rsbs日誌#22

レズボス日誌。第二二巻
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艦これ二次創作SS。
胡散臭い女提督と脛に傷持つ艦娘たちの狂った御伽噺なり。
一部性的表現並びに残虐的表現を含むため未成年の閲覧を禁ず。

「暮れ泥む、夏の夕暮れ」

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 リリリリ…チリリリ…と夜の帳に鈴虫が鳴く…それは酷く涼しげで、同時に哀愁を感じさせた…執務室の傍ら、提督の私物が壁に押し込まれた一角に、一つの仏壇…と云うには些か洋風であったが…香が焚かれ、緩く薄く、そして長く窓へと煙が延びて居た…チン、チン、と鈴がなる…

2014-08-20 08:24:30
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 「ナンマンダブ、ナンマンダブ、アーメン、ハレルヤ、ピーナツバターにインシャラー…」ロザリオを片手に死者を悼んで居るのか貶しているのか…祷りのチャンポンを唱えつつ、小さな小さな一杯の盃に酒をゆぅるりと提督は注いでいた…不意に、扉がノックされ、唱えるのを止める。

2014-08-20 08:31:32
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 入って参れ。とノックに向けて呟いた。「失礼します。提督、お時間は宜しいでしょうか?」言葉と共に問い掛ける千歳にわしは頷いた「何用かの。千歳や。夕飯はもう終わったであろう?」「えぇ、ですから…千歳と個人的なことを」ちゃぷり、と音を立てる酒瓶を見せる彼女じゃった。

2014-08-20 08:35:47
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#rsbs日誌 リリリリ…チリリリ…と涼しげに鳴く鈴虫の鳴き声を肴に、わしらは窓辺で静かに、小さな晩酌を始めた。互いに酌をし合い、ゆっくりと杯を傾ける。海の彼方では揺らめきながら月が浮かんでおった。「提督に拾って頂いてから、もう何れくらい経つのでしょうか…」千歳はポツリと云った。

2014-08-20 08:39:21
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#rsbs日誌 「お前さんも初期艦組じゃから大分経つのう…なんじゃ?退職願いか?」わしはケラケラと笑って見せ千歳は「とんでもない」と笑みを浮かべながら呟いた。「私は多分、此処ほど幸せに生きていられる場所は在りませんから…」杯を片手に呟く横顔は、充足と僅かな黄昏を感じさせた…

2014-08-20 08:45:17
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#rsbs日誌 「毎日が幸せです。頼もしくて優しい同僚に囲まれて、妹も居て…艦載機を飛ばしたり触ったり。今でも時々甲標的を弄らせて貰ったり…あ。今妖精さんと新型を開発しているんですよ。格好いいですよね。甲標的丁型」饒舌な彼女にわしは静かに頷いてやった。そして、千歳は云う。

2014-08-20 09:01:35
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#rsbs日誌 「何よりも…『妹』を私の手で、鎮魂させて貰えましたから…」ゆらりふわりと、窓から夜の海へと消えていく香の淡い煙を見つめながら、千歳は呟いた。「『あやつ』は幸福者じゃよ。そしてお主もな」千歳の空いた杯に酌をしてやり、満ちた酒に僅かに映る月は、万華鏡のやうじゃ…

2014-08-20 09:04:47
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 …―X年前。水上機母艦千歳は、姉妹艦千代田と共に艦娘として生まれ変わった。彼女らは実の姉妹だった。適性の認められた姉妹は共にとある鎮守府へと配属される…千歳は着任してから直ぐにその才覚を露にしたと云う…其れは、手先の器用さであった…艦載機の整備能力が高かったのじゃ

2014-08-20 09:24:46
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 妖精顔負けの技術力は評判であり、彼女が手掛けた艦載機はとても良い動きをして見せたと云う…彼女の手先は、止まる所を見せなかった。整備は艦載機に留まらず、武装や甲標的と言った物にまで及んでいったそうじゃ…信頼され、重宝された千歳…じゃが、『妹』は地味じゃった。

2014-08-20 09:28:17
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 千歳の実の妹、千代田は姉の様な輝かしい才能を持ち合わせてはおらんかった…艦載機の運用は取り立てて普通。寧ろ良く被弾していた…されど彼女にも唯一の強みがあった…意思の強さじゃ。此処一番の粘り強さは戦艦さえも舌を巻いたと云う…技の千歳、気合いの千代田…

2014-08-20 09:31:31
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 しかし…姉妹の幸せは長くは続かなかった…折しも深海棲艦の大規模侵攻…俗に云うイベントがまき起こった。度重なる出撃と深海棲艦の攻撃に、艦隊は傷と疲労を増してゆく…そんな中、姉妹は共に出撃し…離別した。海戦中の不慮の事故だと当事者であった千歳は云う…

2014-08-20 09:35:19
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#rsbs日誌 急激に時化る海。そして現れた深海棲艦の戦艦級。応戦も侭為らず次々に被弾してゆく艦隊。海域を離脱しようと四苦八苦していた時じゃ…軽空母千代田、被弾。大波により転覆。戦艦級の砲弾を食らい、バランスを崩した所に折り悪く高波が彼女を襲った。「千代田ぁ!」

2014-08-20 09:39:25
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 「無理だ!千歳!救援に割ける時間も艦も無い!」当時の同僚だった戦艦の一人が、妹を救いに行こうとする彼女を押し止めた。そして、叫びが時化の海を越えて届く。「千歳お姉…!必ず…必ずっ…帰るから…!絶対、絶体帰るから…!」果たして千歳の頬を伝ったのは雨だったのか…

2014-08-20 09:43:20
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 こうして、軽空母千代田の喪失を出しながら艦隊は帰投する。激しい戦いは少なくない犠牲によって終わりを迎えた…が、しかし…新たな終わりの始まりでもあった。千歳の所属する艦隊の提督が発狂していたのである。彼は余りにも強い深海棲艦の鬼や姫に畏れをなした。何をしたのか?

2014-08-20 09:47:45
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 答えは簡単なことじゃ…大型建造に入れ込んだのじゃ。強力無比な艦娘を求め、彼は建造を回した。イベント中にそんな事をしたら如何成るか…?分かり切った事。破産じゃ。鎮守府は違法な四大資源の貸付によって破産、解体となった。提督はマグロ漁船に乗せられ艦娘は散り散りとなる…

2014-08-20 09:51:20
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 四方八方…知り合いの艦隊の伝を頼る者…地元の鎮守府に行く者…大本営に赴き再配備を待つ者、様々であった…しかしただ独り…千歳だけは、鎮守府の近くの港町に残り続けた。『妹』の帰りを待つ。ただ其れだけの為だけに。千歳には確信があった。あの子の言葉は信じられると

2014-08-20 09:55:14
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 例え、鉢巻き一枚だけに成ろうともあの子なら帰ってくると…例え、どんな形に成ってでも必ず帰ってくると…千歳にだけは分かった。自分の胸の中で千代田の心が、一本の線で繋がっていたから…故に彼女は港町に独り残った。残り続けた。あの海から大事な大事な妹が帰ってくるのを…

2014-08-20 10:00:23
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 ただ待つばかりではない。彼女は艦載機の整備の腕で金を稼ぎ、数隻の駆逐艦艦娘の護衛を雇い、あの日沈んでしまった海を何度も調べに行った。海流を調べては何処に流れ着いては居ないかと調査した…漁師に頭を下げ、何か其れらしい物を見たら教えて欲しいと願って回った。

2014-08-20 10:05:11
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 月日が過ぎた…そして努力は中々実らずに居た…そんな折りだ。地上げ屋に千歳は合う。ただの地上げ屋ならば追い払えば良いだけの事だ。しかしその地上げ屋はよりにもよって艦娘を従えていた。目は光無く、ただ脂っこく厭らしい地上げ屋の命令を聞くだけの肉人形。絶望が彼女を襲う。

2014-08-20 10:09:09
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 駆逐艦が一隻、程度ならばいい。だが相手は重巡洋艦を三隻も従えていた。抗う術など高が、改装軽空母の自分に在る訳など無い。ただ膝を付き、小さな整備屋を潰されるのを黙って見て居るしか無かった。「こいつは少しばかり、赴くのが遅かったかのう」…耳を擽る、老獪な声があった

2014-08-20 10:13:02
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 顔を上げる。鴉の濡れ羽色の長い髪を携えた、一人の少女が不遜に立ってゐた。「おぬしが、妹を待ち続けて居ると云う千歳かや?」千歳は涙を流した顔で頷いた。「成る程。そして見るからにあの悪党面した地上げ屋に虐げられて居ると…」「はい…」「なんだぁテメェ?すっぞゴラァ!」

2014-08-20 10:18:30
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 「わしか?わしは『魔女』じゃよ」パチン。と少女が指を弾いた途端轟音が轟いた。瞬く間に三隻の重巡洋艦艦娘がガラクタに解体され、地上げ屋は悲鳴を上げ逃げ出そうとする。「山城」呟き、艦娘が黒塗りの長ドスを抜刀する。居合を一閃。届く訳が無い斬撃が、男の腱を斬った。

2014-08-20 10:23:42
﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌 「ここいらで散々艦娘や艦隊を相手に悪事を働いたんじゃ。覚悟は出来ておろう?あ、さて…」少女がゆっくりと千歳へと振り向く。「わしゃ何時帰るとも分からぬ妹を待つ健気な千歳型の一番艦を迎えに来たのじゃが…どうするかや?」千歳は生唾を飲み込んだ。人では無いと理解したから

2014-08-20 10:28:26