木下闇

twitter上の創作企画「空想の街・灯りの樹の夜」参加作品のまとめです。
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1日目

空想の街公式アカウント @humptyhumtpy

おはようございます。ずいぶん冷える朝でしたね。雲とともに寒気が海のほうから流れてきました。午後は雨になりそうです。この雨は明日のお昼にはあがるようです。寒くなります。傘とマフラーや手袋などの防寒具をお持ちくださいね。それでは、いってらっしゃい。(情報窓口:佐々木類) #空想の街

2014-12-12 08:30:41
十浦 圭 @ueto_rika

「おーなめんと破壊事件?」午後からの雨の予報に、慌てて庭のオーナメントを回収しながら、悟は少年らしい声を訝しげに潜めた。「そう。なんでも店先の灯りの実だけ壊してくんだって」「そんなことしてなんの得になるの?」「さあねえ」おっとりと六尾が首を傾げる。 #空想の街 #木下闇 #孔雀荘

2014-12-12 09:22:55
十浦 圭 @ueto_rika

「でもみやこさんは気になるみたいよ」「女将が?」「そう言っていたもの」「じゃあ、もしかして」「もしかして?」「人間じゃなくて?」「ええ、そうなの」 #空想の街 #木下闇 #孔雀荘 「妖怪の、しわざかもしれないって」

2014-12-12 09:24:18
空想の街公式アカウント @humptyhumtpy

午後からの雨もあり、今日は一段と寒い一日になりました。風邪は引かれなかったでしょうか?この雨は明日のお昼頃まで続きます。雨に煙る中の灯りの樹も、ちょっと素敵かも。(情報窓口:堂坂みかこ) #空想の街

2014-12-12 17:00:52
十浦 圭 @ueto_rika

雨はさやさやと降っている。久遠は赤い傘をさして家を出た。雨は嫌いだ。ただでさえ言うことを聞かない髪が湿気を含みくるくると跳ね回る。ハーフアップにした毛先がうなじを撫でるのも不快で、けれどこの気分を浮上させたくて。雑貨店などを覗けば、少しは気も晴れるだろう。 #木下闇 #空想の街

2014-12-12 17:03:38
十浦 圭 @ueto_rika

冬の雨はしとしとと冷たく足を濡らす。軽く肩を震わせて、久遠はマフラーに深く顔を埋めた。道に接した店先を、のんびりと見やる。ずらりと並ぶ灯りの実。この店では糸で編んだものが主流のようだ。手芸が得意な友人をふと思い出して久遠は小さく笑った。アルの方が上手だ。 #空想の街 #木下闇

2014-12-12 17:37:44
十浦 圭 @ueto_rika

突然ふう、と久遠の脇を何かがすり抜けた。えっ…と思う間もなく、棚の上の灯りの実がぐらりと揺れる。ことん、こん、ばしゃり、と落ちたそれが雨水にじわじわと染まるのを久遠は驚いて見つめた。はっとして振り向いた視界の隅に、水色の小さな背中がよぎった。 #空想の街 #木下闇

2014-12-12 17:41:20
十浦 圭 @ueto_rika

「ちょっとアンタ、待ちなさ…!」「ちょっと」追おうと半身を返した久遠の肩を、ぐいと誰かの手が掴んだ。「えっ」「あんたが落としたんだろ。逃げようなんてちょっと卑怯なんじゃないのかい」腕組みをしてこちらを睨む店主を唖然として見返す。彼は何を言っているのか。 #空想の街 #木下闇

2014-12-12 17:43:31
十浦 圭 @ueto_rika

「見てなかったんですか。私じゃない、さっきの子ども…」ハッとして見た外には雨が降るのみだった。逃げられてしまった。眉を潜めて向き直った店主は憮然とした顔で久遠を見ている。「子どもってなんだ。俺はあんたの傍でこれが落ちるのを見たんだ。あんたが落としたんだろ」 #空想の街 #木下闇

2014-12-12 17:46:03
十浦 圭 @ueto_rika

「私じゃないって言ってるでしょう」「あんたの傍に子どもなんていなかった。言い訳は見苦しいぞ」「いましたよ、駆けていった水色の子」堂々巡りに苛立って、久遠が腕を組んだ瞬間に、店主の背後からふいに声がかけられた。「いましたよ、子ども。俺も見た」 #空想の街 #木下闇

2014-12-12 17:55:33
十浦 圭 @ueto_rika

声を上げたのは青年だった。どことなく気怠い雰囲気なのは視線のせいだろうか。小さく首を傾げるのに合わせて濃い紫紺の髪がさらりと揺れた。伏せた目が店主を見る。空気を持つ人だな、と久遠は思った。なんとなく、凡人という感じではない。 #空想の街 #木下闇

2014-12-12 17:58:45
十浦 圭 @ueto_rika

青年の一言で、確かに子どもが犯人だと判明してから、店主は手の平を返すように腰の低い態度になった。疑ってすまなかった、けれどレジからでは棚が影になって云々、続く謝罪と言い訳に居心地が悪くなって久遠は早々に退散した。店の軒先でふうと息を吐く。外は空気が冷たい。 #空想の街 #木下闇

2014-12-12 18:00:50
十浦 圭 @ueto_rika

ふと気が付くと、先程の青年が隣に並んで立っていた。「…ありがとうございました」そういえばまだお礼を言っていなかった。呟けば、少し意外そうな目が久遠を見下ろした。「大したことじゃない」小さく肩を竦めて青年は再び空へ視線を戻した。沈黙を分けて雨音が響く。 #空想の街 #木下闇

2014-12-12 18:03:13
十浦 圭 @ueto_rika

「…私、あの子供を探してみようと思います」ふと、胸中の言葉が滑り落ちた。世間話をしたい気分だったのかもしれない。冷たい冬の雨にすぐに出ていく気になれなかったからかもしれない。それとも少し落ち込んでいたせいだろうか。「あなたが見た子ってどんな外見でした?」 #空想の街 #木下闇

2014-12-12 18:05:44
十浦 圭 @ueto_rika

青年は今度こそ意外そうに久遠を見つめ返した。「わざわざ探すのかい。何故?」当然の疑問に肩を竦めて答える。「なんとなく。お節介な気分なのかも。捕まえて説教したいくらい」本音ではなけれど、そう遠くもない答え。行きずりの相手の方が素直になれるのかもしれない。 #空想の街 #木下闇

2014-12-12 18:11:06
十浦 圭 @ueto_rika

久遠の答えに青年はふと考えるように視線を落とした。「…それなら、手伝ってもらおうか」「え?」きょとん、とした久遠を蒼い瞳が見つめ返す。「…オーナメントを壊して回る子どもを探しているんだ」白い手がすっと差し出される。「手伝ってくれないか」 #空想の街 #木下闇

2014-12-12 18:13:35
十浦 圭 @ueto_rika

【設定】 北島久遠:癖毛の黒髪をハーフアップにしてる。19歳女子大生。やや勝気な性格だが根が真面目。セーターにジーンズがデフォです。 シズク:紫紺の髪と蒼い目のひょろっとした青年。孔雀荘の住人。怠そう。何を考えてるのかいまいち分からない。浴衣に羽織姿。 #空想の街 #木下闇

2014-12-12 18:18:09

2日目

空想の街公式アカウント @humptyhumtpy

おはようございます。静かな雨です。この雨は正午へかけて弱まり、夕方にはすっきりとした空になりそうです。本日は役所にてワークショップ、16時より広場でコンテストが開かれます。お帰りの際は傘のお忘れものにご注意ください。それでは、いってらっしゃい。(情報窓口:佐々木類) #空想の街

2014-12-13 08:30:40
十浦 圭 @ueto_rika

コートの裾にかからないように、久遠は大きく勢いをつけて水溜りを避けた。あいにくの雨だが、気分はそう悪くない。待ち合わせ場所に指定した時計塔のふもとに、昨日の青年、シズクの影が見える。本当に来たのか、という気持ちとやはり、という気持ちがよぎった。 #空想の街 #木下闇

2014-12-13 10:49:01
十浦 圭 @ueto_rika

あの後。灯りの実を壊す犯人を見つける、ということになって、二人は互いに自己紹介をした。孔雀荘という宿の住人だというシズクは、その間もずっと落ち着いた表情のままで、久遠はどこか彼に違和感を覚えたままだった。悪い人じゃないというのは、分かるのだけど。 #空想の街 #木下闇

2014-12-13 10:52:10
十浦 圭 @ueto_rika

手伝ってくれというシズクに頷いたのが何故なのか、自分でも自分の気持ちがよく掴めないでいる。逃げた子供に腹が立ったのか、予定のない休みを潰したかったのか、憂鬱な気分から逃げたかったのか。どれも当たっているような、的外れなような。 #空想の街 #木下闇

2014-12-13 10:53:41
十浦 圭 @ueto_rika

とにかく、と強く一歩を踏み出す。ぐずぐず立ち止まるのは好きではなかったし、柄でもなかった。手助けになるのなら、彼についていくのも悪くない。そう思ったのは自分なのだから。赤い傘を手の中でくるりと回して、久遠は立っているシズクにおはようございます、と声をかけた。 #空想の街 #木下闇

2014-12-13 10:55:20
十浦 圭 @ueto_rika

一店目。西区にほど近い中央区、アジア風のとでもいうのだろうか、木の茶色と極彩色の小物が調和をなす小物屋で、店主の女性はため息を吐いた。「本当に困ったんだから、いきなり一列分の灯りの実が落ちちゃってさあ。木製のは助かったけど、他は全滅。ぱあよ」 #空想の街 #木下闇

2014-12-13 12:49:10
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