【ポートレイト・オブ・リコリス】 #3
(前回までのあらすじ:なぜそのような事件を?時間はある。道具もある。しかし金は無い。ネオサイタマでありもしない仕事を探すより手っ取り早い金策だったのだ)
2014-07-19 14:08:37「おのれ、偶像め……」何事かブツブツと呟くその者の目は熱狂的な眼差しでブッダ像をとらえて離さない。くまなく観察し、それにより細かに感情を沸き上がらせているのだ。 2
2014-07-19 14:15:01「確かめねばなるまい……イヤーッ!」静かにテンプルを後にすると鋭いカラテシャウトと共に跳躍!屋根伝いに別のテンプルを目指し移動を開始した。 もうお分りであろう。彼はニンジャだったのだ! 3
2014-07-19 14:17:06「なんたるマッポーの世!おお、ブッダ!慈悲を!慈悲を!」 彼は行く先々のブッダ像をあらためる。野晒しのため重金属酸性雨に溶かされた石製のオジゾウ・スタチュー群、必要以上に贅を凝らし鎮座するクリスタル大ブッダ像、人の手入れが無くすっかりくすんでしまった木製ア・ウン像。 4
2014-07-19 14:19:03ディセンションを果たしネオサイタマへと覚醒したばかりのこの者はテンプルを巡る度にその動きを力無く弱めていった。 「この街にまともな像は存在しないのか……」落胆しきった彼の耳に繁華街の喧騒が遠く聞こえる。 5
2014-07-19 14:21:10ディセンション時の一時的な高揚感がニューロンの中で波となって引いていき、次に絶望感が邪悪なニンジャ性を伴って押し寄せた! 「最早待ったなし。やるしかあるまい!」 6
2014-07-19 14:23:03夕刻。学生やサラリマン、パンクスやサイバネ者など昼夜それぞれに属する人々が入れ替わり、街は騒がしい。ここで買い物を終えたヒガがコリスを伴って店舗から現れた。コリスの表情は晴れやかだ。 8
2014-07-19 14:25:34「素敵なものをありがとうございます」「何の機能も無い、実際安いだけだ。けど」最後の仕上げにヒガはコリスにアクセサリーを選ばせた。 9
2014-07-19 14:27:20左右一対の赤橙色のただの髪飾りだったが、少し珍しい形状の花を模している。コリスがこれを選んだ理由はすぐに分かったのでヒガは少しだけ微笑んだ。 10
2014-07-19 14:29:08「よく似合っている……」雲間から射し込む赤い陽光がコリスの姿を一層まぶしく見せる。ヒガはまた言葉を忘れて、陽射しが弱まるまでしばらくそうしていた。 11
2014-07-19 14:31:04やがて二人は大通りを脇に入った路地を使い家路へと向かうことにした。日が暮れてからはまた雨が降り、急に冷え込みはじめた。「手を繋ぎましょう。保温機能が働きます」ヒガの体温変化を感知したコリスが手を差し出すとヒガは黙って握った。 12
2014-07-19 14:33:02「アイエエエッ!?」突如ヒガが情けない悲鳴を発した!何事か?数メートル先の不完全街灯スポットライトの根元、まるで見せ付けるように無惨な死体が電柱に括り付けられている! 14
2014-07-19 14:37:02「ヒガ=サン!はやく離れましょう!」コリスが手を引こうとするがヒガの足は釘付けにされたように動かない。喉が、死体の喉がヒガの視線を外させない。 15
2014-07-19 14:39:07「どうだ?ブッダが見えたか?」街灯の範囲外、影から声がすると、異様な男が姿を覗かせた。 男の口はオブツダンめかした彫刻が施されたマスクに覆われている。否、それこそはメンポ(面頬)! 16
2014-07-19 14:41:13【ポートレイト・オブ・リコリス】 #3 vande.blog19.fc2.com/blog-entry-969… 先程の投稿をブログへアップしました。まとめ読みにどうぞ。
2014-07-19 14:48:17