松谷創一郎氏の映画に関する話への佐野亨氏の批判的テキスト

映画に関する話。
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佐野亨 Toru Sano @torusano1124

映画マニアの間でしか通用しない「閉じた言葉」ではなくて「娯楽のリテラシーの高いマンガや小説の読者たちでも納得できる言葉」を使うことが映画の観客を増やすことにつながる、という意見なんだけど。うーん…… bylines.news.yahoo.co.jp/soichiromatsut…

2014-08-16 17:27:12
佐野亨 Toru Sano @torusano1124

(承前)松谷氏の言う「開かれた言葉」が具体的にどんなものなのかがまったく想像できないし、そもそもここで問題にされている「類似したストーリーの映画を挙げるだけ」の映画評ってそんなに悪目立ちするほど巷にあふれているだろうか。この書き方では俗情と結託しようとしているようにしか読めない。

2014-08-16 17:33:41
真魚八重子 @Yaeko_Mana

@torusano1124 書き手のアカウント名を拝見して、ああ、と。違う次元(上下ではない)におられるかた、という気がします。

2014-08-16 17:32:50
佐野亨 Toru Sano @torusano1124

@Yaeko_Mana リサーチャーという職業はアーカイヴィストの対局にあるのではないか、という僕の個人的好悪は措いておくとしても、なぜこのリサーチ結果から「現在の映画評論のほとんどは閉じた言葉で書かれている」という状況分析に飛躍するのかが理解できませんでした。

2014-08-16 17:41:17
真魚八重子 @Yaeko_Mana

@torusano1124 そもそも「映画観客はどこにいる?」という題で、どうしたら観客を増やせるのかという趣旨で始まっているのに、唐突にパンフの話になるのが不思議。根本的に、パンフ買うのは「もうチケット買って入場してる人」なので。シネコンの食事の質を問うのと変わらないですよね。

2014-08-16 17:49:18
佐野亨 Toru Sano @torusano1124

@Yaeko_Mana そうなんですよね。百歩譲ってパンフはあくまで一つの例で、情報誌やウェブマガジンに掲載されている映画評も同じように「閉じた言葉」で書かれているのだと解釈しても、松谷氏の言う「類似したストーリーの映画を挙げるだけ」の映画評がそんなに数あるとは思えない。

2014-08-16 18:02:36
佐野亨 Toru Sano @torusano1124

@Yaeko_Mana 僕の印象では、むしろ重度の映画マニアが満足できるレベルの映画評を掲載する一般向け媒体(映画雑誌などの専門媒体を除く)は圧倒的に不足しており、そのことが映画評を入口として映画好きになる人を減少させているのではないかと思います。

2014-08-16 18:03:14
佐野亨 Toru Sano @torusano1124

かつての情報誌における映画評(映画紹介)やTVの洋画劇場における解説では、監督のフィルモグラフィやスタッフ・出演者にまつわる薀蓄、映画の技法や作品の背景などが事細かに説明されていた。視聴者はたとえその内容を十全には理解できなくとも、後追いで知識を深め、マニア度を高めていったのだ。

2014-08-16 18:14:37
佐野亨 Toru Sano @torusano1124

松谷氏の言う「娯楽のリテラシーの高いマンガや小説の読者たちでも納得できる言葉」(それがどんな言葉なのか僕には理解しかねるが)で書かれた評論が増えたとして、そのような付け焼刃のマーケティング手法による代物は、マスな読者にも映画マニアにも受け入れられずに忘れられてゆくだけだと思う。

2014-08-16 18:22:08
佐野亨 Toru Sano @torusano1124

いつの時代も、すぐれた評論は、それを書くに至った動機(情動)と正しい(正確ではない)知識と適度な抑制に裏打ちされている。松谷氏はもしかしたらそういう文章に突き動かされた経験がないのだろうか。

2014-08-16 18:31:52
佐野亨 Toru Sano @torusano1124

先日twitter上で松谷創一郎氏のコラム(bylines.news.yahoo.co.jp/soichiromatsut…)に否定的疑問を呈したところ、ご本人から応答をいただいた。それと前後して僕のほうでもウェブ上で公開されている松谷氏の映画関連記事にいくつか目を通し、あらためて思うところがあった。以下連投失礼。

2014-08-20 00:37:18

映画観客はどこにいる?──各種調査から考える(松谷創一郎) - 個人 - Yahoo!ニュース
映画マニアの外に開いた言葉
 最後に、個人的にはひとつ長らく気になっていることを記しておく。
 映画のパンフレットを買うと、映画評論家の解説が載っていることが多い。そして、そこではたいてい関連作として他の映画作品が挙げられている。それは映画というジャンルの文脈を踏まえるうえで、当然のこととして行われている。そうした場合には、映画のストーリーに注目し、その類似したストーリーの映画を挙げるだけになっているケースも多々ある。しかし、それはどれほど妥当なのだろうか。
 映画にとって、たしかにストーリーはその重要な構成要素である。が、ストーリーを表現する娯楽には、他にも小説や映画、あるいはゲームなどがある。だけど、それらに触れられることなく、映画は映画だけで語られることが多い。そうした言葉は、作品表現におけるストーリーの文脈を考えるうえでは不徹底であり、同時に、映画館のヘビーユーザーに向けた閉じたものになっていると見なすこともできる。
 もちろん、そうした映画内で閉じた言葉は、日本の映画界を支える少数のヘビーユーザーを維持するうえでは必要なことかもしれない(そもそもパンフレットを買うのは熱心な映画好きだ)。ただ、娯楽のリテラシーの高いマンガや小説の読者たちでも納得できる言葉を使うことによって、映画観賞者は少しでも増やせるのではないか。
 ライトユーザーとヘビーユーザーの断絶の緩和は、もちろんそう簡単ではないだろう。ただ、映画マニアが映画マニアを再生産するばかりのことが延々と続けられている。仲間内でパスを回すだけでなく、必要なのは映画の外に開いた言葉ではないかとずっと考えている。

佐野亨 Toru Sano @torusano1124

まず、僕が先のツイートで否定的に言及したのは、松谷氏のコラム中の小見出し「映画マニアの外に開いた言葉」以下の文章についてである。それ以前の文脈についてもいろいろ感想はあるが、とりあえず今回は議論の本題ではないので措いておくことにする。

2014-08-20 00:39:59
佐野亨 Toru Sano @torusano1124

詳しくは原文に当たっていただきたいが、もういちど簡単に要約すると、映画マニアの間でしか通用しない「閉じた言葉」ではなくて「娯楽のリテラシーの高いマンガや小説の読者たちでも納得できる言葉」を使うことが映画の観客を増やすことにつながるのではないか、というのが松谷氏の主張であった。

2014-08-20 00:41:43
佐野亨 Toru Sano @torusano1124

コラム中ではパンフレットが一例として挙げられているが、前後の文脈から類推するに、松谷氏はパンフにかぎらず、雑誌やウェブマガジン等の発信媒体において、彼が言うところの「映画マニアの外に開いた言葉」で書かれた文章が増えることを願っているのだと解釈できる。

2014-08-20 00:43:08
佐野亨 Toru Sano @torusano1124

この「映画マニアの外に開いた言葉」をめぐる松谷氏の主張に対して、僕は以下のふたつの点から疑問を呈した。松谷氏の言う「開かれた言葉」すなわち「娯楽のリテラシーの高いマンガや小説の読者たちでも納得できる言葉」とは具体的にはどのような言葉なのか、ということが一点。

2014-08-20 00:46:33
佐野亨 Toru Sano @torusano1124

さらに根本的な問題として、この松谷氏の見解の前提とされている「映画のストーリーに注目し、その類似したストーリーの映画を挙げるだけになっている」ような映画評がはたして本当に「多々ある」のだろうか、ということがもう一点である。

2014-08-20 00:47:56
佐野亨 Toru Sano @torusano1124

後者の疑問については、松谷氏に具体例を提示してもらうよりほかはない。この前提がそれこそ数値的に立証されないかぎり、松谷氏の以下の見解はありもしない問題を自らつくりだして自らそれに反駁してみせる空疎なひとり相撲になってしまうからである。

2014-08-20 00:48:49
佐野亨 Toru Sano @torusano1124

そのうえで、ここでは松谷氏の前提としている問題をひとまず「ある」ものと仮定して話を進めたい。つまり前者の疑問、松谷氏の考える「娯楽のリテラシーの高いマンガや小説の読者たちでも納得できる言葉」とはいったいどのような言葉なのか。

2014-08-20 00:49:46
佐野亨 Toru Sano @torusano1124

先述のコラムによれば、「ストーリーを表現する娯楽には、他にも小説や映画、あるいはゲームなどがある」のだから、それらに言及しないものは評論として「不徹底」である、もっと小説やゲームにも言及しろ、というのが松谷氏の意見であるらしい。

2014-08-20 00:51:20
佐野亨 Toru Sano @torusano1124

最初に松谷氏のコラムを読んで、僕が混乱したのはこの部分。つまり彼は、「映画のストーリーに注目し、その類似したストーリーの映画を挙げるだけになっている」映画評を問題視しておきながら、結論の部分では「ストーリーに注目し」た映画評が多いという状況それ自体を否定しているわけではないのだ。

2014-08-20 00:53:27
佐野亨 Toru Sano @torusano1124

これがたとえば「ストーリーに注目し」た映画評は本当に映画を論じていることにはならない、もっとカメラワークや俳優の演技、作品の背景などにも言及しろ、あるいは表層批評的に、画面に何が映っていたかどうかをひたすら論じろ、というのならまだ理解できる。だが、松谷氏はそうは主張しない。

2014-08-20 00:54:38
佐野亨 Toru Sano @torusano1124

つまり、先の松谷氏の意見に照らし合わせるならば、彼は、映画のストーリーを論じる際に小説やゲームを参照しないのはおかしい、というただそれだけのことを訴えていることになる。なぜか。

2014-08-20 00:58:38
佐野亨 Toru Sano @torusano1124

それは、松谷氏によれば、マンガや小説の読者には「娯楽のリテラシーの高い」人が多いので、映画評は古色蒼然とした映画マニアだけでなく、そういう高質な読者に向けて書かれるべきだからである。

2014-08-20 01:00:26