座礁艦隊その３１　～五十鈴～

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

<a-ground fleet> #座礁艦隊

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

目は砂だけを映し、耳は風だけを聞いている。 #座礁艦隊

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砂嵐の中で作戦を行うのは、三日目の演習以来だ。つまり実戦は初めてになる。だけど視界はほとんど利かず、隣の人の声も暴風にかき消されてしまう。艦娘の聴力は高いが、聞き分ける能力は人間とほとんど変わらない、らしい。まあ、ともかく、砂嵐しか見えないし聞こえない。 #座礁艦隊

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風速計は13メートルを記録している。時々煽られるが、問題はない。私たち三隻は物々しい防塵マスクとバイザーを被り、顔は見えない。艤装の吸気口にもカバーを取り付けてある。私たちにとって砂は人間以上に大敵だ。機関部に直接入るからだ。自浄機能はあるが、限度 も当然ある。 #座礁艦隊

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耳栓代わりのヘッドセットも着けてある。ただし頭は丸出しで、髪の毛の間に砂が入り込んでくる。帰ったらシャワー直行だ。ノイズキャンセリングをオンにすると、砂嵐の音がかき消えた。 「結局、髪は短くしたままなんだね」 極短距離相互通信で朧が言った。肉声と同じように会話できる。 #座礁艦隊

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頭を触る。ちくちくとした感触。隠されていないおでこ。もうあの自慢の長髪の感触を忘れそうだった。 「せっかく明石さんが来て、ドックがちゃんとなったのに」 うーん。なんていうか。こっちの方が楽なのよね。と、私は答えておいた。嘘ではないが、最大の理由ではない。 #座礁艦隊

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

私はここにいる間、髪を短くしたままにしておくことにした。艦娘の頭髪は人間のように自然と伸びるが、もう何度か自分で切っている。不思議と抵抗は無かった。一度腹を決めてしまえば容易いものだ。で、何のためによね。そうね。簡単よ。ここにいるのは、地上の叢雲だからよ。 #座礁艦隊

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

着衣装甲は迷彩服。手持ちの武器は重機関銃と長良の連装機銃。頭はおでこが見えるベリーショート。叢雲であることを示す記号は、もう背中と頭の艤装しか無い。その艤装も、見た目からはあまり分からないが、すでにかなり改造が加えられている。ここにいるのは、海にいるのとは違う自分だ。 #座礁艦隊

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だから私は、精一杯、違う叢雲を楽しむことにした。滞在機関の延長が"予定通りに"決まりウチの鎮守府に連絡した時の、アイツの、司令官の泣きそうな声を思い出す。アンタがずっとそんなんだからもう少しここにいると決めたのよ。私依存をガッツリ治しなさい。そう言って電話を切った。 #座礁艦隊

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あの電話からもうかなり経ち、一週間で終わるはずだった私たちの地上勤務は、二週間と三日を数えた。たぶんテロが沈静化するまでは帰れないだろう。一ヶ月か、二ヶ月か。あるいは。私たちは激しい戦闘のある作戦に常に駆り出され、常に結果を出してきた。 #座礁艦隊

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

このPKOにとって、水陸機動団にとって、私たちは無くてはならない存在になってしまったらしい。こんなことなら思いっきり手を抜いておくんだったかしら。無論、そんなことは私のプライドにかけて許さないが。 ふっと、アイツの顔が浮かんで、胸が切なくなる。依存症なのは私も一緒か。 #座礁艦隊

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「ていうか、いつまで砂まみれで突っ立ってなきゃなんないんですかねえ」 地面の砂を足でいじりながら、巻雲が待ち兼ねている。水陸の攻撃隊が配置完了するまでよ。予定ではもう終わってるはずなのだけど。砂嵐に乗じて奇襲するという作戦は、その砂嵐が強すぎて遅れていた。 #座礁艦隊

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

『スペクターからトーピード各隊へ、送れ』 やっと来たわ。こちらトーピード1。送れ。 『攻撃隊の配置が完了した。そちらの侵攻に合わせる。任意に作戦を開始せよ。送れ』 トーピード了解。ブレイク、1から2、聞こえたわね。送れ。 『こちらトーピード2。任意に作戦開始、了解』 #座礁艦隊

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

私たちの左斜め前方に、新たに配属された三隻の艦娘がいる。うち二隻はスハールのリンガ泊地第1661支部で会った、黒潮と長波だ。 「よォーしっ！ 長波サマの陸の初陣だ、さー行くぜ、オーッ！」 「あっ、こら長波はん、そっちは」 黒潮の制止も聞かず走り出し、 「うおーっ！？」 #座礁艦隊

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段差に躓いて、長波はすっ転んだ。ちょっとちょっと、戦う前から艤装壊さないでよ。 「また賑やかなのがやってきましたねえ」 先が思いやられるわ……。 そして、彼女らを率いるトーピード201は冷ややかな目で二隻を見ている。軽巡洋艦、五十鈴だ。公定練度は1。つまり、新造艦。 #座礁艦隊

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

聞けば海に出たことが一度も、演習すらしたことが無いという。海を知らない艦娘、というだけでも特異な立場だ。「一応陸戦の基本的なことは身につけさせたから、使える」と木曾は言っていた。それはいい。使えるかどうかはこれから分かるし、経験を積ませて生き残らせるのは私の仕事だ。 #座礁艦隊

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

それよりも私の目を強く引いたのは、五十鈴の艤装だった。腰と太腿を取り囲むような構造には、魚雷発射管も、連装高角砲も無く、機銃すら取り外されていた。代わりにあるのは、魚雷発射管のあった部分に斜め上に向けられた二本の大きな筒。同じものが背中の煙突両脇にも一本ずつある。 #座礁艦隊

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

そして長良型特有の小銃型連装砲架には私の持っている長良のと同じ連装機銃が直接照準式に改装され載っていて、それに大きな塊のような照準機が別に装着されていた。位置からして機銃用ではない照準機と筒はセットだ。私も先日撃ったことがある。陸軍の対戦車ミサイル、軽MATである。 #座礁艦隊

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

足柄改二=人類滅亡確定

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

人類は足柄改二のせいで繁殖方法を変えざるを得なくなったのだ……。

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

木曾さんは意外と香水使ってる(しかもシチュエーションや気分に合わせて相手の嗅覚をくすぐるように十数種類持ってる)し、あきつ丸は服にお線香焚いてるって妄想してる。

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

だからあきっつぁんよぉ、思いっきりお墓の匂いするやつやめてくんない？

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

木曾さんの香水の使い方をまるゆが下手に真似して香水代でお給金が吹っ飛ぶわ変な臭いになってしまってみんなからくさいと言われるわ散々

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

木曾さんは他にもしっかりとした作法で茶を立てたり、わざわざ煙管でタバコ吸ったりと風流な趣味を多数持ってるイメージ。

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

「まるちゃん、香水ってのは悪臭になっちまったらダメなんだ。TPOにあわせて相手の鼻を楽しませて、その時の気分により深く浸らせるのさ。だがなァまるちゃん。一番大事なのは"つけない"勇気だぜ」 とかまるゆを膝の上に乗せてこっそり頭の匂いをかぎながら言ってそう。