ケンペイｖｓ座礁艦隊！　あとパンツ　～フライングフィッシュ・オブ・アラビアン～　その６

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

◆＃5 今夜な◆

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正直まだいろいろもやついているところがある。書きたい核心はあるがそこへの道筋が危うい。だが書く。勝手に始めた何とも関係のないコラボを待たせすぎた。

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艦これ二次創作における提督はオリキャラであるが、「艦娘との関係性によってキャラクターが構築されている」か「提督本人のキャラクターが強烈である」かのどちらかまたは両方である場合に受け入れられているように思える。

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パンツを食べるのは強烈だろ。

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マイアミ提督やスエズ提督はキャラクターが強烈な方で、アサイラムの井上さんは艦娘との関係性の積み上げでキャラクターが出来上がった方。ただしマイアミ提督は強烈なのに加えて関係性を積み上げて今に至るから最強に見える。

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ああ、受け入れられる提督像についてもう一つ。「個性が乏しい、影が薄い」だ。提督は必要だが艦娘の方を目立たせたい場合に有効な手法である。書き手によっては表に出さないと徹底してる場合もある。

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始めよう。

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注意せよ)このお話はケンペイ天狗、スエズ鎮守府、並びに「パンツ・サンダーボルト」そして座礁艦隊とは一切の関係がありません。

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これまでのあらすじ（1/2）：ケンペイ天狗に対する妨害任務が彼とスエズ鎮守府を陥れるための欺瞞に満ちたものであることが判明した。座礁艦隊は密かにケンペイ天狗を支援することになる。 togetter.com/li/708570 togetter.com/li/709559

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これまでのあらすじ（2/2）：作戦は順調に推移し、あとは書類上で成功とされるアラビア半島横断五時間遅延を待つだけとされたその時、監視役のミュグラ少佐の秘書艦である航空戦艦扶桑が、追撃のために出撃するのであった……。

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パンツ・サンダーボルト番外編【フライングフィッシュ・オブ・アラビアン＃５】

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砂漠を走行するケンペイ天狗を、叢雲、巻雲、朧の三隻は各々への射線を外した三角形のフォームで取り囲んでいた。対物リヴォルヴァーを警戒し、相対距離はそれぞれ200メートルを堅持。主砲の弾薬も残り少ないため、時折牽制のために対空機銃を射撃する他は併走するのみ。　1

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しかし、これらの行動はすべて、ケンペイにピタリと張り付いて飛ぶ監視ドローンを欺くための嘘なのだ。あの激しい乱戦の最中でも一発の被弾すらせず、ドローンは無音でテング・オメーンの狂人を見つめ続けている。これも海軍本部の独占する、妖精さんのオーヴァー・テクノロジーなのだ！　２

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『tpd101:このまま戦っているフリをして作戦限界線まで引っ張る』 『knpitng:了解した』 叢雲は簡潔なIRC文字通信を交わして沈黙を保つ。これまで彼女とケンペイ天狗との会話は、最初のアイサツ以外は全てIRCの文字を通していた。　３

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監視ドローンにマイクが内蔵されているかもしれないのだ。「壁にイヤー、ショウジにアイ」とヤマモトイソロクも言っている。『tpd201:トーピード１各員へ、ごめん撃ち漏らした、二分隊規模のサルベージ艦がそちらへ追撃中』後方でナンブ軍への遅滞戦闘を行っている五十鈴からである。　４

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『tpd101:了解した。無理せずある程度削ったら撤退せよ。対応はこちらでやる』サルベージ艦六隻の相手か。時間的にあと二十分程度で接触すると叢雲は踏んだ。残弾を考えると難しい相手。無理をさせてでもあきつ丸を呼ぶべきであったかと、分隊長として後悔した。　５

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

無駄な戦闘はなるべく避けねばならない。サルベージ艦は元が何であっても性能を均一に調整されている。それは駆逐艦をもとにしているから、夜戦が得意なのだ。夜明けまではまだ遠い。こちらも駆逐艦ばかりであるが、単純な物量差は向こうが二倍。性能の差を差し引いても辛い相手である。　6

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ケンペイ天狗は「そんなことは関係ない」とばかりに走り続けている。叢雲はホヴァー推進のまま後方を向いて、双眼鏡でケンペイを見た。壊れたテング・オメーンから覗く瞳は、出会った時から表情を崩さない。　７

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

『tpd101:ねえ、アンタはブラック提督を殺すために動いているのよね』IRC文字通信にしてはひどくくだけた文体で、叢雲はケンペイへ送信した。返事は無い。沈黙は肯定か。『今走っているのも、スエズを潰そうとした主犯を殺すため？でもそれなら代理で走らずに直接ヨコスカへ行けばいい』　8

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

返事は無い。叢雲は続ける。『アンタが今スエズの提督の代わりに走っているのは、人間をやめたアンタなら10000キロを走破できるからよね。その契約を完遂すれば、スエズの艦娘たちを助けられるから。アンタはブラック提督を殺しながら、艦娘を救おうとしてる。これでいいのよね？』　９

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

返事は無い。叢雲は続ける。『じゃあ聞くけど、ブラック提督を守るために艦娘が立ちはだかったら、どうしていたの。邪魔する艦娘も殺すの？』『knpitng:艦娘は殺さない』唐突にケンペイが返信した。一瞬の間も無かった。叢雲は彼の瞳をもう一度確認したが、表情の変化は見られなかった。　10

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

ケンペイ天狗にとってそれは、当たり前の回答であるらしい。ブラック提督は殺す。艦娘は殺さない。ブラック提督を守ろうとする艦娘がいたなら、全て沈めることなく無力化してきたのだ。なんという実行力！なぜなら艦娘を生かしたまま無力化することは容易いことではない。 11

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

叢雲はケンペイ天狗がこれまでに行った行為の記録もマキシマ中尉から受け取っていたが、数十件にのぼる襲撃のいずれにおいても、提督の護衛に回った艦娘を生かしたまま無力化していたということになる。揺るがぬ決意！だが叢雲はこの事実に対して疑念を持たざるを得ない。至極簡単な疑念。　12

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

ケンペイ天狗はブラック提督を殺し、虐げられている艦娘を救うために活動している。だが、しかしである。であるならば、提督を失った艦娘が果たしてどうなるのか、彼が知らないはずはないのだ。通常の手続きは他鎮守府への移籍か、代替の提督の着任が行われる。　13

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

といっても、現在の海軍におけるトップはあのドン・ハリマ元帥である。あの男が元帥の座に就いてから、海軍は過激な路線を突き進んでいるのだ。提督を失った艦娘が移った先の鎮守府、あるいは新たに着任した提督。それらと、かの悪名高き「捨て艦戦術」は切り離すことができなくなっていた。　14