#カーネーション 周防さんをめぐる @gontaaya さんのツイート

2011年度下半期放送、NHK朝ドラの名作「カーネーション」。2014年の再放送で私たちは再び周防さんに出会いました。「今度こそ周防さんを好きにならないように」耐えながらの@gontaayaさんの渾身のツイート群は美しく凛として、それだけでひとつの作品です。前半は放送にそったツイート、続いて【周防さん考察】では、ドラマでは語られなかった部分へ想像を広げ、もうひとつのドラマ「周防さんの物語」が紡がれていきます。随時更新いたします。(「考察」が始まって以降は、放送日に即したツイートを藤色にしています。)
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ごんたあや @gontaaya

録画に追いついていけてないけれど、やはりリアルタイムで観たいので、全身全霊で待機しています。 #カーネーション

2014-07-09 07:08:08
ごんたあや @gontaaya

男社会と戦いつづけてきた糸子。その男社会の下座にいたバルバロイ(理解できない言語を話す輩)との出会い。糸子にとっては「男」は北村のごとく張り合う対象だが、バルバロイはその境界に佇む者。向けるまなざしの違いが、言語から生まれている。言葉とこころの密接な連関が絶妙。 #カーネーション

2014-07-09 08:05:50
ごんたあや @gontaaya

背負われて帰ったことを知った糸子が一言、「恥ずかしい…」。負けた、ではなく「恥ずかしい」。「恥ずかし」の基盤となるのは劣等感で、自分を劣って感じるその裏側には相手に対する敬意がある。たったこの一言で、長崎弁の「あの人」に対する境界的な感覚が表されている。 #カーネーション

2014-07-09 08:24:28
ごんたあや @gontaaya

目の前に立ちはだかる現実に対して糸子が全力で立ち向かうという構図で展開してきた戦前篇にたいして、戦後篇は、戦うべき相手を喪失した、あるいは明確でないために糸子のまなざしは宙をさまよう。ここから本当の物語が始まる。 #カーネーション

2014-07-09 08:30:58
ごんたあや @gontaaya

そもそも「松田恵」という名前を女性だと勘違いして雇ったことからして境界的であり、彼(実はその内面も非常に境界的である)の手招きによって、糸子は「異界」に入っていくことになる。 #カーネーション

2014-07-09 13:04:50
ごんたあや @gontaaya

ここから物語は、男か女か、勝つか負けるか、生きるか死ぬかという対立軸がなくなる。売れるか売れないかの二項は厳然と存続するけれども、男でも女でもなく、正しいか正しくないかでもない、境界に投げ出される。そして糸子自身の変容も避けられない。 #カーネーション

2014-07-09 13:07:16
ごんたあや @gontaaya

善作の存在感のうつくしさや、おばあちゃんの安心感、糸子が一歩ずつ上に昇っていく心地よさ、戦時中の鬼気迫る殺気、安岡のおばちゃんの鋭さ、勘助への痛み、すべて目が離せなかったけれど、やはり物語の構造として俄然面白くなるのは戦後篇だと思う。 #カーネーション

2014-07-09 13:12:49
ごんたあや @gontaaya

三味線でしか自分の思いを伝えられないひとが、自分の言葉が相手にはほとんど通じないと分かっていても、自分の言葉であんなに饒舌に語らずにはいられない、理性を超えた美しさがあの水玉のワンピースにはあって、それを見た瞬間から周防さんもまた境界を踏み越えているんだと思う。 #カーネーション

2014-07-10 07:48:11
ごんたあや @gontaaya

長崎で起きたこと、そこで見たことを、靴一足だけを残して失われた全てのものについて、周防さんはほとんど誰にも語っていないのだろうと思うし、語ろうとしても語れない、言語化できずにいたのだろうと思う。もしかするとその靴について尋ねたのは糸子が初めてだったかもしれない。 #カーネーション

2014-07-10 08:42:01
ごんたあや @gontaaya

その舶来の靴が意味するものは、高額ということでなく、周防さんの憧れと美意識であり、美に傾倒する心を彼の奥さんは誰よりも理解して守り抜いたということであり、彼の仕事の原点と、長崎での平凡で幸福な日々とその完膚無き喪失の記憶と形見、愛情表現であり、痛み、なのだろう。 #カーネーション

2014-07-10 08:43:04
ごんたあや @gontaaya

彼はこの靴を毎日手入れし毎日履いて歩くことで自分を表現し、妻との愛情を確認し、米よこせデモに参加するよりはるかに雄弁に、抗議しつづけているのかもしれない。そこに彼の真っ当さと気骨があるわけで、それに糸子が気付くのは、嗅覚の鋭さ、同じ世界の住人だったというしかない。#カーネーション

2014-07-10 08:57:18
ごんたあや @gontaaya

言葉を超えた力、「品格と誇り」の全面展開がこの周防さんとの会話で、目に見えない思想で右往左往する人々の代表が澤田さんなら、目に見えるモノの強さと美しさと確かさを信じているのが糸子と周防さん。この鮮やかな対比は、時代の進む方向と、彼らの行く道筋をも指し示している。 #カーネーション

2014-07-10 09:53:03
ごんたあや @gontaaya

勝が使っていたミシンを周防さんに使わせる支度をする糸子のおちつかなげな様子、宙を泳ぐまなざし。夫の手が触れた、だからこそ守り通したミシンを、他の男性の手に触れさせることに際して、とてもセクシュアルな緊張を糸子が抱えている気がした。言葉にならない、台詞外の芝居。 #カーネーション

2014-07-10 17:47:19
ごんたあや @gontaaya

ほめられたからだけではないのだろう、糸子は。あれは心の底の痛いところを不意打ちされたまなざしと思う。周防さんの靴と、水玉のワンピースは、決して埋められない「虚」と、それを弔う「喪」の表現で繋がっている。そのやるせなさを、自分と彼の内に見出したのかも。夕陽の中で。 #カーネーション

2014-07-10 18:06:08
ごんたあや @gontaaya

生きなければと思うのと、生きていけると思うのは、全くちがう。生きていけると思える瞬間は予期しない方向から訪れる。周防さんの独白に似た言葉は、糸子の心の言語化に他ならなくて、思いを掬い取られた瞬間は、まさに糸子にとって、生きていけると思える瞬間だったのではないか。 #カーネーション

2014-07-10 22:24:55
ごんたあや @gontaaya

周防さんに背負われた糸子が「お父ちゃん?」と勘違いしたこと。子役含め糸子が善作に背負われた場面は映像としては無いが、善作の「キュキュキュやでー」や、勝の背中をなでた仕草など、糸子が身体的接触に安らぎを感じ、その根幹を成すのは父性だと分かる。父性の喪失と、希求。 #カーネーション

2014-07-10 22:51:46
ごんたあや @gontaaya

結果として二度にわたり松田恵さんが橋渡しをしたのが、なんともやるせない。糸子の子ども2人を周防さんの前に登場させて挨拶をさせる。朝の明るい陽射しの中、店の前の往来で、子どもをはさんで向かい合う。相変わらず、とても、酷な、演出。2回目だと殊に突き刺さるのです。 #カーネーション

2014-07-10 22:56:32
ごんたあや @gontaaya

周防さんが帰った後の部屋に入り、糸子の「会話」がつづく。「おたくが思ってくれた通りです。うちは夢を作りたかった」「うちに力を下さい。こわいけど…がんばりますよって」。「言葉」は、それを発したひとの実体以上にそのひとそのものとなり、それを受け取った心の中に住まう。 #カーネーション

2014-07-11 08:09:19
ごんたあや @gontaaya

周防さんは長崎弁で、糸子は心の中で、時間をこえて、互いに通じないことばで相手に思いを伝える周防さんと糸子。「あんたなんか、関係ないわ」という拒絶の言葉を糸子に繰り返す奈津。断絶したおばちゃんへの言葉を携えて安岡美容室を訪れる糸子。ことばがめまぐるしくめぐる。 #カーネーション

2014-07-11 08:18:38
ごんたあや @gontaaya

見る者が激しい痛みを覚えるのは、奈津の服とリボンの赤。それは戦争中に見た花の色、命を表す色。奈津は生きている、けれど心は血を流しながら死んでいる。奈津の身体を染めるその色は今や無残な色となり、美と誇りと憧れと夢の崩壊をどんな傷口より見せつけて糸子を狂乱させる。 #カーネーション

2014-07-11 22:15:41
ごんたあや @gontaaya

糸子と奈津の関係は複雑で、互いに反目しつつ支配下に置こうとする所がある。そこがこの脚本家のえぐさでもある。もし現れた奈津の姿が美しいものであったなら、糸子があれほど激昂したかどうか。奈津は、糸子の鏡であり軸なのだ。そしてそれはまさに、奈津にとっては「関係ない」。 #カーネーション

2014-07-12 00:46:25
ごんたあや @gontaaya

闇市で見かけたパンパンたちには憧れのまなざしを向けた糸子が、なぜ奈津には激しく苛立つのか。周防さんの登場以来、糸子が少しずつ意識せざるを得なくなった自らの女性性の問題を、奈津の存在はさらに鋭く、最も痛ましく、最も好ましくない形で突きつけてきたようにも思える。 #カーネーション

2014-07-12 01:03:22
ごんたあや @gontaaya

水玉のワンピースで美しく装ったサエのモテ話を糸子が徹底的に無視するのも、奈津とサエと自分にどうしようもなく共通する女性性の問題が、いまの糸子を逆撫でするからだろう。周防さんに色めき立つサエにまた苛立つ。それでいて、糸子は周防さんに語りかけずには居られない。 #カーネーション

2014-07-12 01:55:18
ごんたあや @gontaaya

周防さんのまなざしの先に糸子がいる。闇市で糸子がそばを離れたことに気付く周防さん。糸子は男を追い、周防さんは糸子を追う。ふたりたどりついた奈津の住まいの前で、糸子はふりむいて、周防さんに気付き、その視線を受けとめて、たじろぐ。周防さんは、糸子から目をそらさない。 #カーネーション

2014-07-12 03:03:11
ごんたあや @gontaaya

帰宅を促す糸子に、答えず、糸子を見つめ、異変を尋ねる周防さん。その問いに答えず、糸子は目をそらし、背を向ける。うつむいて、ためらって、周防さんが背を向けてゆっくりと数歩。糸子がまなじりを決して、ふりむいて、周防さんと再び視線を交わすまで、1分に満たない、濃密さ。 #カーネーション

2014-07-12 03:13:17
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