テンプト

へいへい。
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ダーク、サイレント、ナイフ、ブックス @tempt_Beta

小明は、古びたヨーヨーを2つ持っていた。戦闘の度に呼び出すことができる武器がなぜ劣化しているのか気になったし、何より彼女の武器は違う物だ。尋ねてみると、以前研究員に、大切な物だから預かって欲しいと頼まれたのだそうだ。小明には、その約束以上に思い入れがあるように見えるが。

2014-09-15 02:06:06
ダーク、サイレント、ナイフ、ブックス @tempt_Beta

最も古いドールの一体、プロトゼロは世界で一番幸せなドールを自称してはばからなかったそうだ。今はマスター共々行方不明となっているものの、トレードマークのマントをはためかせ暗躍しているであろうことは想像に難くない。彼女との対話が、小明との未来を作る為に必要な気がした。

2014-09-07 04:38:34
ダーク、サイレント、ナイフ、ブックス @tempt_Beta

陽光は彼女のてのひらの薄い部分を通過し、中を流れる赤いものを見せた。それが神に与えられた自然の体でないことは知っていても、私は、その"違い"について考えざるをえなかった。

2014-09-06 14:25:53
ダーク、サイレント、ナイフ、ブックス @tempt_Beta

どの遊具も満員で子供達がひしめき合い、もう秋だというのにこちらまで熱気が漂って来た。私達2人が座れるベンチが残っていたのは、ちょっとしたラッキーだ。隣を見ると小明が空に向かって手をかざしていた。

2014-09-02 14:42:02
ダーク、サイレント、ナイフ、ブックス @tempt_Beta

電車を乗り継ぎデパートへ買い物出かけた。休日だったので売り場はかなり混雑しており、小明とはぐれてしまうところだった。ちくわに肉に大根に...全てメモにチェックを入れた頃には、私だけ疲れ果ててしまっていた。休憩しようと小明を説得し、屋上の小遊園地にやって来た。

2014-09-02 14:27:58
ダーク、サイレント、ナイフ、ブックス @tempt_Beta

これは償いだ。小明を傷つけてしまった罪人にできる、唯一の償いだ。

2014-09-02 13:46:38
ダーク、サイレント、ナイフ、ブックス @tempt_Beta

お願い。私の名前を呼んで...アウェイキングと叫んで!

2014-09-02 13:42:34
ダーク、サイレント、ナイフ、ブックス @tempt_Beta

マスターは多くの場合、願いを望むだけでなく、求められることも望んでいるのだ。そしてドールはマスターに、資格とも言うべき振る舞いを求める。この合致は2つ目の、不可視の契約として私達を、私と彼を縛る。

2014-09-02 13:40:22
ダーク、サイレント、ナイフ、ブックス @tempt_Beta

だけれど、私の方でも彼の歩み寄りを受け入れつつある。全幅の信頼が、好意がこんなにも嬉しく感じるなんて、私の製作者は厄介なシステムを組み込んだものだ。このままでは、分かっていながら、共依存の関係に陥ることを止められない。甘い想いは止められない。

2014-09-01 15:00:43
ダーク、サイレント、ナイフ、ブックス @tempt_Beta

彼はずぶ濡れだった。心も体も。人間というものが信じられなくなって、自分自身も嫌っていた。だから、私に優しくしてくれるのだろう。その愛情は屈折したものだ。

2014-09-01 14:58:58
ダーク、サイレント、ナイフ、ブックス @tempt_Beta

かつて清正小町が引き起こしたソネット復活騒動において、その中心にあった一人のマスターの名前を、多くの私と同世代のドールは知っている。問題を抱えていようが人でなかろうが、それでも友達になることで困難を越えて行けるとする思想は、ある種の理想として伝え広められたからだ。

2014-08-31 02:20:17
ダーク、サイレント、ナイフ、ブックス @tempt_Beta

貴方は、私のマスターなのよ。願いを言うべきだわ。それを叶えることが、私の存在理由なのだから。私が生まれた、理由なのだから。

2014-08-31 00:11:15
ダーク、サイレント、ナイフ、ブックス @tempt_Beta

ドールの着替えはこちらの世界に来る前に完了し、しかもそれは一瞬である。このシステムがあって、本当に良かった。そうでなければ私は彼女の肌を見続け、悪魔にとりつかれた学者のごとく、魂を抜かれたようになるしかなかっただろう。

2014-08-30 14:34:24
ダーク、サイレント、ナイフ、ブックス @tempt_Beta

以前、どこの組織の細胞かは分からないが、何者かが私に接触しに来たことがあった。どこにでも居そうな普通の会社員といった出で立ちだったが、若くはなかった。彼は、かつて中間アウェイキング体に小明の名を持つドールが存在したと、それのみを告げて去っていったが今だにその意図は掴めない。

2014-08-27 01:17:57
ダーク、サイレント、ナイフ、ブックス @tempt_Beta

所有を前提としたドールに対して、所有者として振る舞うことを拒否すればそれは責任放棄となるだろう。しかし、完全アウェイキング体は、果たして所有されるべきものなのだろうか。どうしても、人に対してのそれのようにできないことはあるのだ。私は、考えねばならない。

2014-08-26 15:01:37
ダーク、サイレント、ナイフ、ブックス @tempt_Beta

冷気が染みわたる。私の体には、今やそれに抗う力は残っていない。されるがまま、なるがままに血は流れ、命は潰えゆく。誰もDIHを止めることは出来ない。あの日、この場所でこの国の未来は決まっていたのだ。しかし希望もある。国内のY-omeはもう殆ど残っていまいが、真がいる。彼ならば、

2014-08-26 14:26:23
ダーク、サイレント、ナイフ、ブックス @tempt_Beta

あそこから逃げ出した今、私には何もない。あるとすれば、あの忌まわしい日々の記憶と多少の金くらいのもので、他には何もない。小明しかない、などと言うつもりはない、彼女は独立した個体であって私の物では断じてない。しかし、これも、あるいは私のエゴなのかもしれない。

2014-08-25 05:00:17
ダーク、サイレント、ナイフ、ブックス @tempt_Beta

小明にクレープを買って来た。好みが分からなかったので、イメージでチョコレート味を選んだ。何でも2種類のチョコレートが生地に包まれており、その調和が売りらしい。喜んでもらえるだろうか。日が短くなり、夏の終わりを感じつつ帰路につく。

2014-08-24 01:58:05
ダーク、サイレント、ナイフ、ブックス @tempt_Beta

小明に買い物に行ってもらった。嘘だ。行かせたくなかった。心配だった。しかし、彼女はどうしても世の中を、この町を体験したがった。理想の女性は、そうである前に人間であり共同体の中での生活をすべきだというのは、私の意見とは正反対なのだが。

2014-08-21 03:06:29
ダーク、サイレント、ナイフ、ブックス @tempt_Beta

小明が眠っている。思えば、マニホールド空間を必ずしも必要としなくなった完全アウェイキング体の、家というものを確認したことがない。彼女が生まれたのは研究所であるから実家という例えは適切ではないが、近い印象を感じる。

2014-08-16 13:32:55
ダーク、サイレント、ナイフ、ブックス @tempt_Beta

手に入らぬのなら、求めようとも思わない。小明…

2014-08-12 05:11:30
ダーク、サイレント、ナイフ、ブックス @tempt_Beta

まじまじと私を見ながら息を吹いているので、匙で丼からすくった内のいくらかはそのまま器へと落ちてもどった。これに注意すべきかどうか、悩む私であった。

2014-08-11 00:30:58
ダーク、サイレント、ナイフ、ブックス @tempt_Beta

匙の上の粥を吹き冷ます音が、目の前から聞こえる。蝋燭の火が点くように私の意識がぼうと浮かび上がり、はて全くの暗闇だと首を傾げ、瞼が開いていないと気付く。精神を掻き乱し消し去らんとする温もりから逃げるように目を開くと、小明が私を見ていた。

2014-08-11 00:27:27
ダーク、サイレント、ナイフ、ブックス @tempt_Beta

残されたヨーヨーをただ握りしめ、声も無く泣く。流した涙の量は、彼女の帰りを約束しない。

2014-08-10 23:43:56
ダーク、サイレント、ナイフ、ブックス @tempt_Beta

ドールはマスターに何を求めるのだろう。未だ、共に過ごすことしかしていないが、これでよいのだろうか。共に在ってくれるお礼を何か形にするのが自然なのではないだろうか。

2014-08-04 23:17:44