ペイルホース死す! #3(実況なし)

ダイハードテイルズ出版局・本兌有によるツイッター連載小説"ペイルホース死す!"より @diehardtalesによる#3のまとめ(実況なし) #1 http://togetter.com/li/736827 #2 http://togetter.com/li/736834 #3 (今ここ) 続きを読む
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リンク ask.fm 「スチームパワード」や「ペイルホース死す!」は著者名が公開されていませんが、これらの作品はチーム内での共著なのでしょうか? スチームパワードは共著だ。「ペイルホース死す!」は本兌有だ。今後も、共著だったり単独作だったりするものがはっぴょうされるんだ。

(編集注:小説「ニンジャスレイヤー」のキャラクターであり、DHTLS出版局とも関わりのあるザ・ヴァーティゴが読者達の質問に答えるコーナーの一幕)
(本兌有は元々英語小説であるとされるニンジャスレイヤーの「翻訳チーム」代表として、杉ライカと共に名を連ねている)


ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

(あらすじ:「青ざめた馬」は、無慈悲なる頭目「キャプテン・デス」と、護送中の凶悪犯からなる奴隷船員によって構成される、悪名高き銀河攪乱集団である。)

2014-10-30 22:34:47
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

(彼らの船、その名もやはり「青ざめた馬」は、「双子王」が所有する穀物プランテーション惑星に無許可で侵入を果たした。大気圏突入を事前察知していた辺地防衛軍はこれを包囲したが、抗することかなわず。キャプテン・デスとその部下の奇怪な戦術の前に、なすすべもなく壊滅した)

2014-10-30 22:41:48
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

最初に彼女が認識したのは、頭上すぐのところにある天井の光だった。不思議な色彩の照明だが、あまり長く見ていると、おかしくなりそうだった。それから壁がわかった。彼女がいる場所はそう広くない。彼女は壁に触れた。壁の向こうで何かが動いている。人だ。この壁は磨ガラスのようなものだ。 1

2014-10-30 22:46:04
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

磨ガラスの外で、ぼやけた人影同士が、なにか言葉をかわしていた。おそらく彼女に関することだ。次に彼女が耳にしたのは、唸るような駆動音だ。彼女は壁に触れた手を動かし、さぐった。八方を壁に囲まれたこの空間が、当初考えていたよりもずっと狭いことに、すぐに気づいた。部屋?もっと狭い。 2

2014-10-30 22:50:00
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

それはまるで、ガラス瓶だ。彼女はガラス瓶の中にいる。頭上にはコルクのかわりに、嫌な照明がある。「助けて!」彼女は叫び、目の前の壁を……ガラスを叩いた。繰り返し拳を叩きつけた。ふいにそれが消失した。ガラスが開かれたのだ。彼女は悲鳴を上げ、外の空間にまろび出た。誰かが受け止めた。 3

2014-10-30 22:53:51
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

全身を防護服で覆った二人が、彼女を抑えつけた。指がグイと近づき、彼女の瞼を無理に開いて、光で照らした。もうひとつの手が伸びて、彼女の首に、冷たいなにかを嵌めた。金属製の首輪だ。「異常無し」彼女は防護服の男に引きずられた。首輪には鎖がついていた。それを引っ張られたのだ。4

2014-10-30 23:00:19
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

「ゲホッ、痛……」彼女は訴えようとする。防護服の者達はまるで無視だ。ああ。彼女は瞬きした。いつもと似た雰囲気が戻ってきた。これなら、理解できる。彼女はこれ以上無駄に苦しまぬよう、彼らに続いて歩き出した。だが彼らは数歩も歩かぬうちに、急に足を止めた。背中に鼻がぶつかった。「痛!」5

2014-10-30 23:03:37
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

立ち尽くした防護服の者達の肩越し、彼女は廊下の前方に現れた男を見た。アルビノで、ひどく痩せており、彼女よりも小柄だ。防護服の者達は狼狽し、礼の動作を取ろうとしたようだったが、結局わからなかった。なぜなら、まず、鎖を牽いていた者の頭が爆発した。「愚か者」アルビノの男は呟いた。6

2014-10-30 23:07:31
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

「ア……申し訳!」二人目の防護服もやはり、言動を完遂できなかった。「ありませ!」頭が爆発した。今度は彼女も、一人目の時よりは、起こった出来事の詳細を理解できた。アルビノの男は右手を前に突き出していた。その手の腕輪が緑に光っていた。あの腕輪で……。 7

2014-10-30 23:10:57
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「どうか!どうかお気を確かに!」三人目……最後の一人が膝を床につき、額を擦りつけた。「ご覧のとおりこの女も無事に覚醒し、」「私は正気だ」アルビノの男は吐き捨てた。「私の所有物をさよう無作法に扱う、すなわち大逆である」「エッ!」かざした腕輪が強く光った。三人目の頭部も爆発した。8

2014-10-30 23:22:16
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

彼女は言葉を失い、ただ震えた。無機質な回廊の床に、壁に、吹き飛んだ肉と血が嫌な赤色を添えていた。アルビノの男は三つの首無し死体を忌々しげに見下ろし、舌打ちを一つ。己の耳朶の飾りに触れ、「片付けろ」と呟いた。おそらく通信の類だ。それから彼は両手をひろげ、笑った。「ようこそ!」9

2014-10-30 23:29:35
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

「ア……」「無理もない。嫌なものを見せてしまった。それに、ひどく汚してしまって。すまない……こいつらがあんまりクズだから」アルビノの男は顔をしかめ俯いたが、顔を上げると、再び満面の笑顔だ。「でも、すぐに綺麗にするよ!」彼は彼女の肩を掴んだ。「夢みたいな暮らしが待っているよ!」10

2014-10-30 23:34:14
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

アルビノの男は彼女の手を取り、率先して歩き出した。「あんまり待ちきれなくて、君の様子、直接見に来てしまったんだ。でも、本当によかった。まさか目覚めていただなんて。やはり私はいつも正しい。そうだろ?」歩きながら、彼は振り返った。「……そうだろ?」「はい」彼女は素早く頷いた。 11

2014-10-30 23:39:52
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

「なんて素晴らしいんだ……」アルビノの男は歓喜に打ち震え、さっきよりも早足に歩き出した。「すごくしっくり来る!運命だ。やはり君を連れてきた私は正しかったよ。アイツじゃない。私の選択だ。君は幸運を喜んだほうがいい。もし私じゃなくて奴がこうして来ていたら……わかるね?」「はい」 12

2014-10-30 23:45:08
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

「とにかく、これで1点先取というところだな……奴め……」彼はブツブツと呟いた。そして急に立ち止まった。「痛!」彼女は背中にぶつかった。アルビノの男はにこやかに振り返り、彼女をハグして、頭を撫で、彼女の髪に指を絡めた。そして囁いた。「私は”西の夕闇”だ。君の名は?」13

2014-10-30 23:54:23
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

「名前は……」彼女は言い淀んだ。名前は無い。<西の夕闇>は怪訝そうにした。その表情が曇り始める。彼女は<西の夕闇>から身を離し、答えた。「イルダです」「イルダ?風化した言語?」「わかりません」「そうか。まあ、いいさ。イルダ。君はとても幸運だ。私の妻になるのだからね」 14

2014-10-31 00:08:56
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

「名前は……」彼女は言い淀んだ。名前は無い。<西の夕闇>は怪訝そうにした。その表情が曇り始める。彼女は<西の夕闇>から身を離し、答えた。「イルダです」「イルダ?風化した言語?」「わかりません」「そうか。まあ、いいさ。イルダ。君はとても幸運だ。私の妻になるのだからね」 14

2014-10-31 00:08:56
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

「その……」彼女は勇気を振り絞った。「ここは何処ですか?私はどのくらい眠っていたのですか?」「質問?」アルビノの男は首を傾げた。「なぜ?」「貴方の事をもっと知りたいのです」<西の夕闇>は困惑したように首を振った。彼女は奥歯を噛み締めた。よくない刺激を与えただろうか。 15

2014-10-31 00:14:31
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