アーバン・レジェンド・アブナイ #5

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヤマヒロが二人の間に割り込む!そして!「ザッケンナコラーッ!」ケリ・キックが狂人の顔面にめり込んだ!「グワーッ!」インガオホー!続けざま、ヤクザストレートを叩き込む!「スッゾコラーッ!」「オゴーッ!」シゲオは武器を取り落とし、失神!ヤマヒロもふらつき、その場に座り込んだ! 25

2014-09-20 00:41:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

警備マッポ軍団は痙攣する狂人を拘束し、ヤマヒロに手を差し伸べた。「ハァーッ……ハァーッ……ヤクザをナメんじゃねえ」ヤマヒロは手を払い、自力で立ち上がった。そして再び、兄弟の肩を叩いた。「話つけてやったぜ。困ったら、また俺を呼べ。後払いでいいぞ」「ハイ」イシカワは深く頷いた。 26

2014-09-20 00:50:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「カネは無いですが……」イシカワはその威厳に恐れ入り、思わず敬語になっていた。「なんでぇ……」ヤマヒロは意識が飛びそうな頭痛の中、しかめっ面で笑った。「本当にドネートかよ……」外では重金属酸性雨が弱まり、黒雲の隙間から覗くドクロめいた月が、ショッギョ・ムッジョと呟いていた。 27

2014-09-20 00:53:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャ……それは実在せぬフィクションの産物だ。ネットワークが地表を覆い尽くしたこの時代にニンジャが実在し、ジツを使い、スリケンを投げ、サイパー都市の路地裏を駆けているなどと考える者は、愚者のそしりを免れまい。だが……徐々にニンジャ憑依者の秘密は裏社会から滲み出しつつある。 29

2014-09-20 01:01:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

無論、それは未だ、裏社会の住人たちが囁く都市伝説のレベルに過ぎない。ニンジャの秘密を守り、非合法ビジネスを円滑に進めようとする者たちの手で、情報統制が敷かれているからだ。公権力か?否。ネオサイタマは、いや日本政府そのものは、暗黒メガコーポと邪悪なニンジャ組織の支配下にある。 30

2014-09-20 01:05:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その闇に挑まんと暗闘を続ける者もいる。暗黒非合法探偵イチロー・モリタ、ヤバイ級電脳犯罪者ナンシー、あるいは神々の使徒ヤクザ天狗などだ。……だがそれだけではない。彼ら裏社会の住人とは異なる手段で、そして極めて危険な橋を渡りながら、公僕の力でニンジャの闇に迫らんとする者もいた。 31

2014-09-20 01:13:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

一台のマッポビークルが、スガモ重犯罪刑務所の重点検問を通過し、監獄島への長い橋を渡った。一般の警備マッポたちには、その助手席に乗るコート姿の男が誰なのか、検討もつかない。ただ、示されたパスの通り、淡々と彼らを迎え入れる。不吉極まりない49の課番号をマーキングしたビークルを。 32

2014-09-20 01:18:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

薄暗い第七マッポ・バラック前。副所長が敬礼で彼を出迎えた。「……仰々しいのはやめてくれ」コートの男がビークルから降り、副所長とバラックに入る。「わしは引退した事になっとるからな」対酸性雨コートを脱ぎ、ボンボリ灯に照らされた男は、厳めしい眼帯の老人…ノボセ・ゲンソンであった。 33

2014-09-20 01:28:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「引退な……」副所長は小さく笑った。刑務所内で彼は、オハギ賄賂と賭けショーギで堕落した、世渡り巧みな古狸として認知されている。だがその真の姿は、警察機構の正義を信じる、時代遅れのシーラカンス化石めいた堅物であった。そしてやや種類は違うが、やはりノボセのように剛胆であった。 34

2014-09-20 01:36:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼らは殆ど言葉を交わさず、目で語り合い、N案件の物理ファイルが入った分厚い黒封筒を交換した。「……騒ぎが起こったと聞いたが」「失態だ。初めての事例でな。NRSによるN妄想者が暴行を。全てはファイルに。また、その被害者を1人、ウサギ棟にて保護する」「なるほど」ノボセが頷いた。 35

2014-09-20 01:41:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そのN妄想者が、敵の走狗である可能性は?」「調査中だが、極めて薄い」「僥倖。ここの秘密はまだ漏れておらんか。……だがいずれ、それも限界を迎える。Nデッカーを1人、常駐させるか?」ノボセが問う。副所長はしばし思案した。「……いや、まだいい。それがむしろ目を引く可能性もある」 36

2014-09-20 01:49:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「一理ある」ノボセは腰のカタナの柄に手を乗せた。「面目ない話ではあるが……外部の目だけでなく、NSPDすら、もはや全く信用ならん」「それは昔からだろう」副所長が笑った。「……そうだな」ノボセも苦笑する。「我々はずっと、勝ち目の無い戦いを続けているのかも知れんな」 37

2014-09-20 01:55:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「では引き続き、我々は“都市伝説”の情報収集に勤しむとするか……」副所長は封筒を血液とハンコの二重認証型アタッシェケースに仕舞った。「うむ」ノボセも同様のケースを閉じた。「「ドーモ」」二人は短く別れを告げる。ノボセ老はコートを纏い、ドアを開け、重金属酸性雨の中に踏み出した。 38

2014-09-20 02:01:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【アーバン・レジェンド・アブナイ】終

2014-09-20 02:02:24