五月雨視点
海を歩く。私が一歩歩くたびに波紋が水面に広がる。とても静かな海。風はない。波もない。私はそんな海を、一人で歩く。
2014-08-26 21:05:20ここはどこだろう。何で私、一人でこんなところにいるんだろう。皆はどこ? 夕張さん、由良さん、どこですか? 白露、時雨、みんな、どこ?
2014-08-26 21:10:23突然、足が海に沈む。私は慌てて体勢を立て直そうとした。しかし、足は何かに引っかかったように動かなかった。気づいたら、私は腰まで海に浸かってしまっていた。
2014-08-26 21:15:25これ以上沈むことはなかった。だけど、動くことも出来なかった。どうしよう。…途方に暮れて空を見上げると、飛行機が飛んでいた。
2014-08-26 21:20:21あれは…。その飛行機は私に爆弾を落としてきた。何…!?あの飛行機は…敵!? 動けない私は、じっと耐えるしかなかった。
2014-08-26 21:25:23やがて爆撃機は去った。私はホッと息を撫でおろした。幸い直撃弾はなく、無事だった。でも、足は動かないままだった。このままじゃ、また爆撃機がくるかもしれない。早く何とかしないと。私は必死に足を動かそうとした。
2014-08-26 21:30:29その時、私の右脇腹に衝撃が走った。驚いてそこを見ると、脇腹が吹き飛んでいた。それを視認したと同時に、体に激痛が走った。痛い。苦しい。助けて、誰か…。私は、海に倒れこんだ。
2014-08-26 21:35:21ゆっくりと海面が上がってくる。いや、私が沈んでいるんだ。どんどん、沈む。海の底は、真っ暗だった。何も見えない。何も感じない。いつの間にか、痛みも感じなくなっていた。ただ、自分が沈んでいくという感覚だけがあった。
2014-08-26 21:40:21…海の中に何かが見える。…誰? あれは…夕張さん…? 「五月雨ちゃん、二手に分かれて島の反対側で合流しましょう」 え…? はい…。どうして夕張さんがここにいるのか。訳もわからないままに私は返事をした。
2014-08-26 21:45:28夕張さんの姿が見えなくなる。えっと、二手にわかれるんだっけ…。夕張さんがあっちへ行ったから、私はこっち…。…あれ、何だろう、泡が出てる。私じゃない…。夕張さんでもない…。何だろう?…いっか、夕張さんに追いつかないと…。
2014-08-26 21:50:19暗闇の中を進んでいくと、夕張さんの姿が見えてきた。よかった、合流できた。夕張さん。私は夕張さんの後ろ姿に声をかけた。 「……」 夕張さん? 返事は、なかった。
2014-08-26 21:55:21夕張さ…。…っ!! 何も言わない夕張さんをよく見ると、右半身がボロボロになっていた。何!?どうして…!? 困惑していると、夕張さんが下へ沈み始めた。え!? ダメ!! 夕張さん!! 私は、手を伸ばした。
2014-08-26 22:00:32夕張さんの肩に、手が届いた。しかし…私は、掴めなかった。まるで幽霊みたいに、夕張さんの体がすり抜けた。混乱。何が何だかわからない。どうして夕張さんに触れないの!? このままじゃ…。そうしている間にも、夕張さんはどんどん沈んでいった…。
2014-08-26 22:05:24沈む夕張さんに追いつこうと、必死に体を動かした。しかし、なぜかまた動かなくなっていた。待って、待って…夕張さん…!! そんな…また私…助けられないの…そんなの、嫌だ…。
2014-08-26 22:10:24再び、真っ暗闇に包まれる。また、体が沈んでいく…。体も、動かないままだった。ゆっくりと、沈んでいく…。夕張さん…私…。
2014-08-26 22:15:31…声が聞こえる。この声は、聞いたことがあった。ここ一か月の間、ずっと私の頭の中に聞こえていた声。…私を、責め続ける声。お前は許されない。お前はそこにいていい存在じゃない。沈め、沈め、海の底へ。その声が、再び私の頭に反響する。
2014-08-26 22:20:22そう願った時、少しずつ、私の体が消え始めた。足の先から、手の先から…水の泡になって消えていく。深海棲艦に成り果ててしまう前に、私の体は自ら消えることを選んだんだ。
2014-08-26 22:50:20