【第二部-弐拾参】その日を迎えた五月雨 #見つめる時雨

五月雨,夕張
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五月雨視点

とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

海を歩く。私が一歩歩くたびに波紋が水面に広がる。とても静かな海。風はない。波もない。私はそんな海を、一人で歩く。

2014-08-26 21:05:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

ここはどこだろう。何で私、一人でこんなところにいるんだろう。皆はどこ? 夕張さん、由良さん、どこですか? 白露、時雨、みんな、どこ?

2014-08-26 21:10:23
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

突然、足が海に沈む。私は慌てて体勢を立て直そうとした。しかし、足は何かに引っかかったように動かなかった。気づいたら、私は腰まで海に浸かってしまっていた。

2014-08-26 21:15:25
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

これ以上沈むことはなかった。だけど、動くことも出来なかった。どうしよう。…途方に暮れて空を見上げると、飛行機が飛んでいた。

2014-08-26 21:20:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

あれは…。その飛行機は私に爆弾を落としてきた。何…!?あの飛行機は…敵!? 動けない私は、じっと耐えるしかなかった。

2014-08-26 21:25:23
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

やがて爆撃機は去った。私はホッと息を撫でおろした。幸い直撃弾はなく、無事だった。でも、足は動かないままだった。このままじゃ、また爆撃機がくるかもしれない。早く何とかしないと。私は必死に足を動かそうとした。

2014-08-26 21:30:29
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

その時、私の右脇腹に衝撃が走った。驚いてそこを見ると、脇腹が吹き飛んでいた。それを視認したと同時に、体に激痛が走った。痛い。苦しい。助けて、誰か…。私は、海に倒れこんだ。

2014-08-26 21:35:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

ゆっくりと海面が上がってくる。いや、私が沈んでいるんだ。どんどん、沈む。海の底は、真っ暗だった。何も見えない。何も感じない。いつの間にか、痛みも感じなくなっていた。ただ、自分が沈んでいくという感覚だけがあった。

2014-08-26 21:40:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

…海の中に何かが見える。…誰? あれは…夕張さん…? 「五月雨ちゃん、二手に分かれて島の反対側で合流しましょう」 え…? はい…。どうして夕張さんがここにいるのか。訳もわからないままに私は返事をした。

2014-08-26 21:45:28
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

夕張さんの姿が見えなくなる。えっと、二手にわかれるんだっけ…。夕張さんがあっちへ行ったから、私はこっち…。…あれ、何だろう、泡が出てる。私じゃない…。夕張さんでもない…。何だろう?…いっか、夕張さんに追いつかないと…。

2014-08-26 21:50:19
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

暗闇の中を進んでいくと、夕張さんの姿が見えてきた。よかった、合流できた。夕張さん。私は夕張さんの後ろ姿に声をかけた。 「……」 夕張さん? 返事は、なかった。

2014-08-26 21:55:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

夕張さ…。…っ!! 何も言わない夕張さんをよく見ると、右半身がボロボロになっていた。何!?どうして…!? 困惑していると、夕張さんが下へ沈み始めた。え!? ダメ!! 夕張さん!! 私は、手を伸ばした。

2014-08-26 22:00:32
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

夕張さんの肩に、手が届いた。しかし…私は、掴めなかった。まるで幽霊みたいに、夕張さんの体がすり抜けた。混乱。何が何だかわからない。どうして夕張さんに触れないの!? このままじゃ…。そうしている間にも、夕張さんはどんどん沈んでいった…。

2014-08-26 22:05:24
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

沈む夕張さんに追いつこうと、必死に体を動かした。しかし、なぜかまた動かなくなっていた。待って、待って…夕張さん…!! そんな…また私…助けられないの…そんなの、嫌だ…。

2014-08-26 22:10:24
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

再び、真っ暗闇に包まれる。また、体が沈んでいく…。体も、動かないままだった。ゆっくりと、沈んでいく…。夕張さん…私…。

2014-08-26 22:15:31
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

…声が聞こえる。この声は、聞いたことがあった。ここ一か月の間、ずっと私の頭の中に聞こえていた声。…私を、責め続ける声。お前は許されない。お前はそこにいていい存在じゃない。沈め、沈め、海の底へ。その声が、再び私の頭に反響する。

2014-08-26 22:20:22
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

青い光が私の視界を覆った。この光は…何? 何処から…。

2014-08-26 22:25:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

目を擦る。すると光は四散した。しかしまた視界を覆う。もしかして、私の目から出てるの?

2014-08-26 22:30:22
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

脇腹に違和感が襲った。吹き飛んだはずの部分が、黒い何かに覆われていた。何、これ…。

2014-08-26 22:35:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

嫌…これってまさか…私…深海棲…

2014-08-26 22:40:23
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

嫌だ…嫌だ…!そんなものになるくらいなら、私は…

2014-08-26 22:45:22
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

そう願った時、少しずつ、私の体が消え始めた。足の先から、手の先から…水の泡になって消えていく。深海棲艦に成り果ててしまう前に、私の体は自ら消えることを選んだんだ。

2014-08-26 22:50:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

…泡は、ゆっくりと水面へ向かって昇っていった。ゆっくり、ゆっくりと…。

2014-08-26 22:55:22
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

暗い海が、明るくなっていく。…海が一面珊瑚で覆われ、キラキラと光って見えた。…ああ、綺麗…。

2014-08-26 23:00:59