古鷹青葉を見守る衣笠さんbot #20

更新二十回目のまとめです。 青葉と祥鳳の互いに言いたかったこと。鎮守府の小さな恋模様。そして第六戦隊、出撃。
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古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

真っ赤な顔を斜め下に向けて敷波ちゃんが言う。知らず顔が綻ぶ。 「何笑ってんの!?」 「んーん、可愛いなと思って。敷波ちゃん、大井さんが好きなんだ?」 敷波ちゃんの前でかがんでそう言うと、彼女の顔がますます赤くなった。 「そっそそそんなことないし!どうせあたしなんか可愛くないし!」

2014-04-20 23:59:23
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

敷波ちゃんがぶんぶん首を振って否定するけれど、誰の目にも彼女の気持ちは明らかだ。ニヤニヤがおさえられないでいると、いつの間にか青葉も私の横に来て興味深そうに話を聞いていた。 「なんなんだよもー!衣笠さんたちには関係ないでしょ!?」 「まあね。でも、いいなあって思うのよ」

2014-04-21 00:04:30
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うう、と敷波ちゃんが黙り込む。大井さんは、敷波ちゃんの気持ちを知っているのだろうか。ううん、あの様子だと多分北上さんも知っているのだろう。その上で大井さんに敷波ちゃんが見送りに来ていることを教えたのだから、まあ勝ち目はないのかもしれない。あの二人は仲良しカップルとして有名だし。

2014-04-21 00:09:55
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

それでも、一生懸命大井さんに恋する敷波ちゃんの気持ちは尊くて、キラキラ輝いている。それは、決して否定されたりするべきではないと、そう思う。 「なんなんだよもー!あ、あたしそんなんじゃないんだからね!?」 私たちにからかわれてると思ったか、敷波ちゃんが頬を膨らませて怒り出した。

2014-04-21 00:15:31
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ごめんごめんと敷波ちゃんをなだめようとした時、背後からおっとりした声が聞こえてきた。 「あら、敷波こちらにいたんですか。お茶の時間ですよ?」 振り向くと、敷波ちゃんの姉妹艦、綾波ちゃんがそこにいた。その場の構図を見て、不思議そうに首を傾げる動作が可愛らしい。

2014-04-21 00:21:21
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「あ、今行く!」 敷波ちゃんが助かったとばかりに綾波ちゃんに駆け寄った。どうしたんですか?と尋ねる綾波ちゃんをいーからいーからと誤魔化して背中を押して脱出を図る。 「あ、そうだ青葉さんあたしのこと記事にしたりなんかしないでよね!絶対だよ!」 ダメじゃない認めちゃ、と可笑しくなる。

2014-04-21 00:26:09
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しませんよ、と答えた青葉の言葉を背中に、二人がその場を足早に去っていく。綾波ちゃんが何か言って、敷波ちゃんを笑わせたのが遠目に見えた。その時の綾波ちゃんの顔を見て、私はおや、と思った。その表情が、さっきまでの敷波ちゃんの表情とそっくりに思えたからだ。どう思う?と青葉の方を向く。

2014-04-21 00:30:59
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青葉は、何か感慨深そうに二人の背中をじっと見つめている。そんな青葉の横顔を見て、ふと私は聞いてみたくなった。 「ねえ、青葉。艦娘になって良かったでしょ?皆にまた会えてさ。皆、それなりに楽しくやってるし」 私の言葉を聞いても、青葉は振り向かなかった。私は失敗したかも、と思った。

2014-04-21 00:37:26
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祥鳳さんと瑞鳳、大井さんと北上さん、敷波ちゃんと綾波ちゃん。彼女たちの様子を見て、私は今ここにいられて良かったと思った。だから思わず聞いてしまった。けれど青葉はまだ建造されて艦娘になった時と同じ気持ちなのかもしれない。艦娘になんかなりたくなかったと今でも思っているのかもしれない。

2014-04-21 00:42:35
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こんなことを聞くのはまだ早かったかなとひそかに悔いていると、青葉が前を向いたまま「戻りましょうか」と言ってきた。うん、とだけ返して私たちは鎮守府内に戻った。海風が心なしかいつもより冷たく感じられた。

2014-04-21 00:46:21
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「あんたたちどこ行ってたの!?ほらさっさと準備して!」 私と青葉が執務室に入ると、早速雷ちゃんの大声が飛んできた。 「準備って何?提督」 「決まってるでしょ!第六戦隊でオリョール海に出撃よ!敵も強くないし、慣らしとしてはちょうどいいでしょ」 昨日の今日でいきなりなのね。

2014-04-21 00:53:54
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

執務室内を見回すと、古鷹ねーさんと加古、それに叢雲と吹雪はすでに出撃準備を終えて待機していた。もっとも、加古はソファに転がって居眠りしてたけれど。青葉と共に、手渡された艤装を慌てて装着していると、古鷹ねーさんが雷ちゃんに尋ねた。 「提督、旗艦は誰にしますか?」 「当然、青葉よ!」

2014-04-21 00:58:19
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

雷ちゃんの言葉に、青葉が飛び上がった。 「む、無理ですって!青葉、もしまた……」 尻込みする青葉の背中を雷ちゃんがぱんと叩く。 「何情けないこと言ってるの!大丈夫よ、敵艦はそう強くないからあんたたちの今の練度なら余裕だわ!それに青葉も旗艦に早く慣れておいた方がいいでしょ?」

2014-04-21 01:04:06
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「でも万が一」「もう少し後でも」と抵抗する青葉を雷ちゃんが力尽くで執務室から押し出す。私たちもそれに続く。 「大丈夫だよ、青葉。青葉ならきっと出来るから。私たちもサポートするし。ね?」 そう古鷹ねーさんに説得された青葉を先頭に、さっき祥鳳さんたちを見送った埠頭に私たちは立った。

2014-04-21 01:11:18
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

まだ不安そうな顔をしている青葉の肩を大丈夫よ、と叩く。一人ずつ海面に降り立ち、眼前に広がる青い海の彼方を見つめる。私たちはこれから取り戻す、何もかもを。見てなさい、四隻揃った第六戦隊の実力を。第六戦隊、オリョール海に出撃よ!

2014-04-21 01:15:40