【ポートレイト・オブ・リコリス】 #2
(前回のあらすじ:犯罪都市ネオサイタマの片隅。ドロイドを用いた強請行為が発生していた。ヤクザがこのような小銭稼ぎをしようはずもなし。ドロイド・コリスを操るこの男の目的とは……)
2014-07-05 21:44:50これに顔を近付けたり離したり、あるいは角度を変え無言で眺める男の名はヒガ・オリン。この部屋の主であり、このドロイド・コリスのオーナーだ。 3
2014-07-05 21:51:03自我を持つドロイドは高級品であり、まとまった金が無いと手が出しにくい。もし、コリスを完全な状態で迎えようとすれば、実際苦労しただろう。 5
2014-07-05 21:55:16「じゃあ行ってくる。帰ったら続きをやろう」「はい。気を付けて行ってらっしゃい」奥ゆかしい受け答えがヒガのニューロンに好影響を与える。 ヒガの夢見た生活が今たしかにここにあるが、これまでの生活はといえば歯車めいていた。 6
2014-07-05 21:57:05「はい、それでは今日も一日ヨロシクお願いします!」責任者のお決まりのアイサツから始まる職場。朝から晩まで同じ作業を繰り返し、時間を金に変換してきた。 9
2014-07-05 22:01:15「――はトークンを入れればスシを自動的に提供するマシーンではない。ゲーム脳になっていないだろうか!?家族と会話しているだろうか?」 ある日、自宅のレディオから聞こえた力強いメッセージが耳に残った。 11
2014-07-05 22:05:25そしてネオサイタマには、そんな層に向けたサービスも存在していた。 ドロイドには様々な用途がある。そのため細かなカスタマイズが可能だ。 13
2014-07-05 22:09:30掛かる費用はかなり険しいことが判ったが、決して手が届かない程ではない。 一念発起したヒガは独り身で使うアテも無く貯めた財産でなんとか基本となる素体を購入した。 14
2014-07-05 22:11:22「はい……。私の名前はコリス。今日からよろしくお願いします」 コリスの無機質な眼球状装置が主人を正面から見据えた後、基本動作プログラムによりゆったりとオジギした。 17
2014-07-05 22:17:09いくつかの季節が過ぎ、買い足し買い換え、姿はより人らしくなった。自我もまた奥ゆかしく育まれていった。 それと同時にヒガの貯蓄は切り崩されていった。 20
2014-07-05 22:21:14思えばこのマッポーの世に一人でいるのにこれだけ稼ぐ必要も無かった。 しかしそのお陰でコリスを迎えることが出来た。「サイオー・ホースな」 だがそれもここまで。ヒガの次の言葉を待つコリスが無垢な眼差しを向ける。 21
2014-07-05 22:23:07「コリス。芝居を打つぞ」目標たる理想像にあと僅かに迫った頃に余裕が無くなった。労働環境の変化が仕事の奪い合いを起こさせ、稼ぎを減らしたのだ。 22
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