「…って来て、五月雨ちゃん…!!」 …声。私の心を強く打つ声。私に温かさをくれた声。私を許してくれた声。…この声は…。 「…夕張さん」
2014-08-28 22:00:52「五月雨ちゃん!消えちゃダメ!生きて!!私達と一緒に…!!」 そうだ…私は…! 「夕張さん…!!」 消えてしまっていた私の手が、そこにあった。私は、手を光に向かって伸ばした。夕張さんの手を、掴むために。
2014-08-28 22:10:21私は、ずっと過去に囚われていた。ずっと後悔していた。また生を貰った今、罪滅ぼしがしたかった。でも…誰も、夕張さんも…そんなことは望んでなかった。私…皆を苦しめていただけだったんだ。私は…沈まない。消えない。みんなと、夕張さんと一緒に生きる。生きていたい…!!
2014-08-28 22:15:30あれ? ここは…。 「五月雨ちゃん…よかった…よかったぁ…」 夕張さんが私に縋り付いて泣いていた。 「夕張さん…みんな…?」 療養室には夕張さんだけでなく白露型の皆もベッドを囲むように立っていた。泣いていた。そして…。 「五月雨ー!!」 皆が一斉に私に抱き付いてきた。
2014-08-28 22:30:36「わっ、苦しいよ…」 白露と夕立に抱き締められ、時雨が頭を撫でてくれる。春雨は村雨の腕にくっついて、二人とも泣いていた。 「え!?きゃあ!!脚は!脚はやめてー!!」 涼風が私の脚にしがみついてきた。くすぐったくて恥ずかし…きゃっ!? ちょっと、太ももはホントにやめてー!!
2014-08-28 22:35:20って、あれ…感覚が…。 「五月雨ちゃん…私の手がわかる…?」 夕張さんが、私の手にそっと触れた。私はその手を握った。…夕張さんの、体温を感じた。 「…はい、夕張さんの手…温かいです」 そう言うと夕張さんは私の手を頬に当て、また涙を流した。
2014-08-28 22:40:20私は夕張さんの目から流れる涙を人差し指で掬った。涙って、こんなに熱かったんだ…。 「…夕張さん」 「…え?」 「私を呼んでくれて、ありがとうございます」 「…また五月雨ちゃんが大変なことになったら、大声で叫んじゃうんだから」 「…はい」
2014-08-28 22:45:20「五月雨ちゃん」 「はい?」 「おかえり」 「…はい!」 私は、いつぶりかわからないや…心から、笑顔になれました。―
2014-08-28 22:50:24