ロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリ10100245:メニイ・オア・ワン #7

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「うむ」「しかしニンジャスレイヤーは追跡を振り切り……その……このカスミガセキ・ジグラットにも一時肉薄……そののち、ハッカーのナンシー・リーと共謀し、ネオサイタマ各地に旗を掲げました」「旗?」「旗です、即ち……順序が逆になりますが、奴はマジェスティ=サンらを殺すたびに旗を」25

2014-10-09 00:10:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

伝令ニンジャは次第に早口になる。「その殺害をセクトに対して誇示する行動です。ですが、ここへ来て奴はネオサイタマ全域に突如として旗を……これにより我々の追跡網を撹乱……先程、ジャスティス=サンが殺害された事が確認され……」「数時間のうちにセクトの最高幹部の4人が死んだか」 26

2014-10-09 00:12:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

スクラピュラスエミッサリーはぎゅっと目を閉じた。「申し訳ありません!」「もう一度言う。お前が詫びる必要などない」アガメムノンはリラックスして言った。「私はシステムを構築した。幹部が欠けようとも揺らぐ事のない、強固なシステムを。死んだ者のかわりはモータルでも構わぬ程のな」27

2014-10-09 00:16:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「と……おっしゃいますと」「多少の脆弱性をあぶりだすには良い機会だ。私はこの日を、予め、そのように捉えていた」「と……ということは……この事態も想定のうち……計算のうちという事でございます……か」アガメムノンは目を閉じる。「当然だ」「なんという……なんという慧眼!」28

2014-10-09 00:19:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

スクラピュラスエミッサリーは思わず拳を握りしめた。そして唸った。「ニンジャスレイヤー何するものぞ!全てが想定内なり!」「とでも言うと思ったかッ!!!」アガメムノンが立ち上がった!「この愚か者!」「エッ、」「イヤーッ!」アガメムノンは右手を振る!デン・スリケン!「アバーッ!?」29

2014-10-09 00:21:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

スクラピュラスエミッサリーは青白い電光に撃たれ、大の字に吹き飛んだ。「アババババババババーッ!」フスマに叩きつけられるよりも早く、彼の身体は消し炭となり、崩壊し、過剰な熱と光にそれすらも呑まれ……フスマの微かな黒い染みと化した。ナムアミダブツ……! 30

2014-10-09 00:28:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

トコノマは青白い光で満たされた。その中心で、怒れる神めいたニンジャは上体を微かに反らし、後ろに逆立つ髪は光そのものと化して流れ、両掌は触れたものを瞬時に溶解させるほどの極めて恐るべき熱と光を帯び、足元のタタミを稲妻が這い回った。嵐の如き怒りは数秒間続いた。 31

2014-10-09 00:35:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「いかがされましたか!」室外から近づく守衛の声。アガメムノンはプラチナブロンドの髪を後ろへ撫で付け、襟を正してトコノマを後にした。「アイエ?」鉢合わせた守衛が悲鳴を上げかける。アガメムノンはその肩に触れた。「どうという事はない」「アイエエ……エ……」電気が守衛の身体を駆ける。32

2014-10-09 00:37:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「次の休憩時間は、トコノマを替えたい」彼はアルカイックな笑みを浮かべ、室内を横目で見た。焼け焦げたタタミや、壁や、天井を。「くつろぐには少し散らかっていたようだからな」「アッハイ」焦点の合わぬ目で、守衛は頷いた。「迅速に手配いたします。申し訳ありません!」「謝る必要はない」 33

2014-10-09 00:43:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アガメムノンは廊下を歩き出した。彼は平常心を取り戻した。スクラピュラスエミッサリーには、なんら落ち度は無い。ただ……間の悪い者というのは、居るものである。アガメムノンはほつれた前髪をもう一度撫で付けた。休憩時間が終わろうとしている。 34

2014-10-09 00:48:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼がラオモト・チバらに追加の指示を出す必要はない。否、出してはならない。これは試練である。彼はこの試練に耐えねばならない。なぜなら彼が単なる一個人の強大なニンジャとして振る舞えば、それは即ち、彼の築き上げた完璧なシステムの敗北、支配の敗北を意味するからである。 35

2014-10-09 00:52:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

世界に君臨すべき鷲の一族としての振る舞いが試されている。ニンジャスレイヤーが彼を試している。これほどの憤怒は彼自身も経験が無かった。ニンジャスレイヤーは必然的な絶対敵だ。これは真剣勝負だ。これまでも。これからも。彼の構築したシステムは完璧だ。この負荷テストに、彼は必ず勝つ。 36

2014-10-09 01:00:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オイ……坊主……」ゼエゼエと息を吐きながら、タフガイは言葉を搾り出した。やや離れた棚の陰で、スポイラーが身じろぎした。スポイラーの傍らで銃をリロードするのは、デッドエンドである。「タフガイが呼んでるぜ、オイ」「……少し生きてます」「まだまだ元気いっぱいだな?」「少しです」38

2014-10-09 01:09:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

戦闘は既に「をべなや」の店舗内に場を移していた。三人はここまででもクローンマッポの突入を数度のウェイブにわたって凌いでいた。棚には手付かずの廃商品が陳列されたままだったが、それらは戦闘の中で散乱し、そこかしこのクローンマッポの死体にかぶさっていた。 39

2014-10-09 01:13:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニンジャがオメェ謙虚な事ほざいてんじゃねェ」タフガイは咳き込んだ。「アアッ畜生!治るんだろうなァ、こいつは。サケもタバコも止めねえぞ」タフガイの胸の傷は決して軽くない。スポイラーは今も棚に寄りかかっている。マージナルから受けたダメージが重いのだ。「俺、とんだ足手まといです」40

2014-10-09 01:17:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「全くだ」デッドエンドはガムを噛みながら言った。「……そンでな、最後の足手まといの時間だ」「最後ッスか」「弾丸がもう無えンだよ」「おう。俺も無い」タフガイが言った。「ニンジャらしく、こッからは、カラテでいこうや」「ああ。カラテでな」デッドエンドは頷いた。「何人ヤれるか競争だ」41

2014-10-09 01:22:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「よォし」タフガイはその場で屈伸した。「クローン1匹1点。隊長格は?」「5点でいいだろ」「ニンジャは」「御免こうむる」「じゃあ30点にしとくか」「ああ」「オイ!テメェもやるんだぞ、スポイラー」「くッそ……」スポイラーは手をついて起き上がった。「やりゃあいいんでしょう」 42

2014-10-09 01:26:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドンケツは、一週間ずっと一位にビールを奢る」「俺がドンケツ確定じゃないですか。立つのもやっとですよ。最初に死にますよ」「そりゃしょうがねェ」「ジゴクにビールあンのか?」「知らねえよ」「まあいいか……」デッドエンドは拳を打ちつけた。「3,2,1!」三人は飛び出した。43

2014-10-09 01:28:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ウオーッ!」「アアア!」「ザッケンナコラー!」三人は怒り狂う獣と化し、「をべなや」正面口から外へ走り出た。殴って殺し、蹴って殺し、とにかく殺す!そして死ぬ為に!「アアアーッ!」スポイラーは二人を追い抜き、前へ出た。「アアアーッ!」「オイ!オイ待て」「アアアーッ!……え?」 44

2014-10-09 01:31:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

スポイラーも異変に気付き、立ち止まり、振り上げた腕をだらりと垂らした。「……え?」包囲網は忽然と消えていた。ビークルの1台、クローンマッポの1人も無い。「何だこりゃァ」タフガイが頭を掻いた。「……撤収……?」「イヤーッ!」「グワーッ!」デッドエンドはスポイラーを殴りつけた。45

2014-10-09 01:34:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アッホくせェ!」デッドエンドは倒れたスポイラーを蹴り転がした。「締まらねえなァ!」タフガイはぼやき、その場に両手足を投げ出して仰向けになった。「締まら……ねェ!」緊張の解けた彼はその場で腹筋を開始した。デッドエンドは舌打ちした。バラララ……上空にヘリのローター音。「ア?」 46

2014-10-09 01:38:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オイ……オイオイ……」腹筋しながら、タフガイは目を細めた。「爺さんじゃねえか?」「知らねえよ」デッドエンドはぼやいた。「貴様ら!」ヘリの側面から身を乗り出したのは、片腕にギブスをしたノボセ老である。「無事か!」「乗せてくれよ!」「調整はワシに任せておけ!」「乗せてくれよ!」47

2014-10-09 01:42:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「救急車は既に手配した!ルーキーをいたわってやれ!」ヘリは再び遠ざかってゆく。「乗せろ!そのタクシーに!」デッドエンドは叫んだ。太陽が昇ってゆく。だがこの晴れ間も、すぐに分厚い重金属雲が覆い隠してしまうことだろう。 48

2014-10-09 01:45:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【ロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリ:メニイ・オア・ワン】終わり

2014-10-09 01:46:01