アイヌの先祖供養と和人による墓への侵略

非ウポポイ系アイヌ @aynuitak_jiji

①【先祖供養】 お盆といえば墓参り。しかしかつてアイヌはまず墓参りはしなかった。死んだ人間からは魂が抜け出て、脱殻となった遺体はある種異界である墓に葬られる。でも魂は先祖のいるあの世に行っているので墓に行く必要はない。

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② これを和人は墓参りもしない野蛮人として差別したり、墓を掘り返して遺体を盗み、今もって返さないで問題となっている。しかし死に近づくタブーから墓に行かなかっただけで、誰が親兄弟の墓を暴かれ喜ぶ人間がいるだろうか？

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③ そして先祖供養は当然行っていたし、今まで絶やさず続けている。その呼び名は地方によって多少違いがあるが、石狩川筋では iare　イアレ、イヤレ と呼ぶ。石狩では基本的に先祖供養だけしてはいけないとされた。

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④ そこで何か理由をつけてカムイノミ（神への礼拝）を行い、その後についでながらとやる。カムイノミが男のやるものとすれば、イアレは女のやるもの。カムイノミが終わるとお婆さんが「ほらみんな！」と他の女達に声をかけ、祈りの言葉もお婆さんが唱え女がそれぞれ供物を供えていく。

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⑤ 私が若い頃は色々質問したりして、「男がうるさいね！」とたしなめられたものだ。アイヌは男の世界、女の世界が分かれていて、和人には言う事もないが、アイヌがそれを犯すときつく叱られる。私の印象では婆達が一番容赦ない。

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⑥ 勿論イアレで男が供物を供える事は可能だ。でも主導権は女にあってその指示に従わぬといけない。 他所の地域でイチャラパと言われるが、これは供物をばらまく事。勿論石狩でもイチャラパという言葉は使うが儀式全体を指すのはイアレだ。

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⑦ 先祖に供物を供えていると、無縁仏とかいろいろな供物を貰えない霊たちが見ていて「イチバ、イチバ～（いいな、いいな～）」と言って寄ってくる。これを無視すると祟られたりするので供養を行う場の周囲にも供物をばらまいてやる。これが石狩でいうイチャラパだ。

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⑧ 供養の時、供物もさることながら火が大切だ。これは熾きを置いてそこに供物をあげていく。熾きは火の神様。これを家の中から持ってきて置くところまでは男の仕事だ。あとは各人火の女神に先祖の名前を言ってあの世に届けてくれるよう言う。

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⑨ ここでも生きている人が直接死んだ人に向かう事はなく、火の女神を仲介にして供物を届けたり、伝言を頼んだりする。極めつけは供物を受け取った先祖が喜んでこの世を見ないよう伝言する。もしあの世の人間がこの世を見るとこの世で不幸があると信じるからだ。

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⑩ 「ご先祖様お見守り下さい」と言う和人の信仰とは随分違いがあるな。このように死を避けたアイヌだが、和人学者が盗掘したりするから従来の伝統を守る事もできない。今では墓参りするようになっている。でも喜んで行ってる訳ではない。私の父親も行きたがらなかったし、私に至って全く行かない。

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⑪ 和人の親戚は咎めるが、私に至って和人の妻もないからようやく解放された。勿論アイヌ式で家の幣でイアレを行っている。墓に行ってもアイヌは和人とは少し違ったやり方になる。

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⑫ 例えばたき火をたく。そういう家庭は旭川でも一件だったが、先の供物を火の女神に託す関係だろう。また供物を供えるだけでなく周囲に撒く。この理由も先に述べたとおりだ。

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⑬ 旭川は「アイヌ墓地」というのが和人の市民墓地と別なところにあるから、風習のちがいも長らく問題にならなかったが、最近周囲に住宅が何軒も建ったため、供物の上げ方でカラスが集まると住民から苦情が頻繁に来る。地元のアイヌは注意して供物を遺したり撒いたりしなくなった。

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⑭ しかし他所で暮らしていて墓参りだけに来る者はそんな事は知らない。ろくでもないアイヌと言われながら、苦情が来るたび川村兼一さんが墓の清掃に行く。これが今ぐらいの旭川の現実だ。

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⑮ またアイヌをアイヌ墓地にやった和人も、自分達の墓地がいっぱいになったら勝手にアイヌ墓地の中に墓を建てだした。昔ではない。今の事だぞ。しかもアイヌ墓地の古い墓は昔ながらのクワ（木の墓標）だから朽ちると見た目に墓所が分かりづらい。

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⑯ でもアイヌはいつもそこに参るから何処が誰の墓所か分かる。しかし和人はそんな事おかまいなし。気づいた時には２基墓が建てられた後だった。至急抗議をしてそれ以上の建築はされていないが、何とも、死んですら墓所を犯されかねない。それがアイヌだ。

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⑰ これが美しい国日本の素晴らしい日本の文化だろうか？私は撤去させればいいのにと怒ったが、アイヌ達は、建ててしまったもの仕方ない。場所がないなら可愛そうだ。置いといてやるべ。そう言う。どうだネットでアイヌを馬鹿にする和人どもよ？こんなアイヌ達を馬鹿と呼ぶのか？いないと言うのか？

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⑱ 私はアイヌ墓地に行ってそれら和人の墓標を見るたび腸が煮えくり返る。ある意味非行の記念碑としてそれらの墓標はこれからも建ち続けるのだ。