シー・ワー・リビング・ゼア #3

グロ注意回。
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劉度 @arther456

◇◇◇◇◇◇◇ ←九十一式徹甲弾

2014-10-23 20:31:28
劉度 @arther456

【シー・ワー・リビング・ゼア】#3

2014-10-23 20:33:23
劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss を使用していただけると大変ありがたいです。宜しければ暫くの間、お付き合い下さいませ)

2014-10-23 20:35:24
劉度 @arther456

※注意※ 今回のエピソードでは、過激な暴力描写、不快感を思わせる描写が多数登場します。要するにグロ注意って奴です。エロ注意まではいきません。PG12ぐらいです。 23:00頃に投稿を終了する予定なので、苦手な方は特に対処をお願いします。

2014-10-23 20:36:09
劉度 @arther456

船とは高度な建築である。水の上に浮かぶための浮力を得て、横波を凌ぐ安定性を確保し、大海を走破する速力を持たせなければいけない。その一方で、人間が何十日も海の上で生きるための施設と物資を積むため、限られたスペースを最大限に生かす必要もある。 1

2014-10-23 20:37:47
劉度 @arther456

これが軍艦となると問題はより重大になる。まず、武器として砲や魚雷発射管を設置しなくてはならない。そして砲弾や魚雷を積み込むため、船内スペースは大幅に削り取られる。かといって装甲を薄くすることは絶対にできない。必然、軍艦の中というものは非常に狭くなった。 2

2014-10-23 20:41:10
劉度 @arther456

「だけどねえ……」提督のため息が、床にかかる。「狭すぎるでしょ、これ」白い第二種軍装を埃で汚しながら、提督は瓦礫の下を匍匐前進していた。艦橋へ登るために船内に入ったはいいものの、中は瓦礫と穴で作られた迷宮だった。お陰でこうして階段に向かって這い進んでいる。 3

2014-10-23 20:45:41
劉度 @arther456

この荒れ果てた船を進むうちに、提督の脳内にはある疑念が浮かんできていた。この世界は、本当に不知火の精神なのか?壊れかけていることが問題なのではない。気になるのは、色々なものが混じっているということだった。内装が違うだけではない、その空間の辿った時間が、歴史がまるで違う。 4

2014-10-23 20:48:56
劉度 @arther456

例えば、さっきの通路で見かけた銃。あの狙撃銃は近代、下手をすれば現代のものだ。しかし銃の隣にあったドレスは非常に古く、昭和どころが大正、明治あたりの時代のデザインだった。艦娘と艦霊の記憶にしては、時代もジャンルも幅が広すぎる。 5

2014-10-23 20:52:08
劉度 @arther456

それに、あの錆びた世界で会った怪物。『陸奥』の時も怪物はいたが、あれは現実にいた氷山空母姫とその随伴艦のイメージが反映されたものにすぎない。だが、ここの怪物は最初からここに住んでいる。不知火の心の反映なのか、それとも別の何かが混ざっているのか。 6

2014-10-23 20:55:27
劉度 @arther456

答えの出ない考えを巡らせているうちに、穴の出口が見えた。向こう側にはやはり階段がある。やっとこの狭い空間から抜け出せる、と安堵したのも束の間、足音が聞こえてきて提督は息を潜めた。引きずるような足音に混じって、ちりん、ちりん、と掠れた鈴の音が響く。 7

2014-10-23 20:58:07
劉度 @arther456

隠れた提督の前を、裸足の何かが歩いて行く。土気色の足は血塗れで、赤い足跡をペタペタと残す。それに引きずられる者が一人。来ている巫女服はどろどろに汚れ、神聖さなど微塵も無い。力なく引きずられる手首には、鈴が紐で縫い付けられている。前を通り過ぎる時、その少女の顔が見えた。 8

2014-10-23 21:01:34
劉度 @arther456

「――ッ!?」思わず提督は自分の顔に手を当てる。目も、鼻も、口もそこにある。なら、今そこを引きずられていった少女は。慌てて穴から這い出たが、既に人影は影形もなく消えていた。あの人影が向かった先の通路は、悪臭を放つゴミの山に塞がれていて、追えなかった。 9

2014-10-23 21:04:54
劉度 @arther456

舌打ちして、提督は階段を登る。追う必要はないと、自分に言い聞かせて。今は不知火を助け出すことが最優先だ。階段を登り切ると、今度は一直線の通路が延びていた。通路の向こう側は見えない。予想はしていたが、気の滅入るような広さだった。懐の銃の重みを確かめて、歩き出す。 10

2014-10-23 21:08:10
劉度 @arther456

細い通路の両側には、幾つもの扉が並んでいた。等間隔で延々と扉が並んでいる光景は、歩いても前に進めないような錯覚を起こさせる。念のため振り返る。階段はちゃんと遠くなっている。大丈夫だ。再び進もうとした時、ふと扉の窓が目に入った。血塗れの少女の顔が、べったりと張り付いていた。 11

2014-10-23 21:11:43
劉度 @arther456

「ひいっ!?」単調な灰色の空間に、グロテスクが一点。腰を抜かすには十分だった。飛び退った提督が後ろのドアにぶつかると、ドアはあっさり開いてしまった。暗く冷たい床に倒れこむ。ぬちゃり、と生臭い液体が頬を舐めた。提督は顔をしかめる。 12

2014-10-23 21:14:55
劉度 @arther456

「あがっ、あ、あっ」暗がりの中に、後ろの窓と同じ顔があった。血の代わりに、目玉が零れ落ちそうなほどの苦悶の表情に染まっている。「あ、えう、う、ぶえっ、く」背中に突き刺された石の棒が動く度に、顔の筋肉がぐるぐる動いて、不細工な声とピンク色の匂いを一層吐き出す。 13

2014-10-23 21:18:24
劉度 @arther456

そして少女を苛んでいるのは、これもまた異様なヒトガタだった。枯れ木のようにやせ細った体を、無個性なシャツとエプロンのような一枚布で覆っている。その目と耳は黒い革で覆われ、更に口は縫い付けられていた。物も言えず、顔も分からないヒトガタは、自己主張するように足元の少女を抉る。 14

2014-10-23 21:21:41
劉度 @arther456

「う、うわあああっ!?」常軌を逸した光景から、提督は逃げた。部屋から飛び出し、ドアを閉め、ガクガク震える足でそこから離れる。それから思い出したように銃を取り出し、後ろに向けた。何も追ってこなかった。「はあ……はあ……っ」恐怖だけで、汗が吹き出してくる。 15

2014-10-23 21:24:50
劉度 @arther456

5分、それとも一時間だろうか。ようやく心臓の動悸が収まった。壁を支えによろよろと立ち上がり、提督は歩き出す。相変わらず風景は様変わりせず、通路の終わりも見えない。ただ、さっきと変わったことといえば、扉の向こうから音が漏れ聞こえるようになったことだろうか。 16

2014-10-23 21:28:14
劉度 @arther456

「いぎっ……あうっ!」皮膚が焼けただれる音。「あああっ!アアアアアッ!」脆い骨が砕かれる音。「ぎゃう、か、ひゅう……っ!」肺から呼吸が漏れる音。無限無数の音の間を、提督は下を向いて耳を押さえて歩く。それでも声は頭の中に響き、心を圧迫する。 17

2014-10-23 21:31:25
劉度 @arther456

それでも提督は歩き続けた。というよりもそれしかできなかった。前に進めば進むほど、後ろに下がる気が無くなる。今聞いた悲鳴を、二度と聞きたくない。そう思って前に進み、更に新しい悲鳴を聞く。蟻地獄、あるいは底なし沼。そうしてもがいた先に行き着いたのは、壁だった。 18

2014-10-23 21:34:42
劉度 @arther456

「……あ」憔悴しきった顔で、提督は汚れた壁に手を触れる。硬い感触は、そこが行き止まりだということを知らせていた。ここまで来たのは、無駄だったのか。せめてもの希望に縋るように、提督は右の扉を覗く。部屋の中央に、ぴくりとも動かない少女が横たわっている。 19

2014-10-23 21:38:04
劉度 @arther456

部屋の中に階段はない。諦めて今度は左の窓を覗くが、こちらも同じ。上り階段を探しに、戻らなければならない。頭まで悲鳴に浸かった通路を。憂鬱な気持ちで振り返った提督は、息を呑んだ。今歩いてきた廊下に、あのヒトガタがずらりと立ち並んでいた。 20

2014-10-23 21:41:18
劉度 @arther456

廊下にあった全てのドアが開いていた。彼ら、あるいは彼女らはそこから這い出してきたのだろうか。無数のドアから出てきた無数のヒトガタ。壁に押さえつけられるような圧迫感。そして顔を覆ったヒトガタたちは、ゆっくりと、提督に向かって歩いてくる。 21

2014-10-23 21:44:33