艦隊これくしょん二次創作SS 『人機の器-予告編- 』

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ケモ耳ジト眼娘十四朗 @Jyuusirou

艦これのイベントってことなんで、ぼくもなんかやる

2014-09-14 10:11:44
ケモ耳ジト眼娘十四朗 @Jyuusirou

目の前のベッドに寝かされた、正直なところ寝ているのか座っているのかさえ判断のできないそれーーー四肢を失い、目を潰され、耳は千切れ飛び、心肺機能を含む内臓器官は重篤な損傷を受け、生きていることさえ奇跡である『生きた肉塊<ジョニィ>』

2014-09-14 10:12:01
ケモ耳ジト眼娘十四朗 @Jyuusirou

身体中に張り巡らされた生命維持装置の管がなければ数秒と持たないその体。時折もぞもぞと体を動かす姿は芋虫のようで、とても人間には、ましてや元駆逐艦娘には見えなかった。事前に手渡された資料の中では、彼女がこうなる前の、まだ可愛らしい少女だった頃の姿で微笑む写真があった。

2014-09-14 10:12:36
ケモ耳ジト眼娘十四朗 @Jyuusirou

「脳以外はほぼ全滅です。意識はありますが、その意識を外へ出力する手段と外の状況を感じ取る為の感覚器官を失いました。意識はあっても感覚はない。彼女はいま、無限に続く闇の中に覚醒した状態のままたった一人で過ごしているのです」 特に同情するわけでもない口調で医者が言った。

2014-09-14 10:12:46
ケモ耳ジト眼娘十四朗 @Jyuusirou

戦場で死に損ねた少女はこうしてベッドの上で生きている。生かされている。深い闇と孤独感に心を蝕まれながら、何故まだ死んでいないのか、あるいはこの闇が死というものなのかと自問自答しながら生かされている。

2014-09-14 10:12:56
ケモ耳ジト眼娘十四朗 @Jyuusirou

「決めるなら早い方がいいでしょう。あまり長く放置すると手術を行ったとしても精神に異常をきたす可能性がありますから」 「本人の同意が欲しい」 「どうやって同意を取り付けるんですか?喋ることも声を聞くこともできない状態ですよ。意思の確認なんて不可能です」

2014-09-14 10:13:06
ケモ耳ジト眼娘十四朗 @Jyuusirou

「艦娘ならば艤装接続用の人口神経が脊髄に埋め込まれているはずだ。そこに微弱な電気信号を流して直接語りかける」 「信号の感度はよろしくないと思いますが」 「生きたいか死にたいかを聞くだけでいい。死を願うならすぐに延命を中止しろ。この残酷な生を終わらせてやれ」

2014-09-14 10:13:19
ケモ耳ジト眼娘十四朗 @Jyuusirou

「だがもし生きたいと願うなら……海軍工廠<われわれ>が引き取る」 「ご自由にどうぞ。引き止めはしませんし、拒む理由も権利も私達にはありませんから。まぁ、興味はありますがね」

2014-09-14 10:13:36
ケモ耳ジト眼娘十四朗 @Jyuusirou

艤装の調整用ケーブルを少女の神経コネクターに接続し、もう一方を持ち込んだパソコンに繋ぐ。艤装モニター用アプリケーションを立ち上げて、モニター側からの信号としてメッセージを打ち込み、モールス信号の生文に変換して少女に送った。 「イキタイカ?」 ただ、それだけを聞いた。

2014-09-14 10:13:50
ケモ耳ジト眼娘十四朗 @Jyuusirou

救う、などとは言わなかった。助けるなどとは言えなかった。自分のしていることを人助けだと思っていない。むしろその逆で、俺はこの少女から、かろうじて人間としての命を保っている少女から最後の人間性を取り上げようとしている。

2014-09-14 10:14:01
ケモ耳ジト眼娘十四朗 @Jyuusirou

リスクを説明せず、ただ生きたいのか死にたいのかだけを問う。望んだ生の先に何があるのかを語らず、あたかも差し伸べた手が救いであるかのように振る舞う。

2014-09-14 10:14:10
ケモ耳ジト眼娘十四朗 @Jyuusirou

しばしの時をおいて、少女はゆっくりと顔を縦に振った。小さく、弱々しく振った。体が小刻みに震えている。涙を流す器官は潰れているから涙が零れることはない。しかし、この時少女は確かに泣いていた。 無限に続くと思った闇の中に現れた一筋の光に縋り付いた。孤独に壊れかけた心が蘇る。

2014-09-14 10:14:27
ケモ耳ジト眼娘十四朗 @Jyuusirou

やめてくれ。頼むから、そんな風に感謝をしないでくれ。むしろ恨んでくれて構わない。蔑み、誹りを投げつけてくれても構わない。俺はこれからまだ人間である君を人間でもない、艦娘でもない存在に変えるのだから 「決まりだな。この子を連れて行く。移送の準備をしろ」

2014-09-14 10:14:39
ケモ耳ジト眼娘十四朗 @Jyuusirou

思ったよりも冷静に振る舞えた。病室を後にし、廊下を通って外に出ると携帯を取り出して佐世保工廠<サセボ・ネイビーヤード>に連絡した。 「元駆逐艦娘の少女を被験者として確保した。急いでそちらに移送する、手術の用意を頼む。とにかく目と声だけでも彼女に与えてやれ」

2014-09-14 10:14:51
ケモ耳ジト眼娘十四朗 @Jyuusirou

目と声、なんて言ったが個人用の光学義眼と人工声帯は完全なオーダーメイドだ。今言って今出てくるはずもない。できることはせいぜいゴーグル型のカメラを視神経に繋いで視覚の代用にすることと、外付けのスピーカーを繋ぐ為のソケットを艤装コネクターに追加してやる程度だ。

2014-09-14 10:15:06
ケモ耳ジト眼娘十四朗 @Jyuusirou

「忙しくなる。まずは被験者の体を義体に移すところからだ。それが終わってから艤装との接続を行う。分かったらさっそくかかれ。ああ、それと……被験者の記憶はマスキングしろ。自分が何もない闇の中にほっぽり出されていた時の記憶なんて必要ないだろう。俺とのやり取りも消していい」

2014-09-14 10:15:21
ケモ耳ジト眼娘十四朗 @Jyuusirou

人と道具。人と機械。身体機能の延長、拡張に始まった人類の道具作成という行為は、道具との一体化という形で一つの果実を実らせた。対深海棲艦用の兵器である艤装と、その艤装を身に纏う艦娘がそうだ。可能だから可能であるというトートロジーはいつだって人類を前に進めて来た。

2014-09-14 10:15:30
ケモ耳ジト眼娘十四朗 @Jyuusirou

そして今回も、可能だから可能であるという理由で一つの計画<プロジェクト>が始動する。 艤装と人間がどこまで一つになることができるのか、人はどこまで軍艦<ふね>に近づけるのか。その限界実験が始まる。

2014-09-14 10:15:37
ケモ耳ジト眼娘十四朗 @Jyuusirou

冷たく固い艤装は決して人間の側には擦り寄らない。ならば、人の方から艤装に近付く。生身を捨てて、人が機械に近付いてやればいい。単純だが、それはつまり誰かに真っ当な人間であることを辞めろと迫ることでもある。 実験の為に健常な人間の手足を切り落とすことは許されない。

2014-09-14 10:15:45
ケモ耳ジト眼娘十四朗 @Jyuusirou

だから彼女のような元艦娘が必要だった。奪うのではなく与えるのだと傲慢に言い張れる相手が実験には必要だった。 倫理が禁忌との間で擦り減っていく。 それでも歩くのを止めようとしないのは、結局のところ俺も見たいからなのだろう。 人と機械がどこまで一つになれるの、新たな生命体の誕生を。

2014-09-14 10:15:55
ケモ耳ジト眼娘十四朗 @Jyuusirou

戦う力と生きる為の機能を失った少女にもう一度体と力を与える。機械の体に冷たい艤装。握力はリンゴを砕くことなく握り潰し、艤装に搭載した主砲は主力戦車の装甲を容易く貫く。 『夕張』と呼ばれる実験用艤装、それが今後あの少女が名乗る名前だ。

2014-09-14 10:16:07
ケモ耳ジト眼娘十四朗 @Jyuusirou

艦隊これくしょん二次創作SS 『人機の器-超嘘予告編- 了』

2014-09-14 10:16:13
ケモ耳ジト眼娘十四朗 @Jyuusirou

なんか、思いついたんでたまには地獄じゃない艦これネタを呟いてみる試み

2014-09-14 10:17:03
歪菜 @ibituna

@Jyuusirou 希望に満ち溢れますね……

2014-09-14 10:17:44