ケンペイｖｓ座礁艦隊！　あとパンツ　～フライングフィッシュ・オブ・アラビアン～　その３

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

◆＃３◆今夜な◆

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注意)このお話はケンペイ天狗、スエズ鎮守府、並びに「パンツ・サンダーボルト」そして座礁艦隊とは一切関係が無い。パラレルのパラレルである。いいね？

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これまでのあらすじ:唐突に特別任務を命ぜられた座礁艦隊では戸惑いが広がっていた。正体不明の敵、海軍による監視…。その時民兵と交流のあるスハール鎮守府の木曾から、走っている男はスエズ鎮守府の提督であると伝えられるのであった。 togetter.com/li/691400

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パンツ・サンダーボルト番外編 【フライングフィッシュ・オブ・アラビアン＃3】

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「ハァーッ…ハァーッ…ハァーッ…」国境を越えアラビア連邦へと入ったケンペイ天狗はなおも走り続けていた。ノース・アラビアン・デザートは東西約1000キロ。砂に足を取られており、疲労を無駄に蓄積しない巡行速度は50キロに落とされている。ペルシャ湾の北端まで、あとおよそ19時間。 1

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日は落ちかけ、涼しげな風がケンペイの露出した首筋を撫ぜた。炎天下からは解放されたが、この心地良さもつかの間だ。保温できない砂漠にはすぐに氷点下の寒さがやってくるに違いない。しかし、常に走行している今の彼には寒い方がありがたかった。問題なのは水分だ。 2

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ケンペイは忌々しげに、傍をピッタリと飛行する監視ドローンを一瞥する。これに見られている限り、パンツ以外は口に出来ない。しかも艦娘が脱いでから一時間以内のもののみという、理不尽に理不尽を混ぜ合わせた条件が加わる。「ヌゥーッ…！」ブラック提督を前にした時に匹敵する怒りが沸く。 3

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スエズを出発してから未だに水の一滴さえ口にできていないのだ。深海棲艦のスキルは人間離れした保水とエネルギー効率をケンペイにもたらしたが、この砂漠を越えるまでにわずかでも水分を補給しておきたかった。そうでなければいつどこで脱水症により倒れ伏すやも知れない。 4

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それに、ノース・アラビアン・デザートを最短ルートで走行することも出来ない。アラビア連邦の北、旧イラクを主体とするオイル・エコノミクス同盟国は激しい内戦の真っ只中であり、横切るのはリスクが高過ぎた。アラビア連邦もテロが横行しているが北ほどカオスな状況ではない。迂回も止む無し。 5

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クローンイ級の追撃はアラビア連邦へ入ってから止まっていた。つかの間の安息である。だが新たな問題も発生していた。長距離IRCが繋がらなくなったのだ。音声IRCは龍驤への呼び出し音もボイコットし、プー、プー、プー、と間抜けな不通音を流すのみ。龍驤がいなければパンツが食えぬ！ 6

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長距離IRCが付近に設置されていないのだ。おそらくこの現象はアラビアの砂漠を突破するまで続くであろう。龍驤へ状況の説明もままならぬから、それまでは必然的に一人旅！ ふと、ケンペイの胸中に一抹の寂しさが湧いた。深海から蘇った復讐の男は、その不可解な感覚に戸惑いを隠せぬ…。 7

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「……！！」その困惑を深海第六感がかき消す。巨大な脅威を、右側、南の地平線に感じる！正体はすぐに判明した。ケンペイ天狗の深海視力は、数キロ先から低空を飛んでこちらへやってくる海軍の反重力飛行艇を視認した。新たな敵か！50口径対物リヴォルヴァーを構える！ 8

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反重力飛行艇は対物リヴォルヴァーのギリギリ射程外、地上数メートルでケンペイと並走を開始、後部ハッチを開く。そこから人型のものがパラシュートを開き次々とLAPES降下する！迷彩服を着てはいるがケンペイには分かった。艦娘だ！総勢九隻の艦娘が降下！反重力飛行艇は高度を上げ離脱！ 9

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見よ！降下した艦娘は、砂上をまるで海にいるかのように滑走している！腰部とふくらはぎ部に装備したホヴァー・ユニットがそれを可能にしているのだ。反重力飛行艇は攻撃の届かない上空で追従、九隻の艦娘はフォーメーションを組みケンペイ天狗を取り囲む。 10

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うち一隻の艦娘が、ケンペイの前方からこちらを向いて接近する。まるで男子のように頭髪を短く刈りそろえてはいるが、間違いない。叢雲タイプだ。叢雲は若干戸惑いの表情を浮かべた後、アイサツした。「ドーモ、スエズ提督=サン。我らは座礁艦隊。代表してアイサツします。叢雲です」 11

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ブッダ！座礁艦隊と呼ばれた艦娘たちは、ケンペイ天狗をスエズ提督であると誤解している！座礁艦隊についてはケンペイ天狗も聞き及んでいる。海軍を離れ水陸機動団において、艦娘の陸戦をテストしている部隊があると。そんな彼女らが海軍のグンレイ関係者しか乗らない飛行艇から現れたのだ。 12

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ケンペイは一瞬で状況を理解した。アラビアで一番近く、かつ陸戦に秀でたこの座礁艦隊に、海軍が妨害を命じた。そんなところであろう。ならばまずは誤解を解かねばならない。「ドーモ、座礁艦隊=サン。ケンペイ天狗です。私はスエズ提督ではない。済まぬが、オヌシのパンツを大至急くれ」 13

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直後、叢雲のアームに接続された単装砲が火を吹く！「ヌゥーッ、ナゼダ！？」ケンペイはすんでで回避、距離を取る。叢雲の顔には憤怒の表情。当然である！見も知らぬ天狗面の男にいきなりパンツを要求されては！単装砲の十字砲火が開始！「待て、これには理由があるのだ！」砲撃音で聞こえない！ 14

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しまった…、と叢雲は単装砲を撃ちながら思った。いきなりパンツをくれと言われて思わず激昂し、攻撃を始めてしまった。スエズ提督ではない？ 違うのにパンツを？ ケンペイ天狗については名前だけは聞いている。しかし、ブラック提督を探して殺すとしか知らなかった。 15

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なぜならケンペイ天狗は、叢雲が座礁艦隊に来てから現れた存在なのだ。鎮守府にいたならもっと詳しく知れただろう。では、深海棲艦の武装を用いるというのはケンペイ天狗の能力なのか？『トーピード各隊、こちらスペクター、攻撃はフリだと言ったはずだ』飛行艇のマキシマ中尉から音声IRC。 16

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ケンペイ天狗が始まるまで続けよう。

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独自回線で音声が小さい。同乗のミュグラ少佐に聞こえないようにしている。『まず話を聞く、発砲は避ける。その手はずだったろう』「発砲は避けたわよ、可能な限り！」叢雲はムキになって言い返す。パンツをくれというアイサツはその場9隻全員が聞いていた。もはや全員が戦闘モードだ。 17

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「キャハハハ！おっそーい！」トーピード303、島風が、頭部を陸戦用に改造された連装砲=チャン三基と共にケンペイ天狗を煽る。「島風に負けてられるかってのよ！」302、天津風もケンペイに対して本気の射撃！相手はスエズ提督ではない狂人、攻撃しても良いと勝手に判断したのだ！ 18

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「あの、あの、二人とも止めてくださ〜い！」トーピード3リード、名取の弱々しい命令に従うそぶりも無い！いや、ここで攻撃をやめてしまえばそれこそ不自然だ。「トーピード各隊、攻撃は続行、ただし当てるな。絶対に当てるな！分かった！？」叢雲は全員に釘を刺す。 19

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

BLAM！ケンペイ天狗が止むを得ず対物リヴォルヴァーを威嚇射撃！各隊は叢雲の命令の復唱を終えていない。この一発を、座礁艦隊は敵の攻撃として確認してしまった！このケンペイ天狗はスエズ提督と何の関係があるのか、話を聞く必要性、それらを一旦棚に上げざるを得なくなったのだ！ 20