まい調吸血鬼パロ

ぱろでぃはロマンだと思います!9/1まで反映、反映されてなかったらふちの頭に盥を落とし&リプライで教えてください。もちろん自分で入れるのも自由です(tos投げ分はそっとしてありますが入れてもいいのよ!うずうず)
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お菊 @sara_yashiki

@mt_tl 差し出された手を握る。クリューみたいに細くなく、おば様みたいに長くもない、柔らかい指。「悪くないわ」私が答えると、エマはくすりと笑う。「それはよかった。さっき、レディー・シシィの部屋から出てくるところを見かけたわ。ねぇ、どんなお話をしていたの?」 #まい調吸血鬼パロ

2014-08-31 13:19:34
お菊 @sara_yashiki

@mt_tl 私は三つの約束のことを話した。あと、クリューのことも。「ふぅん、そうなんだ…」私の手を握り返す力が強くなる。「あなた、もしかして、レディー・シシィから血をもらったんじゃないかしら?…ねぇ、お願い。私にもちょうだい。ほんの少し…一滴でもいいから」 #まい調吸血鬼パロ

2014-08-31 16:09:45
お菊 @sara_yashiki

@mt_tl ぐいっと手を引っ張られる。その勢いで、私はバランスを崩す。前のめりになった私をエマが抱き止め、私の首筋に牙をあてがう。「嫌っ!離して!」私はエマを突き飛ばした。私の中のクリューの血を、一滴だって奪われたくなかったから。「あなたに私の血はあげない」 #まい調吸血鬼パロ

2014-09-01 22:48:37
お菊 @sara_yashiki

@mt_tl 「…クリュー」名前を呼んでから、間違いに気づいた。だって、全然違うじゃない。クリューは、こんなに背が高くない。こんなに日に焼けていない。こんなに大きな手をしていないし、声だってこんなに低くない。もっと華奢で、もっと儚げで、もっと静かで、もっと…。 #まい調吸血鬼パロ

2014-09-01 22:59:58
お菊 @sara_yashiki

@mt_tl 「うわっ!」白い紙が風で舞い上がる。彼は捕まえようとして腕を伸ばし、でも届かなくて伸ばした手が空を切った。「畜生、待て!」それでも、彼は追いかける。…そうだ、クリューはもっと繊細で、もっと臆病で、館の外に広がる世界を嘲笑い、何もかもを諦めていた。 #まい調吸血鬼パロ

2014-09-01 23:56:03
お菊 @sara_yashiki

@mt_tl だけど、ねぇ、どうしてこんなに似ているんだろう?目の色も、髪の色も、顔の形も…。「ルイ」甘ったるい声に呼ばれて、彼は立ち止まり、声の主の許へと駆け寄る。「どうした?大丈夫か?」「ごめんなさい、気分が優れなくて…。木陰で休んでいてもいいかしら?」 #まい調吸血鬼パロ

2014-09-02 00:23:19
お菊 @sara_yashiki

@mt_tl 「立てるか?」「肩を貸してくれる?」「もちろん」長い艶やかな黒髪。太陽の光の下でも、とっても綺麗。エマの腕を肩にまわして、彼はゆっくりと立ち上がる。そして、振り返る。「クリューザンティーナ…」私に明るく微笑みかける。「…クリュー、お前も来いよ」 #まい調吸血鬼パロ

2014-09-02 00:43:36
お菊 @sara_yashiki

@mt_tl …クリュー?「私のこと?」訊ねると、彼は気まずそうな顔をした。「嫌か?」「…ううん、別に」「そっか!」クリューに似た顔が、見たこともない表情で笑う。「悪ぃ、そいつを持ってくれないか?」私は彼の筆箱と画板を抱える。「あなたの絵、風で飛ばしちゃった」 #まい調吸血鬼パロ

2014-09-02 09:49:18
お菊 @sara_yashiki

@mt_tl 「また描けばいい。もう頭に焼きついている。何度だって描ける」エマが会話に入ってくる。「彼、すごく記憶力がいいのよ」彼は目をぱちぱちさせる。「お前ら、知り合いか?」「ええ、お友だちなの。そうよね、クリュー?」彼の首筋には、うっすらと噛み跡があった。 #まい調吸血鬼パロ

2014-09-02 10:01:21
お菊 @sara_yashiki

@mt_tl ルイが顔をしかめる。鉛筆の削りカスに血が滴り落ちる。「痛ぇ、ドジった…」鉛筆と小刀を置くと、自分の左手の人さし指を見て、口をへの字に曲げる。…あぁ、血だ。血のにおい。私はふらふらと彼に近づく。彼はバツが悪そうに笑い、私に傷を見せる。「馬鹿だなぁ」 #まい調吸血鬼パロ

2014-09-02 11:05:25
お菊 @sara_yashiki

@mt_tl 口の中に、快い酸味が広がる。私は夢中で舌を這わせる。物足りなくて、絞り出すようにしゃぶる。…血の味だ!けれど、ルイが私の手を振り払う。自分の指を右手で庇うようにして、苛立たしげに吐き捨てた。「二度とそんな顔をするな。俺の前でも、他の奴の前でも…」 #まい調吸血鬼パロ

2014-09-02 11:17:22
お菊 @sara_yashiki

@mt_tl 頬にふっと吐息が掛かる。私を床に押さえつけ、私の目を覗き込み、エマが妖しく微笑む。「彼から手を引いてあげてもいいわ。彼の血の味は素敵だけれど、あなたの血を吸わせてくれるなら、あなたにあげる」逃げ出したいのに、手首を強く掴まれていて、抵抗できない。 #まい調吸血鬼パロ

2014-09-02 13:43:33
お菊 @sara_yashiki

@mt_tl じゃあ、叫んで助けを呼んでみる?…でも、事態が好転するとは思えない。ひんやりとした舌が、私の鎖骨の上を滑る。「ねぇ、何故私じゃなくて、あなたなのかしら?」エマがぽつりと呟く。「私の方が、あなたよりもずうっと長く居たのよ。一族にも、ルイの側にも…」 #まい調吸血鬼パロ

2014-09-03 21:52:15
お菊 @sara_yashiki

@mt_tl エマの牙が、私の首の薄い皮膚を破って、私の身体に入ってくる。痛み?疼き?痺れ?…いいえ、違和感、異物感、嫌悪感。怖い!嫌だ!気持ち悪い!体がガタガタと震えて、吐き気がする。いやああっ!私は叫んでいた。目から涙が溢れて、玉となって頬を転がり落ちた。 #まい調吸血鬼パロ

2014-09-06 22:36:44
お菊 @sara_yashiki

@mt_tl …でも、これでルイの側にいられる。頭の片隅で、ルイが囁く。「お前が誰を見ていても構わない。俺はお前が欲しい」体の奥底で、クリューが笑う。「僕らが生きていくのに必要なのは、自分ではない誰かの血だ。だったら、君と僕さえいれば、それで十分じゃないか?」 #まい調吸血鬼パロ

2014-09-07 14:53:53
お菊 @sara_yashiki

@mt_tl ほんの1分や1秒の短い間だったのかもしれない。でも私には、とても長い時間に感じられた。エマが私の首筋から牙を抜き、体を起こした。自分の口元を拭うと、うっとりとした表情で微笑む。「これが、レディー・シシィの血…」そして、目から一筋の赤い涙を流した。 #まい調吸血鬼パロ

2014-09-07 14:54:47
お菊 @sara_yashiki

@mt_tl 「うふふ…あはは…」エマは立ち上がって、自分の体を抱きしめる。「うふふふ!熱いわ!体が熱い!焼けるようよ!素敵だわ!血が私を変えてゆく!」体をのけ反らせ、高らかに笑う。「あはははっ!力だわ!力が湧いてくる!溢れだす!これがレディーの力なのね!」 #まい調吸血鬼パロ

2014-09-07 20:33:18
お菊 @sara_yashiki

@mt_tl ゴボッと湿った音がした。エマの体がビクビクと痙攣する。口からは血が滴り落ちる。「…い、嫌っ、血が私を冒す!私を飲み込む!私を消し去ろうとする!」エマは膝をついた。胸をかきむしって、苦しそうに血と言葉を吐き出す。「クリューザンティーナ…ティーメ…」 #まい調吸血鬼パロ

2014-09-07 21:09:44
お菊 @sara_yashiki

@mt_tl 虚ろな目が血の涙を流し、私をジッと見つめる。「ティーメ…僕のティーメ…僕だけの…」…ああ、そうだ!私はこの目を知っている。薄闇の中から、そおっと白い手が伸びてきて、震えるエマを背中から抱きしめる。「…お馬鹿なエマ」エマは、おば様の腕にしがみつく。 #まい調吸血鬼パロ

2014-09-07 21:40:26
お菊 @sara_yashiki

@mt_tl 「レディー・シシィ…助け…て…僕は…嫌よ…私…君を…狂って…おかしく…愛して…」おば様は、エマの綺麗な黒髪に、頬を押しつける。「エマ、私はあなたが好きよ。一族の皆を愛している。だから、皆には私の血をあげないの」エマの口から、赤黒い血が噴き出す。 #まい調吸血鬼パロ

2014-09-07 22:00:07
お菊 @sara_yashiki

@mt_tl おば様は静かに囁く。「レディーは一族の主ではない。一族の守護者にして、奴隷。…決して、楽な生き方ではないわ」エマの胸を、銀色のナイフの刃が突き破る。「おやすみなさい。あなたが、あなたであるうちに」エマの体が朽ちる。真っ白な灰となって、風に舞う。 #まい調吸血鬼パロ

2014-09-07 22:22:39
お菊 @sara_yashiki

@mt_tl おば様は、ナイフとエマの黒いドレスを床に置いた。私は思わず尋ねる。「エマはどこへ行くの?」おば様は微笑む。「知らないわ。あなたのお兄さんなら、知っているかもしれないわね」私に歩み寄り、私の頭を抱きかかえる。「クリューザンティーナ。私の可愛い姪。 #まい調吸血鬼パロ

2014-09-07 22:32:32
お菊 @sara_yashiki

@mt_tl 期待通りだわ。あなたなら、私の血に耐えられると思っていた」私の頭から手を離すと、私の捲れたスカートを直して脚を隠し、私の乱れた髪を手櫛で整えはじめた。「あなたなら、いつか私の跡を継いでくれるだろうと思った。でも、あなたの血は、あまりにも濃すぎた」 #まい調吸血鬼パロ

2014-09-08 00:14:09
お菊 @sara_yashiki

@mt_tl 私は自分の首筋に触れてみる。噛まれた跡はどこにもない。おば様は私の襟元を直す。「あなたは、一族のために血を捧げることができない」「おば様…レディー・シシィ」「なぁに?」「私は約束を破りました。人間に、私が吸血鬼であることを知られてしまいました」 #まい調吸血鬼パロ

2014-09-08 00:43:46
お菊 @sara_yashiki

@mt_tl レディー・シシィは、口元だけで笑った。「そう?なら、お仕置きしなくちゃね」頬に激しい痛みが走る。指の長い手が、私の頬を強かに打った。「好きな場所へとお行きなさい。あなたは、自分の身を自分で守らなくてはならない。この程度の痛みなんて、可愛いものよ」 #まい調吸血鬼パロ

2014-09-08 01:00:20