので、 なぜそれが彼女の目に留まったかといえば、 ほかならぬ彼女自身がその大会でプレゼンテーションを行っていたためだ。 万能29
2014-03-29 19:30:51彼女が発表を行った同じ日、同じホールで、別な研究グループがプレゼンを行っていた。 そのメンバーの中に、問題の研究者の名があった。 万能30
2014-03-29 19:32:13「ほら見なさい盗んだんじゃないの!!」 彼女は朝日の差し込む室内で絶叫した。 「こいつはここで私の思考を盗んだのよ!!」 万能31
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