アカデミック・ライティングについて

「阪大生のためのアカデミック・ライティング入門」がTLに流れてきたので読んでみた。意気込みはわかるものの実用性に疑問を感じた部分があるので、そのあたりを具体的に連投したツイートをまとめてみた。
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ESHITA Masayuki @massa27

TLで流れてきた「阪大生のためのアカデミック・ライティング入門」をさっそくダウンロード ir.library.osaka-u.ac.jp/dspace/handle/… して読んでみた。んー、ライティングのテキストを作成した経験がある者として、もうしわけないけどちょっと批判的なことを書かせてもらいます。

2014-06-05 03:07:09
ESHITA Masayuki @massa27

レポートの剽窃を防ぎたいという意図はわかるのだけど、あまりにも前置きが多すぎる。実践的なテキストの場合、最初のページから「すぐ使える」機能が重要だと思うのです。pp.1-14は目的や背景、意義、ねらいなどが中心なのだけど、分冊にしたほうがすっきりするのでは。

2014-06-05 03:08:51
ESHITA Masayuki @massa27

ライティングの基本は、構成を事前に考えること、そして執筆テクニックとしてはパラグラフ・ライティングを徹底させること。であればテキストとしてはこの2点を具体的に解説するべきでしょう。ところが構成に関しては「序論・本論・結論」の3点セットにしか言及してない。

2014-06-05 03:10:32
ESHITA Masayuki @massa27

いや、この3点セットは基本なんだけど、全体構成のポイントは本論をどのような構造で組み立てるかが問題なので、「序論・本論・結論の構成に並べる」と言われても「?」でしょう。論証の方法はちょこっと出ているけど、やはり現状分析、問題提起、仮説・論証といった構造を示すべきでは。

2014-06-05 03:12:23
ESHITA Masayuki @massa27

パラグラフ・ライティングについて。トピックセンテンスの説明しかされてないのが中途半端ですね。パラグラフを構成するのはTSに加えてSupporting Sentence、Conclusionがあり、TS→SS+SS+..+SS→Cという流れが基本です。

2014-06-05 03:14:39
ESHITA Masayuki @massa27

センテンスの役割分担、センテンス間の流れ、そしてパラグラフ間の接続まで解説しておかないと、パラグラフ・ライティングは実践できません。トピックセンテンスがあるよという知識だけ得ても不十分です。その点でこのテキストは生煮え感が強い。

2014-06-05 03:15:38
ESHITA Masayuki @massa27

一応、サポートセンテンスもあるということには言及されているけど、その枠割りと流れに言及しないと。とくにSSの配置は接続詞の使い方にも関わることです。そしてパラグラフライティングでいちばん頭を使うのは、TS→C→TS→C→… という骨子の作成です。ここの説明も完全に抜けている。

2014-06-05 03:18:43
ESHITA Masayuki @massa27

用紙の余白とか文字数、行間隔の設定に言及してますけど、いまどきの学生ならWordのどこを見ればいいのかぐらいわかるでしょう。どのぐらいの余白がなぜ必要なのかという具体的な説明がないと、ちょっと不親切じゃないでしょうかね。ここも中途半端なところでは。

2014-06-05 03:20:43
ESHITA Masayuki @massa27

……そんなわけで、それなりに参考にはなると思いますけど、やはり戸田山和久『論文の教室』を買って読んだほうがいいよ、というのが結論です。

2014-06-05 03:21:40
ESHITA Masayuki @massa27

おまけ。フランス語のライティング技法では、基本構成は「eSPRIt」と教えています。entrée en matière(序論)→Situation actuelle(現状分析)→Problématique(問題提起)→Résolution(提案、仮説)

2014-06-05 03:25:08
ESHITA Masayuki @massa27

→Infromation complète(検証)→terminaison(結論)という流れです。序論・本論・結論のおおざっぱな流れのなかで、本論を構成する基本要素といっていいでしょう。(注:序論・本論・結論における序論・結論とeSPRItのeとtの役割は異なる)

2014-06-05 03:27:18
ESHITA Masayuki @massa27

パラグラフ・ライティングについては2年前に連投したこちらを参照→ togetter.com/li/239908

2014-06-05 03:31:30
ESHITA Masayuki @massa27

あと、わしがゼミでアカデミック・ライティングを指導するのに使っているテキストをこちら eshita-labo.org/seminar/docs20… で公開しているので(pdf)、ライティングの具体的な技法を知りたい人はどうぞ。

2014-06-05 03:33:11
ESHITA Masayuki @massa27

なお、図版の作成方法とか、収集した資料の効率的な整理方法などは、拙著『レポートの作り方』 amazon.co.jp/dp/4121017188/ に詳しく書いてあります。これがまた増刷されると(現在は3刷)、またまた古雑誌をたくさん買えるんだけどねえ(^_^;)。

2014-06-05 03:37:25