ペイルホース死す! #2(実況なし)

ダイハードテイルズ出版局・本兌有によるツイッター連載小説"ペイルホース死す!"より @diehardtalesによる#2のまとめ(実況なし) #1 http://togetter.com/li/736827 #2 (今ここ) #3 http://togetter.com/li/739026 続きを読む
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ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

**当アカウントはオンライン・パルプマガジン、ダイハードテイルズ diehardtales.tumblr.com の公式アカウントです。ダイハードテイルズにはニンジャスレイヤー翻訳チームも居る。オンラインパルプ小説のリアルタイム更新をするなど、様々な活動!嗚呼!**

2014-10-24 20:21:18
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

**当アカウントの活動頻度は不定期。現在「ペイルホース死す!」の連載が行われています。実況は #diehardtales 。凶悪宇宙犯罪者を率いる「キャプテン・デス」の恐るべき冒険を体験。ドネーションとか、なんかしたい等のれんらくは公式サイトで。さあ、前説は終わりだ、始まるぞ**

2014-10-24 20:27:25

ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

丘陵地帯には既に夜が訪れ、キャプテン・デスとその一行は、穀倉地帯を離れた針葉樹林の付近に寝床を拵えた。キャプテン・デスのテントは闇に溶ける。収納時は握り拳よりも小さいが、ひらけば十二分に快適なテントになる。テントの頂点部にはしもべの甲虫がとまり、寝ずの歩哨となる。他の者は外だ。1

2014-10-24 20:37:49
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

テントの中で、少年……キャプテン・デスは、味気ないが栄養バランスの取れた糧食を苦心して食べ終え、ごろりと横になった。風がテントを揺らすたび、外の光景が垣間見える。外の者たちが互いに言葉をかわすことはない。厳しく間隔を取り、寝ているか起きているかもわからぬ状態で、休んでいるのだ。2

2014-10-24 20:43:43
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

彼らが互いを信頼することは一切無い。寝首をかかれることを警戒しているのだ。少年も同様だった。彼の味方と言い切れるのは、あの甲虫めいた黒いドロイド……ピオという名の機械だけだ。テントの中には禍々しいコートが吊るされている。少年は目を逸らした。3

2014-10-24 20:51:03
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

ピオはキャプテン・デスに対しては絶対に忠実だ。ミキサーや湯沸かし器の類が悪意を持って持ち主を裏切ることがないのと同じように。ピオの持ち主はキャプテン・デスだ。だがそれは信頼とは異質のものである。少年は身じろぎする。テント内の気温、湿度は、常に最適だ。彼の人生の中で最も快適……。4

2014-10-24 20:58:15
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

少年はまどろみ始める。土の下が揺れ始める。錯覚だ。横になるとあの感覚が戻ってくる。幻だ。テントは快適。キャプテン・デスのテントは……「そうだろう」低い声。少年は息を呑んだ。吊るしたはずのコートが……いや、コートを着た不吉な男が少年を見下ろしている。長い白髪、光の無い黒い瞳。 5

2014-10-24 21:07:04
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

「してやったりだな、小僧」白髪の男は憎々しげに少年を見下ろした。「さぞかし嬉しかろうよ。思いがけぬ、降って湧いた幸運よな」少年は跳ね起き、後ずさる。「これは……そんなことは……」「卑しいクズめ!戦場荒らしのハゲタカにも劣る外道!」男は責めた。コートをひるがえす。血みどろの胸元。6

2014-10-24 21:10:13
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

「嫌だ!嫌だ!嫌だ!」少年は耳を塞ぎ、首を振った。自責の念、罪悪感、焦燥感、極度のストレスが生み出した幻だ。男の叱責の言葉は、少年が自ら作り出している幻に過ぎない。身体の下の振動と……運搬モジュールの感覚と同じだ。だが、「許さぬ」「許して」「ダメだ」「助けて」「呪われよ!」7

2014-10-24 21:13:34
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

「ねえさん!ねえさん!助けて!」少年は泣き叫んだ。白髪の男は笑い出した。ゾッとするような笑いだった。外ではテントの中から聴こえる叫びを聞きつけ、モヒカン男のギャスが片目を開いた。ギャスはテントの上のピオを見た。そして侮蔑に口の端を歪めた。「ガキが騒いでやがるか。ヒヒヒ」8

2014-10-24 21:19:39
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

「ゾクゾクしちゃう」ミメエが呟き、己の手首をいきなり切り落とした。切断された左手はクルクル回りながら宙を飛び、ギャスの眼前を脅かすように横切った後、掲げた切断面に再び戻った。「殺して犯すぞ淫売め」「できやしないよ」ミメエはバカにしたように答えた。二人は立ち上がり、得物を構えた。9

2014-10-24 21:30:06
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

彼らから離れた地点、切り株の上にうずくまるのはウンブダ。「即ち蘇生に要する祈祷香木の密度は当時非現実的なものと言う他なく、大いなる犠牲、しかれども、おお讃えたまえ讃えたまえ聖なるものなれば我々の……」針葉樹の枝に腕組みして立つのは竜人ザラカ。闇の中、定位置を往復するボゾ。10

2014-10-24 21:37:05
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

「私闘はキャプテン・デスにより制裁されます」睨み合うギャスとミメエに言い放ったのはピオだ。無感情であるが、有無を言わさぬ宣言である。「アー?」ギャスが首を曲げてピオを見る。「クソガキはあの調子だ」「ねえさん!ねえさん!助けて!」「夢か、クスリか、なんだか知らねえがよォ!」 11

2014-10-24 21:41:28
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

「入眠時幻覚です」「やりあっていいんじゃない?」ミメエが己の首に刃を当てた。ピオは否定した。「私が彼を覚醒させます」「じゃあテメエを今壊しちまえばよォ」ピオは高く飛び上がった。「必要とあらば瞬時に覚醒させます。そして直ちに制裁が」「……」ギャスは唾を吐き、ごろりと横になった。12

2014-10-24 21:45:21
ダイハードテイルズ広報局 @dhtls

延命された太陽の眩しい日差しの下、色とりどりの宝石めいたバルーンが引っ切り無しに宙に放たれ、空をゆく無数の飛行船は応えるように花びらを地上に降らせ続けている。ひび割れた地面にはそれでもヒースの類が根を下ろし、花々は風を受ける。この市場は金星の主要都市のどこからも距離がある。14

2014-10-24 21:54:28