何故、犯人は自殺しなければならなかったか -金田一耕助の時代と『けじめ』-

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二日市とふろう (旧名:北部九州在住) @hokubukyuushuu

自分メモ カドカワ祭りで『犬神家の一族』をやっていたので見ていたのだが、積年の疑問であった、「なんで犯人が自殺しないといけないのか?」についての答えがなんとなく分かったので、残しておく。ようするに、金田一 耕助の時代の事件は『解決』するものではなく『けじめ』をつけるものだったと。

2014-09-30 18:46:13
二日市とふろう (旧名:北部九州在住) @hokubukyuushuu

wikiにあった、初期金田一作品のコメント『戦前の因習にとらわれた封建的な動機による殺人を、戦後の民主的な精神によって断罪する』だが、その結果出た作品群はそりゃもうかくやといわんばかりの日本的封建制のストーリーだったが、それはその封建制に根本的理由がある。

2014-09-30 18:49:24
二日市とふろう (旧名:北部九州在住) @hokubukyuushuu

今の時代の我々には想像つかないだろうが、そもそも地方における人の移動というのは戦後に入ってすらかなり限られたものだった。その人の流れがトラブルを起こして殺人なんて激震に発展したのは、大戦期の動員と敗戦復員が絡むのだが、犬神家にもそれがちゃんと書かれている。

2014-09-30 18:51:58
二日市とふろう (旧名:北部九州在住) @hokubukyuushuu

で、生まれてから死ぬまでずっと近所付き合いをする事が当たり前だった田舎において、殺人なんてものを警察という『よそ者』が裁く事自体が忌避されていた。これは前呟いた武士あたりの話とも絡むが、地方の裁判権と警察権は長く長く、その地方に任されていたのだ。

2014-09-30 18:55:13
二日市とふろう (旧名:北部九州在住) @hokubukyuushuu

それを一方的に中央の権威が裁く。一揆が起こっても文句は言えません。まじで。で、それを中央から容赦なく押さえつけてなんとか中央の命令を聞かせるようにしたのが、徳川幕府であり、薩長なのだが、本気でそれが可能になったのは敗戦後(つまりGHQ)だったというこの救いの無さたるや。

2014-09-30 18:56:55
二日市とふろう (旧名:北部九州在住) @hokubukyuushuu

地方ローカルルールが中央統一ルールより上位に来る。これが金田一耕助が活躍した時代の前であり、敗戦によって逆転が発生したからこそ金田一耕助は活躍できたといえよう。だが、ローカルルールでうまくやっていた地方にとってそれが面白い訳がない。何しろ事件が解決してもご近所付き合いは続くのだ。

2014-09-30 19:00:57
二日市とふろう (旧名:北部九州在住) @hokubukyuushuu

だからこそ、金田一耕助の事件においては、『解決する』事より『けじめをつける』事が求められる。この場合のけじめは村八分を思い出せば分かるだろう。火事と葬式だ。つまり、金田一耕助をはじめとした『館もの』と呼ばれるジャンルで何で館が燃えるかもこの答え、その地域のケジメをつけたのだ。

2014-09-30 19:03:25
二日市とふろう (旧名:北部九州在住) @hokubukyuushuu

昔、『名探偵コナン』の話をしていて、「コナンには金田一耕助の事件を解決できない」と主張した友人がいたが、心の底から納得できた。「真実」なんぞ求めていないのだ。だから、自殺する『救済』が発生しないとその地域がしゃれでないぐらいガタガタになる。だからこそ、犯人は自殺するのだ。

2014-09-30 19:06:52
二日市とふろう (旧名:北部九州在住) @hokubukyuushuu

ここで、しゃれにならんのが、このローカルルールには封建制の代表たる『家』も含まれる。犬神家がまさにそうだが、あれは犯人が自殺したからこそ、犬神家は救済されたのである。『病院坂の首縊りの家』もこの家が絡み、それを理解しつくしていたからこそ金田一はアメリカに去ったのだろう。

2014-09-30 19:09:35
二日市とふろう (旧名:北部九州在住) @hokubukyuushuu

封建というか伝統というかローカルルールと言おうか、その脈々と受け継がれたものというのは簡単に剥がれるものではない。たとえば、犬神家をコナン方式(自殺なしで逮捕させる)で解決だと逆に自殺者が出る。今でも犯罪者の家族に厳しいのが日本社会。そういう『ケジメ』は今も脈々と生きているのだ。

2014-09-30 19:14:16
二日市とふろう (旧名:北部九州在住) @hokubukyuushuu

ああ。そうか。だからコナンは子供なんだ。あれ絶対に「何で自殺させなかった!」と周囲から怨嗟がくるぞ。「犯人を推理で追いつめて自殺させてしまう探偵は殺人者と変わらない」とか言っているが、これが理解できないよそ者で餓鬼だから言えるんだ。あの台詞にむかついた覚えがあるがやっとわかった。

2014-09-30 19:18:32
川本幸作 @kaspart_j

@hokubukyuushuu 「よし わかった!」死者に優しい文化の原点を無視するから、「あいつのとこは犯罪者の家族」なわけですな。「犯人の自殺によって許された遺族」とは、雲泥の差があると。

2014-09-30 19:25:54
二日市とふろう (旧名:北部九州在住) @hokubukyuushuu

@kaspart_j まだこれが家ルールならば、『勘当』みたいな形で裁けるけど、それは家長の特権で、家長が『家』ルールにおいての制裁殺人なんて日には、『地域』と『家』の二重ローカルルール縛りプレイが待っている。一家離散で土地から離れないとだめでしょ。まじで。

2014-09-30 19:30:36
ええな猫💉×5 @WATERMAN1996

@hokubukyuushuu @kaspart_j 封建主義に拠れば家長による制裁は絶対のはずなんですよ。現実においてはそうでなかったのですけど。金田一耕助の事件は、封建的価値観と現代的価値観の間による事件だと思います。

2014-09-30 20:35:30
ええな猫💉×5 @WATERMAN1996

@hokubukyuushuu @kaspart_j ローカルルール(家長が法、しきたり、権威)で押し込むこともできず、かと言ってグローバルルール(法律)に従うこともできない。ゆえに犯人は自殺するしかない。

2014-09-30 20:38:21
ええな猫💉×5 @WATERMAN1996

思えば、Leafのゲーム「痕」は、まさに封建主義的価値観を踏襲しているな。しきたりを犯した柳川を始末しようとするのは仮の家長である千鶴だが、彼女がそれを果たせず耕一がそれを成した時、耕一が家長となるわけだ。

2014-09-30 20:49:11