ニチョーム・ウォー……ビギニング #6

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヘンチマンはここまでのスーサイドのイクサぶり、元闇プロレスラーのスレッジハマーを破った事実を鑑みて、操るジツの系統を予測し、危険を避けるように動いていた。なんらかの吸収行為を用いるニンジャだ。四つに組めば後悔する事態を招くだろう。おもむろに彼は拳をスーサイドに向けて突き出す。42

2014-05-18 23:39:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」BOOOM!「グワーッ!」スーサイドは不意を打たれ、飛来した拳の直撃を受けて吹き飛んだ。ジャラジャラと音を立てて、射出された右拳は鎖ごと引き戻され、再び手首に収まった。「おう、立てるか、ガキィ。ニンジャ耐久力だけは随分じゃねェか。楽しみ甲斐があるッてもんだ」 43

2014-05-18 23:44:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「幾らでもやってやら」スーサイドは咳き込み、赤い唾を吐いた。ジェット推進の鉄拳はニンジャにとっても恐るべき攻撃だ。胸が火傷を負い、肋数本が損傷している。ソウル・アブソープション・ジツを発揮する対象はこのヘンチマンだけだ。ニンジャは耐性が強く、そう易々と力を吸う事はできない。44

2014-05-18 23:52:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「俺は女を痛めつけるのが好きで、テメェのような生意気なガキはその次だ。一番いいのはその両方だ。わかるか?」「イヤーッ!」「イヤーッ!」縁側の下、白砂の上では、ヤモトがジュクレンシャの攻撃を避け、ときに間合いを詰めては素手のカラテを繰り出し、イアイ斬撃を躱す。膠着状態が続く。 45

2014-05-19 00:01:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヘンチマンは訝しんだ。二者の周囲を飛び回る蝶のアトモスフィアは異様だ。「イヤーッ!」微かな思考の隙をつき、スーサイドが襲いかかる!「イヤーッ!」……「イヤーッ!」ジュクレンシャは再びヤモトの回避地点を捉え、斬撃を浴びせ、蝶ごと切り裂いた。ヤモトはややずれた地点の砂を踏んだ。46

2014-05-19 00:05:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

オリガミ蝶はジュクレンシャがフェロモン源であるかの如く纏わりつく。不快な蒸し暑さすら錯覚させる程に。「イヤーッ!」ヤモトの蹴りに対応する時間がコンマ数秒遅れ、ジュクレンシャはこれを返す刀で斬るには遅く、腕でガードせねばならない。致命傷が致命傷にならず、攻撃には手こずらされる。47

2014-05-19 00:11:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヤモトもしかしジュクレンシャ同様にもどかしい思いをしている。この蝶が彼女のコントロール下にあるのかどうかもはっきりしない。通常のオリガミミサイルと違い、他のものに触れても爆発することがない。彼女のオリガミは全てが蝶の形を取って宙に舞い、アウトオブアモーだ。 48

2014-05-19 00:14:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ヤモトは蹴りをガードしたジュクレンシャに、ショートフックを繰り出す。敵は得物持ちであり、その斬撃一つ一つが致命傷につながる。こちらは素手のカラテだ。この状況はジリー・プアー(徐々に不利)だろうか。だがヤモトは立ち合いの状況が徐々に改善している事を自覚し始めた。49

2014-05-19 00:19:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

拳がジュクレンシャに届き、斬撃軌道の予測は成功し易くなってきている。蝶だ。纏わりつく蝶たちがそれを可能にさせている。この蝶はきっと答えなのだ。でなければ、あのような幻など見はすまい。踏み出せ……踏み出せ。「イヤーッ!」「グワーッ!」チョップ突きがジュクレンシャの鎖骨を捉える!50

2014-05-19 00:24:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」更にローキック!「グワーッ!」初めて二撃入った!ジュクレンシャが刃を繰り出す!蝶が斬撃軌道上に集まる。「イヤーッ!」イキツモドリの刃が蝶を切り裂きながら迫る。ヤモトにはそれが見える!「イヤーッ!」ヤモトは身体を捻って下へ躱し、回し蹴りで反撃した!「グワーッ!」51

2014-05-19 00:28:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヤモトの背に焼けるような痛みが走った。無傷ではない。ジュクレンシャが更なる斬撃を繰り出す!「イヤーッ!」ヤモトはこれを回避!振り抜いた刃に再び蝶が寄り集まる。なんたる厭わしきジツであろう!他人事のようにヤモトは恐れる。再三の斬撃が襲い掛かる!「イヤーッ!」 52

2014-05-19 00:31:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

放たれたカラテ・シャウトは屋内のスーサイドであった。ヤモトめがけ、クルクルと回転しながらドス・カタナが飛来した。ゴケニンの得物だ。おそらく死体の脇に落ちていたそれを、イクサの合間にスーサイドが蹴ってパスしたのだ。「イヤーッ!」「グワーッ!」ヘンチマンがスーサイドを殴り倒した。53

2014-05-19 00:33:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ここに死線がある!ニンジャアドレナリンがヤモトを焼き、痛みを流し去った。その瞬間、彼女は纏わりつく蝶と繋がったように思った。ほんの一瞬の高揚だった。「イヤーッ!」ヤモトは跳んだ。蝶がジュクレンシャの剣に集まり、殆ど覆い隠すほどだった。ヤモトは飛来したカタナを掴み取った!54

2014-05-19 00:48:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「「イヤーッ!」」ヤモトは空中で瞬時に三回転し、ジュクレンシャに斬りつけた。ジュクレンシャもまたこの立ち合いを死線と受け止めていた。オリガミの蝶が、間合いを、機を、微かに狂わせる。それがジュクレンシャのイアイを妨げていた。彼は異常な環境下に適応する為にこれだけの時間を要した。55

2014-05-19 00:56:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イキツ」ジュクレンシャが砂を蹴り、動いた。刀匠キタエタの手になる魔剣、イキツモドリ。その刃は今、眩しいほどの桜色の光を纏っていた。あたかもそれは切り裂かれたオリガミ蝶の血で染められたようで、しかも更なる蝶達が光をすすりに群がっている。不吉だった。そして実際、凶運が訪れた。56

2014-05-19 01:02:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヤモトはイキツモドリの軌道を読んだ。避けられない斬撃だ。だから、動かした。切っ先はヤモトを上に避け、髪の毛の幾筋かを斬ったのみで、通り抜けていった。ヤモトはジュクレンシャの背中合わせに着地した。ジュクレンシャの脇腹が裂け、血が噴き出す。ジュクレンシャは切り返す。「モドリ」 57

2014-05-19 01:06:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヤモトはイキツモドリの軌道を読んだ。避けられない斬撃だ。だから、動かした。切っ先はヤモトを大きく逸れ、夜気を虚しく薙いだ。ヤモトはジュクレンシャと再び交差した。ジュクレンシャの胸が斜めに裂け、血が噴き出す。ヤモトはザンシンした。ジュクレンシャは目を見開き、己の運命を知った。 58

2014-05-19 01:13:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

イキツモドリの二度の斬撃を、ヤモトは防ぎきった。しかもその際ジュクレンシャを斬った。イキツモドリには超自然の力が侵食していた。オリガミ蝶が注ぎ込んだサクラ・エンハンスだ。これで切っ先を狂わせ、回避の助けとした。ヤモトはさきの敗北に学び、ジツで打開し、カラテでケリをつけたのだ。59

2014-05-19 01:21:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「なんと無慈悲なワザマエよ。恐れ入った」ジュクレンシャはたたらを踏んだ。噴き上がる血が天を衝いた。彼はよろめき、両膝をついた。そしてクナイを放った。「イヤーッ!」「イヤーッ!」ヤモトはこれをカタナで弾き飛ばした。ザンシンである。ジュクレンシャは虚無的に笑った。「サヨナラ!」 60

2014-05-19 01:28:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ジュクレンシャは爆発四散した。イキツモドリはセンコ花火めいたサクラ・エンハンス爆発で宙に弾かれていく。ヤモトはドス・カタナを白砂に突き刺し、身体を支える。イクサがまだ終わっていない。「イヤーッ!」「イヤーッ!」ショーゴーとヘンチマンに加勢するか?それともエンプレスを目指すか?61

2014-05-19 01:32:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヤモトの思考は答えにたどり着かなかった。ドウン!唐突に、全く唐突に、闇の中から無灯火のゴールデン・ヤクザリムジンがロケットスタート加速で出現し、ヤモトを撥ねた。ドアが開き、デッドフェニックス・クランのオヤブンが優雅に降り立った。落下したイキツモドリがボンネットに突き刺さった。62

2014-05-19 01:38:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【ニチョーム・ウォー……ビギニング】#6 終わり。#7 に続く

2014-05-19 01:38:49