アンダー・ザ・ブラック・サン #3

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「俺に意見するか、モータル」「アイエッ!そのようなことは」奴隷医師は震え上がり、ディムライトの背から光るキノコをひとつ、もぎ取った。「アイエエエエエエ!」生き物は獣じみた叫び声を上げた。「アイエエエエエ!」奴隷医師は悲鳴を畏れ、自らも叫んだ。なんたる奇怪な光景か!21

2014-06-21 00:51:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ベオウルフは製薬光景から目をそらし、スパルトイを見下ろした。彼の装束は黄と黒の迷彩模様。師からついにオーカー色を禁じられ、この装束を選びとった。愚かな若僧であるが、師と同様、たしかなカラテの持ち主。そう無駄に休ませるわけにも行かぬ。多少の強行軍は必要悪だ。 22

2014-06-21 00:57:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

奴隷医師は擂鉢とビーカーを用いて、ディムライトのキノコから霊薬を精製した。光る液体を椀に注ぎ、差し出すと、スパルトイは身を起こし、ひったくるようにして飲み干した。「畜生、畜生……遥かにいい」若いニンジャは唸り、狂おしげに首を振った。「遥かにいいんだよ……」「報告せよ、小僧」23

2014-06-21 01:01:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「第四レベル」スパルトイは呟いた。譫言じみた言葉は、時間経過とともに徐々に明晰になってゆく。「第四レベルに降りた先で、俺らは襲われた。プリーストとマーチヘアは役に立たねえ。アンブッシュを喰らって、一発で首無しだ。俺は戦った。どうにか撤退した」「敵は?」「ニンジャのミイラだ」24

2014-06-21 01:07:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フーム」ベオウルフは顎を擦った。その目が油断なく細められた。平安時代の……否、もっと昔のニンジャであるやも知れぬ。ドラゴン・シュラインの護りは、命持たぬゴーレム達に留まらなかった。想定の範囲内だ。むしろシュラインの奥底に眠るものについて……彼らの見通しが裏付けられる結果だ。25

2014-06-21 01:10:57
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「急がねばならんぞ、小僧。立てるか」「当たり前だ。遥かにいい……」スパルトイは跳ね起きた。「ウーッ……俺はナメられっぱなしにする気はねェぞ……俺の恥は師の恥だからな……ニーズヘグ=サンがミイラ野郎に負けたって事になるからよ」「わけのわからん事をほざく奴。すぐに準備せよ」26

2014-06-21 01:16:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アンタも行くのかよ」「当然だ」ドラゴン・ニンジャのシュラインを護る存在となれば、ナズラ・ニンジャか?それともキエン・ニンジャか。伝承だのみの情報であるが……どのみちミイラだ。往時のカラテは残っておるまい。その先に眠るもの、それは九分九厘、探し求めてやまぬ品だ。 27

2014-06-21 01:21:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

これまでの伝承収集の蓄積が語っている。ドラゴン・ニンジャがシュラインに安置し、側近のニンジャが寝ずに護る品……即ちそれは、ヤマト・ニンジャの槍!ヤリ・オブ・ザ・ハント(YotH)に他ならない!ベオウルフは遂に、最大のイサオシをその手に掴む機会を得たのだ! 28

2014-06-21 01:24:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「グリフォン=サン!」スパルトイを伴いテントを出たベオウルフが呼ばわると、最適の位置に跪くニンジャの影があった。「ここに」「小僧が首尾を持ち来たった。第四レベルへの路だ。今から向かう。貴様も来い」「まことに?」「嘘をついておれば小僧はセプクだ」「嘘などつくかよ!正念場だ!」29

2014-06-21 01:30:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼ら三人は肩を怒らせ、得物を携えて、最奥のモデストな建造物の中へ降りていった。雷が唸り、ポツポツと雨が降り始めた。……ユカノが外壁を越え、自らのドージョーの敷地内へ忍び込んだのは、彼らの出陣の約1時間後の事であった。 30

2014-06-21 01:35:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【アンダー・ザ・ブラック・サン】#3 後半

2014-06-22 20:31:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「グリフォン=サン!」スパルトイを伴いテントを出たベオウルフが呼ばわると、最適の位置に跪くニンジャの影があった。「ここに」「小僧が首尾を持ち来たった。第四レベルへの路だ。今から向かう。貴様も来い」「まことに?」「嘘をついておれば小僧はセプクだ」「嘘などつくかよ!正念場だ!」29

2014-06-22 20:31:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼ら三人は肩を怒らせ、得物を携えて、最奥のモデストな建造物の中へ降りていった。雷が唸り、ポツポツと雨が降り始めた。……ユカノが外壁を越え、自らのドージョーの敷地内へ忍び込んだのは、彼らの出陣の約1時間後の事であった。 30

2014-06-22 20:31:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「これは……」ユカノは息を呑み、中庭を見渡した。複数の墨色のテントや、炎を発するボンボリ、黒い旗の類いを。結んだ口元が怒りに震える。彼女はしめやかに壁沿いを歩き、ドラゴンの彫像の陰に身を潜めた。その傍に、ディプロマットが跪いた。「他所の者らですね?」「許せません」とユカノ。 31

2014-06-22 20:42:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「占拠者は即ち……」「確かめる必要がありますね」ユカノは懐の鉄釘に手を当てた。「何者であるかを」「弟とエーリアス=サンは外に待機しています」ディプロマットが言った。「こちらに難があれば、すぐに動く」双子は彼らの間でのみ通ずるテレパシーのジツを有している。 32

2014-06-22 20:49:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「人の気配」ユカノは目を閉じ、物音を聴き、ニンジャソウルの揺らぎを求めた。やがて目を開いた。「ニンジャも居ます。騒ぎを起こせば、多勢を呼ぶことに……」会話を止め、彼女は彫像の台座の陰に身を沈めた。ディプロマットもそれに倣う。 33

2014-06-22 20:54:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

やがて、靄の中、歩いて来た者あり。ニンジャである。そぞろ歩きのアトモスフィアだ。このような秘境に侵入者など無いと考えているのだ。物陰から視認したディプロマットは大いに衝撃を受けた。ユカノはディプロマットを見た。ディプロマットは白砂に指で字を書いた。(ギルドのニンジャです)34

2014-06-22 21:00:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ユカノは眉根を寄せた。ザイバツ・シャドーギルドのニンジャが、ドラゴン・ドージョーに?ギルドの残党?(奴はボロコーヴ。かつて、キョート城勤めのニンジャでした)ディプロマットは書き加えた。(カラテはさほどでもなし)キョート城。ザイバツ。ユカノは疑念が今まさに形を成した事を悟る。 35

2014-06-22 21:08:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「肉は喰いたし……」ボロコーヴは呟き、歩きながら懐からスキットルを取り出し、一口飲んだ。ドラゴンの彫像の真横で足を止めた。ユカノとディプロマットは祈るように縮こまった。「……」ボロコーヴはドラゴンの彫像を見上げた。「ぞっとしないアトモスフィアよ」そしてそのまま歩き去った。 36

2014-06-22 21:16:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャの背が靄の中へ消えると、二者は短く息を吐き、互いを見た。奇襲をかけ、インタビューするのがよかろう。だが、この地の状況把握が完全ではない。ニンジャはあれ一人ではないのだ。飛びつけば別の敵と出くわす可能性がある……。ユカノはディプロマットに合図し、近くのテントへ向かった。37

2014-06-22 21:20:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ディプロマットは墨色のテントに手を触れ、中の気配を感じ取ろうとした。気配無し。二者は中へ滑り込んだ。ディプロマットは出入り口付近に立ち、誰かが入ってくれば即座に攻撃する構えだ。テントの中には机と、広げられた山岳地図、積まれたマキモノがあった。ユカノはそれらをあらためる。38

2014-06-22 21:35:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「本格的な探索部隊」ユカノはマキモノのひとつを開いた。見取り図だ。このドラゴン・ドージョーの。「ザイバツ・シャドーギルドの残党が、我が地に流れ着いて棲家とした……そのような事情では無いようです。もとより可能性の一つにも含めていませんが。この者らは明白な目的のもとで訪れている」39

2014-06-22 21:44:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「目的とは」「……」ユカノはマキモノをひとつひとつあらためる。「ドラゴン・シュラインの奥」彼女の声は緊迫していた。「ドラゴン・シュライン?」「このドージョーの敷地内にあるシュラインから、山の内側に築かれた墓所へと降りる。入り口は厳重に封印されています」 40

2014-06-22 21:55:53