ケンペイvs座礁艦隊! あとパンツ ~フライングフィッシュ・オブ・アラビアン~ その4
「待て、話を聞け!」前方150度から扇の中心へ向かって絶え間無く放たれる連装砲弾をステップ回避し、またリヴォルヴァーの対物銃弾でいなしながら、ケンペイ天狗は必死に訴える。だが一度開かれた戦端をそう簡単に収めることは出来ぬ!「グワーッ!」 25
2014-07-31 20:52:56ついに一発の連装砲弾がケンペイの二の腕をわずかに捉えた。強烈な衝撃波が脳をシェイク!駆逐艦の砲弾の威力では無い!ケンペイは深海動体視力で飛来する砲弾を視認する。まるでダーツのような形状の弾頭。これは…おお、ブッダ!改造品!対深海棲艦戦闘規則違反! 26
2014-07-31 20:58:20おそらく取り替えの利く砲塔部分のみの改造であろうが、座礁艦隊はそのままでは海で深海棲艦を相手に戦うことが出来ぬのだ!陸こそが我らの戦場という彼女らの覚悟をケンペイは感じ、同時に彼女らを騙して妨害に駆り出したブラック提督への怒りが沸いた。 27
2014-07-31 21:06:01とにもかくにも、まずはパンツである。ケンペイ天狗はパンツを消化できぬ。しかしパンツを水に含ませれば水分だけでも摂取できるのではないか? そう一計を案じたのだ。艦娘のパンツの当ては、今もって連絡の取れぬ龍驤の他は目の前の座礁艦隊しか無い。なんとかパンツが欲しい旨を伝えねば。 28
2014-07-31 21:14:10「頼む、話を聞いてくれ!オヌシらの濡れたパンツが必要なのだ!」ブッダファック!戦闘中の混乱で端的に伝えたのであろうが、それでは相手をより一層怒らせるだけである!砲撃の激しさが増す!陸戦に準じたシャウトの無い攻撃はタイミングを読めない!「グワーッ!ナゼだ!」インガオホー! 29
2014-07-31 21:19:14一方の座礁艦隊側にも困惑が広がっていた。スエズ提督ではないのにパンツを要求するテング・オメーンの男を、このまま攻撃し続けて良いのか?スエズ提督と何の関係も無いこの男が、スエズ提督をダシにして自らの目的を果たそうとしているだけ。そんな可能性も否定できぬのだ。 30
2014-07-31 21:39:47海軍からの命令もあり、無闇に攻撃を中止することも不可能。今の座礁艦隊に選択肢は存在しない!「全艦攻撃は続行!この男を妨害し続けて。無理はするな」叢雲は歯噛みをして命令を出し直す。「こちらビハール2。ビハール狙撃準備完了した。いつでもいけるよ」続けて最上からの通信! 31
2014-07-31 21:53:00「こちらトーピード101、了解した。いつでも撃て」非情な命令!各艦とケンペイ天狗との距離は200から300メートル前後、前方に占位しているため誤射される心配も無い。数秒後、ケンペイ天狗の右肩が弾け飛んだ。遅れて砲声!「グワーッ!狙撃!」20.3センチ超長砲身単装砲の威力! 32
2014-07-31 22:10:02「グヌゥーッ…!」ケンペイは吹き飛んだ右腕からかろうじて50口径対物リヴォルヴァーを回収する。どう見ても重篤なダメージである。このままでは走ることさえままならない。止むを得ぬ。「力を貸せ、多摩!」ケンペイはイマジナリー艦娘へ呼び掛ける、弾けた肩口の肉がボコボコと波打つ! 33
2014-07-31 22:14:31「おおーっ!やったぞ!」数キロメートル離れた上空、反重力飛行艇内でミュグラ少佐は小躍りした。「このまま畳み掛けろ!」対して狙撃を実行したビハールの二隻は冷静に次弾の発射態勢を整える。「利根、一発目は命中。同じ諸元で二発目も、任意で撃って」「了解じゃ。ぬふふ、たまらんのう」 34
2014-07-31 22:23:55利根が嬉々として第二射を行おうとしたその時、「待って、目標の様子がおかしい」測距儀を覗いていた最上が制止する。ズームされた視界に、右腕を再生させるケンペイ天狗が映る!ただの再生ではない。表面に何基も配置されたそれらは、全て深海棲艦の6インチ連装速射砲!飛行艇を向いている! 35
2014-07-31 22:39:48「反撃が来る、緊急回避!」言い終わらぬうちに連装速射砲が次々とオレンジ色の火球を発生!パイロットが慌てて旋回!「ウワーッ!」手すりに捕まるのが遅れたミュグラ少佐が転倒!床に叩きつけられそうになったところをかろうじて扶桑に抱きとめられる。間髪入れずに強い揺れが飛行艇を襲う! 36
2014-07-31 22:42:47近接で炸裂する対空砲弾の猛攻!アブナイ!「このままでは撃ち落とされる!一旦低空へ退避します!」パイロットは機体を急降下!砂丘に隠れるほどまで高度を落とす!「やはり奴は、ケンペイ天狗は化け物だ…」扶桑にしっかりとしがみついたまま、ミュグラ少佐は声を震わせた。 37
2014-07-31 22:47:28「敵がケンペイ天狗であると、やはり知っていたのですね」耳敏くそれを聞きつけたマキシマ中尉がミュグラ少佐を詰問する。「もっと詳しく情報を提供していただければ、より綿密で確実な作戦が行えたはず。いい加減な命令書で、我々を無駄な危険に晒したのですか!」 38
2014-07-31 22:51:16「う、うるさい!バカ!作戦は今のところ順調だろう!捨て身でやれと言っているわけではない!」ミュグラ少佐は唾を飛ばして反論する。「私も貴様らごときがケンペイ天狗を殺せるとは思っておらん。五時間だ、たった五時間だけ、アラビア半島の通過時間を伸ばすだけで良いのだ。それくらい…」 39
2014-07-31 22:56:18「少佐! レーダーに新たな反応、複数!ケンペイ天狗と座礁艦隊に接近しています!」パイロットの隣に座ったオブザーバーが声を上ずらせる。「国連軍エンブリー中佐のクローンイ級部隊ではないのか?」「い、いえ、この反応は…」「国連軍? この作戦には国連軍も関与しているのですか?」 40
2014-07-31 23:08:49ケンペイ天狗と座礁艦隊は、戦闘を継続しつつ互いにただならぬ雰囲気を感じ取っていた。ケンペイの右腕にではない。ケンペイ天狗は6インチ連装速射砲をすでに脱落させていた。深海棲艦の艤装はエネルギーを多大に消費する。戦うつもりはないし、あと9000キロ超を走破する必要もあるのだ。 41
2014-07-31 23:17:45誰のものでもない複数のかすかなエンジン音を、ケンペイ天狗と叢雲は同時に聞き取った。北の方から自分たちに併走しつつ接近している。煙と砂埃が見え、時折チラチラと砂丘の陰から正体が覗いた。「叢雲、戦車だ!」トーピード103、朧が叫ぶ。直後、砂丘の上を次々と戦車が飛び越えてくる! 42
2014-07-31 23:21:58「アックバル!」戦車のスピーカーから発せられるシャウト!「神は偉大」という意味のそれはイスラムの伝統的チャントだったが、今や非合法武装勢力が己を鼓舞するために用いる邪悪なシャウトと成り下がった。彼らはナンブ・リベレーション。アラビア連邦の日本軍に仇なすテロリストである! 43
2014-07-31 23:28:06「アックバル!アックバル!」戦車にデサント(注:戦車の上に直乗りすること)した多数の歩兵も口々にシャウト!「アックバル!」さらに戦車の後方から対空砲を搭載したトラック!「アックバル!」歩兵戦闘車!「アックバル!」テクニカル(注:機関銃などを搭載したピックアップトラック)! 44
2014-07-31 23:31:42総勢100台以上の大軍勢が、勢力地に深々と侵入した宿敵の水陸機動団艦娘部隊と、正体不明のテング男を追っていたのだ!しかも…ブッダ!座礁艦隊と似たホヴァー・ユニットを付け砂上を滑走する、深海棲艦のように白い肌の艦娘もいる!ナンブ・リベレーションのサルベージ艦である!20隻! 45
2014-07-31 23:36:56