『生ける願い1』の感想まとめ

2014年2月23日に開催された幻想サミットに『DreamTale』の新作として発表した『生ける願い1』の感想ツイートのまとめになります。
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すうネ. @suune_

Dream Tale さんの「生ける願い1」読了。1巻は奈良・平安初期編ということで、このシリーズは歴史小説になっている訳ですが、自分のように歴史に疎い人でもしっかり理解できるほど易しく丁寧に書かれています。稀に人物関連で読み方が分からないことがありましたが、物語を (続く

2015-05-11 08:20:55
すうネ. @suune_

続き) 読み進める上では問題ありませんし、登場人物は実在していた人物ばかりなのでネットか何かで調べればすぐに分かるかと。 さて、みぞれさんの作品といえば人間の本質的な懊悩が繊細に書かれているイメージなのですが、この話における人間は、藍です。P31で初めて藍が人間に好意を寄せて

2015-05-11 08:23:10
すうネ. @suune_

続き) いることが明記されますが、P13の時点で藍が、姉や他の妖怪のように「人間と妖怪は相容れない」と考えるのが普通で、自分は普通から外れていると思っていることがわかる訳です。完璧な姉に対し劣等感を抱くとともに、平和に暮らしたいだけだという自分の思いが届かないことに不満を覚える。

2015-05-11 08:24:33
すうネ. @suune_

続き) いかにも人間らしいですね。 藍と姉の価値観の違いは以降随所に表れていますが、P56の家を燃やすシーンやP69辺りの祈祷師の死に関するシーンは物語の始まりに近いこともあって、分かりやすいです。特に後者は重要なテーマ「死」に関する部分で、「合理的だが、寂しい死」を拒絶

2015-05-11 08:26:12
すうネ. @suune_

続き) したがる藍の様子が書かれています。このシーンで、(頒布時期は前後しますが)先日読んだ「白妙の徒花」の木綿子を思い出しました。理不尽な死を受け入れられないというのは、死が定められ、感情が理屈に勝ることが往々にして起こる人間ならでは。更に、淡々と人間の死を語る姉に藍が若干の

2015-05-11 08:27:44
すうネ. @suune_

続き) 反感を覚えるのはP101に続くのです。が、こちらの場面は前と異なり、大きな節目になっているようにも思います。というのも、藍からの「姉は(性格として)冷酷だ」という評価を、ここで初めて読者と共有しない方向に進めるから。「人間は弱い、だからこそ執念で生き長らえる」「高齢に

2015-05-11 08:28:45
すうネ. @suune_

続き) なればなるほど、人は温もりを求める。(妖怪である)自分にその温もりはない」といったふうに、姉は人間を知っている。分かり合うことは出来ないとしても、自分の中で納得することは出来ないとしても、人間を理解しているのです。更に「これでようやく自由ね」と、今まで何かに縛られていた

2015-05-11 08:30:10
すうネ. @suune_

続き) ことを思わせる発言や、藍に己の苦労を見せないようにしていたとの記述もあります。ここで姉への印象が大きく変わる。妖怪として冷酷でも、性格として冷淡ではないのでは。何かしらの義務感に負われているだけなのでは、と。(とはいえ、自分が気づかなかっただけで、人によってはこれより以前

2015-05-11 08:31:16
すうネ. @suune_

続き) にそういう匂いを嗅ぎつけたかもしれませんね…。) それでも結局藍が「自分は非常に人間に近い存在だ」と落ち着くのか、と思ったらすぐにP109、紀嗣との別れのシーンが来ました。妖怪だと知ってなお自分に臆することなく接してきたうえに境遇も似た紀嗣に対し、藍は共感を覚える。

2015-05-11 08:32:44
すうネ. @suune_

続き) 先述した姉の「理解」とは異なる、共感。自分を妬んで、憎んでいたことを改めて認識して藍は多少衝撃を受けるも、それにすら自分は共感できるという事実にある意味(読者共々)陶酔していた。そこに「あやかしに何を言ったところで虚しいだけだ」という紀嗣の一言がくる。所詮彼は藍を妖怪

2015-05-11 08:34:10
すうネ. @suune_

続き) としか見ていなかったという事実が突き刺さって、読んでいて何とも言いやれぬ気持ちになりました。嫉妬を自分の中で上手く消化できなかったからこその自棄になった彼の発言だけあって、心を抉ってくるのです。藍は彼に共感できるから、彼も人間たる妖怪を分かっているものだと勘違いして

2015-05-11 08:35:29
すうネ. @suune_

続き) しまっていた。ここに藍の幼さが表れているように思います。同時に、揺りに揺られる藍を上手く表現しているなあとも。この辺りの流れはわりと早いのですが、場面としては大事ですね。 そして、紫の登場。自分の本性と心のギャップに疲れた藍が、安寧を求めてふと自殺しようとした時に彼女は

2015-05-11 08:36:37
すうネ. @suune_

続き) 現れる。(場面としてはそんな雰囲気ではありませんが)姉からも、人間からも必要とされていない、自分さえも必要としていない自分なんて…と思っていた藍の考えを正すかのような紫の登場は、無意味な死などあってはならない、必ず救済されるべきだというみぞれさんのメッセージを象徴して

2015-05-11 08:37:38
すうネ. @suune_

続き) いるように読み取れました。更に個人的には、その措置を妖怪の中の妖怪である紫に任せたのも良い。人間社会、妖怪社会(?)の中で、少なからずそういう悲しい死がある、起きてしまうことから目を逸らさず、同じ族の中で解決していかんとする姿勢が清い。人間と妖怪の隔たりを理解し、奇跡を

2015-05-11 08:38:38
すうネ. @suune_

続き) 祈るような素振りを見せないあたりが真摯です。 紫との会話の中で、藍は彼女に幾度となく「まだまだ子供ね」と言われていますが、これが次編以降にどう繋がるのか楽しみなところですね。いかにして今のような主従関係をなしていくのか、という描写にも期待できますが、紫の登場による

2015-05-11 08:39:39
すうネ. @suune_

続き) 読者にとってのメリットはそれだけにとどまりません。純粋な妖怪としての視点を見ることができるというのも大きいのです。物語が華やかになると共に、深みが増すので、なるほどと思う機会も自然と増えました。P145からの人化の法と妖怪変化のくだりのような説明がすっと入ってくるのは

2015-05-11 08:40:30
すうネ. @suune_

続き) もちろん、何分賢い妖怪ですから、考察に説得力があるんですよね。そういう意味で、読みやすくなる。 しかし、続くP186の「紫の推測が外れていた」というのが今度は問題になってきます。具体的には、ここで読者は紫の考察に疑いを持ちきれていなかったことを自覚すると同時に、先述した

2015-05-11 08:41:54
すうネ. @suune_

続き) P101のイメージから「じゃあ姉の仕業ではなかったのか」と素直に思いたくなるんですが、それを姉の完璧さが邪魔する訳です。「これ自体も姉の演技なのではないか」とも考えられるし、そもそもこのシーンの流れからして、さも「姉ではなかったのだ」というのがフラグらしく書いてあるので、

2015-05-11 08:43:00
すうネ. @suune_

続き) 中々判断できません。加えてP175やP191で、今までとは対照的に、藍が妖怪らしさを出す場面が書かれているものだから、「これはきな臭いな」と思わざるをえない。ここは本当に上手いこと流れを読めないようにしてあるなあと驚きました。(まあP192以降を読めばすぐに分かる

2015-05-11 08:44:26
すうネ. @suune_

続き) のですが。因みに、何故か自分は、このP192からのシーンも姉の演技なのでは、という可能性は考えられませんでした。ここばかりは真の愛情であるように思えたのです。そこまでみぞれさんの策中だと思うと、おそろしいですが…。) また、物語の終盤では、坊主の話が何度か出て

2015-05-11 08:47:19
すうネ. @suune_

続き) いましたね。P175では、「坊主は、国や民だけでなく妖怪にとっても害悪」という紫の発言がありましたが、自然にとっては必ずしもそうではないようで、神通力を使える人間がいることを藍は妬み、そこから疑問を覚えます。「自分たち妖怪を作っておきながら人間や神が妖怪を嫌うのはおかしい

2015-05-11 08:48:45
すうネ. @suune_

続き) ではないか」と。P210でその疑問をばっさりと切り捨てる葛の葉に反論していますが、その時点で非常に人間らしいというか、(また頒布時期が前後しますが)「Calamity Call」の雛のように人間に好意的な妖怪だからこそ抱える悩みですよね。そうでなければ、人間が妖怪を嫌う

2015-05-11 08:49:54
すうネ. @suune_

続き) ことに抵抗はないはずですから。妖怪ではないけれど、人間からも少し外れた存在である坊主が今後どのように関わってくるかも見所かもしれません。命蓮という名も出ていますしね。 それでもやはり、先述したように一番のテーマは藍の懊悩でしょうか。紫に出会って自殺は逃れたとはいえ、

2015-05-11 08:50:59
すうネ. @suune_

続き) 妖怪としての自分の存在意義をまだ見出せていない藍の今後の動向から目が離せません。P230にもあるように、藍にまつわる不思議も残っていますから、その解明も楽しみです。 総じて、続きが気になる良い本でした!

2015-05-11 08:51:53
のむさん @nomu_wind

夢月みぞれ氏の「生ける願い 1」読了。 率直に言うと藍さまの成長譚。ですが、長寿故にその内容が濃い。歴史がどのように動いて行ったかがわかりやすかったです。姉さまの動向や、最後にチラッと出てきた命蓮、神子がどう関わってくるのか気になるところ。(続きます

2014-09-26 02:00:18