#完全ノープラン艦これ与太話 【ストラグル・フォア・エヴリフリーツ・ソウルズ】艦ノ章【レイジング・バアル・ゼブル・ディーサイド】 #5+終章
#完全ノープラン艦これ与太話 【ストラグル・フォア・エヴリフリーツ・ソウルズ】 終章【ストラグル・フォア・オンリー・コンティニュー・トゥ・グロリアス・フューチャー】 #KZNPLN
2014-09-02 20:43:31『赤レンガ』こと天一号最終決戦兵器バアル・ゼブルの浮上とそれに伴う大地震、ならびに帝国軍反乱分子による大規模空爆。帝都を襲った未曾有の大破壊は、大日本帝国に大きな爪痕を残した。 #KZNPLN
2014-09-02 20:48:51大将イサロク、大和、中将浜風、矢矧、クリタ、そして元帥大淀を含む極めて多数の死者・行方不明者・重篤者を出した帝国軍の混迷は、臨時司令長官の緊急任命を受けた准将あきつ丸の不眠不休政治行為により、ひとまずの安定を迎えようとしていた。 #KZNPLN
2014-09-02 20:57:01大和ら非理法権天一派の関与は公には秘匿された。大和は北上らと共に、叛逆者ナグモとその軍勢を相手に奮戦。凶弾に倒れ名誉の轟沈を遂げた。大和らの名誉は永久に守られ、大和が全てを賭し挑んだ戦いは全て無に帰した。全てを知る盲目の英雄、雷巡北上はいまだ黙し、何も語らぬ。 #KZNPLN
2014-09-02 21:02:11帝国全土はオツヤめいたアトモスフィアに包まれ、それは英雄率いるかの鎮守府とて例外ではない。敬虔なブディストである日本人は、英雄を讃えるよりも死者を弔うことを好む。一連の大混乱を経て、この鎮守府でも大規模な慰霊祭がしめやかに執り行われた。 #KZNPLN
2014-09-02 21:05:28「えぐ、ひぐ……や、やまど、ざん……アアアア……」悲痛な面持ちの駆逐艦らの傍らで、人目をはばからず泣き崩れる、小柄な潜水艦。黒髪の駆逐艦が彼女の背を撫で、心配そうに覗き込む。「まるゆちゃん……」「ウェ、ウエエエエアアア……」周囲のアトモスフィアは異質だ。 #KZNPLN
2014-09-02 21:10:26まるゆの瞳には、最期に垣間見た大和の笑顔が焼き付いていた。落ちこぼれめいた自分に笑いかけ、身を案じてくれた最強の大戦艦の勇姿が。優しい顔が。「ナンデ……ナンデ……アアア」駆逐艦潮はまるゆを庇うように、ぐいと抱き寄せた。周囲の害意からだ。 #KZNPLN
2014-09-02 21:14:11潮は居心地の悪さを感じていた。響を喪った時と同じだ。大日本帝国においては、しめやかなアトモスフィアを破ることは重罪とされる。たとえそのアトモスフィアが偽りのオセジであり、それを破るのが真実の涙であってもだ。日本人は何よりも、奥ゆかしさを重んじる。 #KZNPLN
2014-09-02 21:18:04異質なアトモスフィアを感じ取ったのか、まるゆは潮の手を遠慮がちに除け、とぼとぼと式場から去っていった。無言の害意が、一斉に潮へ向いた。潮は縮こまり、アトモスフィアに刺されて動けなくなった。力強い味方になってくれたであろう秋雲も、今はもういない。 #KZNPLN
2014-09-02 21:23:00まるゆは式場を出ると、その場で崩れ落ち、さめざめと泣いた。まるゆは大和の犯した行為を、大まかに勘づいていた。それでもなお、大和の死が悲しかった。まるゆにとって、大和はいまだ英雄だった。やがて泣き疲れたまるゆは、ふらふらと歩き出した。その時だった。 #KZNPLN
2014-09-02 21:26:29まるゆの背筋に、ぞわりと悪寒が走った。誰もいない母港を、まるゆは何かに引き寄せられるように走った。何か、とてつもなく嫌な予感がする。自分が行かなければいけない気がする。眼前に大きな建物が見えた。工廠だ。 #KZNPLN
2014-09-02 21:29:12工廠長は帝都のドックで重篤状態だと聞く。セキュリティ常駐管理者たる伊58も戦没し、慰霊祭の最中、工廠は今やがらんどうだ。誰もいない。いるはずがないのだ。つまり今、工廠に誰かの影が見えたとすれば。それは幻覚か、或いは、見てはいけないものなのだ。 #KZNPLN
2014-09-02 21:32:39モスキート・ダイビング・トゥ・ベイルファイア。まるゆは半ば神がかりめいて、工廠内部へと吸い込まれていった。不思議とセキュリティは開放されていた。空席となった管理室が、彼女の道を切り開くかのように。 #KZNPLN
2014-09-02 21:37:09――数分後。まるゆは存在しない筈のフロアで正気に戻る。地下49階。日本人が忌避し、決して造らぬ呪われたフロア。階数の暗示する死が、まるゆの眼前に迫っていた。「……不具の水蛭子め。大人しく、出来損ないに相応しい惨めな人生を送っていればよかったものを」 #KZNPLN
2014-09-02 21:41:06へたり込むまるゆの額に、赤いレーザーサイトがちらつく。恐怖のあまり失禁したまるゆを、眼鏡越しの歪んだ瞳が貶んだ。「穢らわしい。大日本帝国の恥部め……まあ、良いでしょう。今日は祝勝の宴です。愚者の些細なインシデントなど、水に流さねばシツレイにあたる」 #KZNPLN
2014-09-02 21:46:15「アア、アアア……ナンデ……?」震えるまるゆを、今度は邪悪な笑みが見下ろした。そして大仰に語り始めた。まるゆの頭上の虚空へ向けて。「死病に侵されたアハズヤの王は、邪神バアルに救いを求め、ミジメな死を迎えたと言います。僭王に相応しい愚かな末路。実に滑稽です」 #KZNPLN
2014-09-02 21:51:14まるゆは大淀の言葉の意味はわからぬ。ただ、大和が侮辱されていることだけはわかった。「……大和、さんの……」「ズガタッキェー!」大淀の蹴りが、まるゆを打ち据えた。「誰が発言を許可しましたか。誰が、我が皇国の名を騙る愚者の名を口にしていいと言いましたか。恥を知れ!」 #KZNPLN
2014-09-02 21:56:16「貴様は知る由もないでしょうが。これより私は、否。大日本帝国は、勝利と言う名の終戦を迎えます。大和は愚者にしては、実際よくやってくれた。霊的兵器による本土襲撃。得難いデータです」大淀は両手を広げた。「貴様に理解できるか。我らの闘争の歴史が」 #KZNPLN
2014-09-02 21:58:49「勝利……?深海棲艦に……?」大淀の瞳が邪悪に歪んだ。そして唾を吐くように言い捨てた。「第二次世界大戦です。かの大戦はいまだ終わっていない。そしてこれから終わるのだ。大日本帝国の勝利という形で。偉大なる霊的国防兵器、霊桜華ヤスクニの神威によって」 #KZNPLN
2014-09-02 22:02:52まるゆは頭がゴチャゴチャになった。第二次世界大戦?ヤスクニ?この女は、何を言っている?何もわからぬ。ただ確かなのは、この女はわけのわからぬ理由で大和を侮蔑し、そして自分のちっぽけな命が、ここで終わるということだ。わけのわからぬ理由で。 #KZNPLN
2014-09-02 22:05:32まるゆの額に、冷たい砲が向けられた。「貴様には知る権利はない。必要もない。ここでブザマに、死ぬがよい。出来損ないの潜水艦もどきめ。霊桜華の下で分不相応に死ねる栄誉に打ち震え、ただひたすらに、死ね」まるゆは悔しさに唇を噛んだ。己の非力を悔いた。涙を飲んだ。 #KZNPLN
2014-09-02 22:08:58