二人の母【テドイア】

大崎巧実（裏） @mboxtw2

そのお話のテッドさんはとある良い家の跡取り。キメラ設定はなく、普通に人間。年頃になったから結婚相手としてイアたんを連れてこられたのでした。 ほぼお見合い状態だったけど、それでも仲良くなって結婚するんですね。まあそこまでは話が始まる前の話。この話は結婚した後。

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結婚する前から、やっぱりテッドさんは女癖が悪くて、金持ってるってのもあって結構モテたわけです。で、イアたんとつきあい始めても女の子と遊ぶ癖は直らなかった。 でもイアたんは仕方ない人ね、って笑って見過ごしてた。本気じゃないのわかってるから。

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テッドさんは必ず毎日イアの所に帰ってくる。誕生日とかも全部イアを優先してくれる。だからイアは特に気にもしてなかったんです。『妻』として揺るがない立場と、実感出来る夫の愛情。安定した日々。気持ちに余裕があったからこそ、女遊びも仕方ないって笑えたんです。

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で、そんな折り。イアたんが妊娠するんですね。それを知ったテッドさんはもう大喜び。けど、イアたんはそんなに身体が強い方ではないので、流産の危険があった。なので絶対安静とばかりに入院してしまうのです。 独り家に残されたテッドさんは心配で毎日のように顔を出しに行った。

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そして無事に産まれて欲しい一心で、テッドさんは今まで付き合ってた女達と全員縁を切るんです。ただの『遊び』でしかない女達だったから、平気で終わりに出来た。 イアと、産まれてくる子供の方が大事だったんです。 けれど、一人だけ。切れない女の子が居た。それがモモちゃん。

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モモちゃんは小さい頃からテッドさんと一緒だった。母親がテッドさんの乳母みたいな感じで、一緒に育ってきた仲。年頃になり、手を出されてしまったけれど（笑） 女にだらしないテッドさんだとわかってて許したのは、それでもモモちゃんはテッドさんが好きだったから。

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でもテッドさんにはとっくに婚約者がいたから、恋をしても結ばれる事はないと諦めてた。ほぼセフレのような状態でテッドさんと繋がってた。 どうしても、その最後の糸を断ち切る事が出来なかったのです。すべて振り切って、テッドさんと別れる事が出来なかった。それはモモの甘さ。

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テッドさんが好きで、頼ってくれるのが嬉しくて、ずるずると続けてしまった関係。それはテッドさんがイアと結婚してからも続いていて、イアが入院して一人になってしまったテッドさんのお世話をモモがするんですね。

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モモは家事一切が得意だし、テッドさんは結構色んな所がだらしない。ご飯作って、掃除洗濯という身の回りの事も基本的に誰かにやって貰ってた人だから一人じゃなんにも出来ないのです。 で、それもあってテッドさんはモモを切る事が出来なかった。

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身の回りの世話をしてくれる。それだけなら他の家政婦を雇っても構わなかったんだけど、テッドさんはモモを選んだ。イアとは違う意味でモモが好きだったから。 愛しているのはイアだし、大事にしたいのもイアで、どっちをとると言われてもイアを取るとわかっていたんだけど。

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イアがいなくなって、寂しかったテッドさんは唯一信頼してたモモだけは傍に置いた。なじみのある女で、身の回りの世話も昔からしてくれてた人で。まあ、都合がいい女と言えばそうなんだけど。 モモが自分の事好きだとは知らないテッドさんは寂しいとモモに縋るんですね。

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モモはテッドさんが好きだから縋られると振り解けない。なまじ母性の強い彼女だからそんな男に物凄い弱いわけです。 テッドさんはただ寂しいだけと知っていて、愛してくれないのもわかってて、モモはそれでもテッドさんに抱かれるんです。利用されてるのも何もかも全部わかってて。

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そんな生活を続けていたある日、事件が起こる。 久しぶりにイアが病院から出てくるんです。お腹の子も安定期に入ってきたし、数時間くらいなら出てきてもいいよ、って。 テッドさんと二人夫婦水入らずで出かけるのです。ゆっくりのんびりと散歩を楽しみながら。

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そんな時。二人が歩いていた歩道に車が突っ込んでくるのです。人通りの多い道で、何人も跳ね飛ばしながらやってくる暴走車。 テッドさんは咄嗟にイアと子供を守る為に盾になるんですね。車の直撃を受けてしまう。 当然病院送り。集中治療室に運ばれた彼はずっと目を覚まさなかった。

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イアもイアでテッドさんが身を挺して庇ってくれたおかげで命に別状はなかった。しかし、それでも傷は深くて重傷。 ぼろぼろになった身体で、テッドさんを探すんです。そうして、沢山の管に繋がれて眠る彼を見付け、そのまま倒れてしまうのでした。 ショックが強すぎた。

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ただでさえ、あまり強くはなかった身体。それに事故の衝撃と、過度の精神的負荷。それが積み重なり、イアは流産してしまうのです。 テッドさんは眠りの中。あんなに楽しみにしてくれた子供はもう居ない。目を覚ました時、なんて言えば良いんだろうって悩み始めるのです。

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毎日ふらふらになりながら通ったテッドさんの病室。彼が目覚めるまでには長い時間がかかった。 やっと目を覚ましたテッドさんだったけれど、事故の傷が深すぎて彼の身体は動かない。手を挙げる事すら出来なかったのです。 喋る声も掠れて辿々しくて。

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そんなテッドさんがイアに聞くんです。子供は無事か？って。身体が動かないからイアの様子も上手く見れない。だから今どうなっているのかテッドさんにはわからなくて。 その問いかけにイアは上手く答えられなかった。大丈夫としか言えなくて。 そうか、って笑ったテッドさんに本当の事は言えなかった

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子供が生まれるのを凄くテッドさんは楽しみにしてた。そしてやっと目を覚ました今も、子供の事を気にしてる。そうしてイアは悩み続けるんです。腹の中に子供はいない。 そして追い打ちをかけるように、もうテッドさんは子供が作れないと医師に告げられるんですね。

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テッドさんは下半身やられちゃって、リハビリが上手くいけば立ち上がるくらいは出来るかもしれない、と言った酷い状況で。内蔵も酷く傷付いてしまっていたから、二人目を作る事は絶望的だろうって告げられる。 イアは追いつめられてしまうんですね。テッドさんになんて言えばいいのかと。

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そんな風に悩んでいた時、イアに告げられるんです。モモが妊娠してる事。それがテッドさんの子供だって事。 それを知って、イアはモモに言うんです。その子供を譲って欲しいと。 絶対幸せにするし苦労はさせないからお願い、ってモモに必死に頼むんですよ。

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勿論、モモがそれを承諾出来るわけはない。自分の腹にいるのは恋した人の血をひいた子で。そうでなくても母性の強いモモにとって子供は特別。 あげられないって突っぱねてたけど、でも悩み始めるんですね。 時折目を覚ますテッドさんが告げる、言葉に。

大崎巧実（裏） @mboxtw2

まだ眠る時間の多いテッドさんが時折意識を取り戻し、僅かな時間話が出来る。 そんな時にテッドさんは語るのです。元気になりたい、って。こんな状態じゃ子供を抱く事すら出来ない、って。 会いたいって言うんです。産まれてくるイアの子に。もう死んでいる事を知らずに。

大崎巧実（裏） @mboxtw2

モモの腹の中で、子供は順調に育っていく。イアはどうかと何度もモモに頼みに来る。テッドさんの為に。 彼がどれだけ子供を欲しがっていたのか。そして子供の幸せを願うなら。 悩みに悩んだモモはイアに子供を渡す事を決めるんです。 産まれた子はイアの手に渡り、その顔をテッドさんは見るんですね

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イアは双子だったの、ってテッドさんに告げるんです。もう一人は死んでしまったけれど、一人は無事に産まれたよ、って。 死んでしまった子に残念そうな顔をするけれど、生まれた子供に物凄く嬉しそうな幸せそうな顔で笑うのです。それをモモも見てた。