ねっこをたべる ~ダイコン、カブ、ワサビ、ニンジン、ゴボウ、レンコン、ショウガ~
アブラナ科野菜をと思っていたが、根菜類はアブラナ科に限るとダイコンとカブだけになってしまうし(ワサビもあるが)、イモはイモ類で区分しないとジャガイモ、サツマイモ、サトイモを別々に取り上げることになる。そこで、根菜類は科にはこだわらないで解説することにしたが、お許しいただきたい。
2014-12-25 22:31:56根菜と言えばまずはダイコン。
ダイコンとカブの違いについて。
どちらも古い野菜のようですね。
最初に、ダイコンとカブの違いについて解説しておきたい。形態でいうと、丸いダイコンもあり、長いカブもあるので明確には区別できない。分類でいうと、ともにアブラナ科ではあるが、ダイコンはダイコン属、カブはアブラナ属である。染色体もダイコンがn=9、カブはn=10とカブが多い。
2014-12-25 22:32:20ダイコンがほぼ根のみが肥大するのに対し、カブは胚軸(茎)が肥大する。青首ダイコンの場合は青い部分が胚軸である。ダイコンの葉は切れ込みが深いが、カブは丸葉に近い。食品としてはカブは煮込みや漬物に使うと細胞壁が薄めのため柔らかくなりやすい。
2014-12-25 22:33:14また、カブにはペクチンが含まれており、ぬめりがあるが、ダイコンにはない。これらの特徴がカブと大根の食材としての違いになっているのだろう。それでは、まずダイコンの話から始めてみよう。
2014-12-25 22:33:40ダイコンの起源は諸説あり、今のところこれといった決定版はない(と思う)。中央アジアが起源の一つであることはほぼ間違いないと考えられているが、コーカサス南部からパレスチナにかけてが原産で、そこからヨーロッパや中国に広がっていったという説もある。
2014-12-25 22:33:58いずれにしても栽培の歴史は古く、紀元前からエジプトや古代ギリシャ、中国などで栽培されていた記録がある。わが国でも10世紀の古書「和名抄」にダイコンについての記載があり、「おほね」や「こほね」などが和名とされている。
2014-12-25 22:34:43日本各地に野生種のハマダイコンが自生しているが、高名な植物学者の牧野富太郎は「おほね」の起源とともに栽培種が野生化したものとして学名を命名している。ともあれ、ダイコンの野生種は交雑が容易で遺伝的多様性も大きく、生息域も広範なため、原種の起源をたどるのは難しいとされている。
2014-12-25 22:35:12わが国のダイコンは、世界的にもまれにみる大型で、特別な種のようにも思われるが、植物学的にはヨーロッパの栽培種と関連があることがわかっている。いつごろから国内で栽培が始まったかははっきりしないが、最も古い記録では日本書紀に「於朋禰(おほね)」の記載がある。
2014-12-25 22:35:49ダイコンの歴史が古いことはいわゆる「伝統野菜」として各地に地方品種が古くから残っていることからも推測できる。世界で最も長い「守口」、超大型の「桜島」、たくあん漬けに適した「練馬尻細」などその他多くの品種があり、多様な遺伝型が大陸から伝わってきたと考えられている。
2014-12-25 22:36:12カブの栽培種も、ダイコン同様遺伝的多様性が大きいうえに栽培種が自生化する例も多く、原種の追跡が難しいためいつ成立したかは明らかになっていない。研究者によってアジアやヨーロッパなど意見が分かれ、それぞれの地域で多元的に成立したとの説もある。
2014-12-25 22:37:02いずれにしても、ヨーロッパ系、アジア系がそれぞれ成立し、それらが独立に、また複雑に交雑して多様な品種が成立した。日本にはアジア、ヨーロッパ両系統と中間系統も存在し、また他国にはほとんど見られない赤かぶ系もあり、独特の品種群を形成している。
2014-12-25 22:37:201~2世紀のギリシャではすでに多くの品種が記録され、ギリシャの地名が品種名となったものもある(らしい)ことから栽培の歴史は古いことがわかる。栽培が容易なこと、栄養価などからも有用なことから、地中海沿岸からヨーロッパ各地に広がっていったものと思われる。
2014-12-25 22:38:01そしてカブ。
ネトッとするのはペクチンだったのね。
日本にカブが導入されたのがいつなのかははっきりしない。最も古い記録では日本書紀で栽培を推奨したという記述があり、その他古事記や万葉集、延喜式、和名抄にもカブを指し示す言葉が記載されている。
2014-12-25 22:38:22戦国時代末期には「カブラナ」の記述がみられる文献があり、カブとツケナの明確な区別がなかったか混同されていたのかもしれない。ともかく、カブは日本で多様な品種が発達したが、ヨーロッパ系品種がそのまま残っているようなものもみられることから、導入された経路も様々だったと思われる。
2014-12-25 22:38:49江戸時代に入ってカブは主要野菜となり、品種の分化もこのころから盛んになった。また栽培が容易で栄養価も高いことから救荒作物としてもよく利用された。東北地方の山間地では冬季の栄養源として重宝され、代用食としての食習慣が近年まで残されていたようである。
2014-12-25 22:39:06明治以降に新たに外国から導入された品種は特にないと考えられている。ちなみに日本にもカブの自生種は存在し、山形県の小国地方で「ヒッチカブ」と呼ばれるカブが広く自生している。
2014-12-25 22:39:31お、ここでワサビとは斬新な。
アブラナ科根菜類という括りで行くと、ワサビも取り上げる必要があるだろう。ワサビは日本原産であり、もともとは山野草を食用に使われていたものである。歴史は古く、奈良時代の文献にもその名前が見られ、鎌倉時代に禅宗の寺院で利用されたのが始まりといわれている。
2014-12-25 22:39:51栽培され始めたのは350年ほど前で、静岡県が発祥と考えられている。250年ほど前から伊豆湯ヶ島で栽培が本格化し、産地を形成した。その後は、生育特性が特殊で、清水が必要なことなどから山間地の斜面など限られた環境が確保できるところに産地ができていった。
2014-12-25 22:40:20西洋ワサビともいえるホースラディッシュ(ワサビダイコン)もアブラナ科であるが、日本のワサビとは別種である。直根に独特の香気と辛味があり、栽培が容易で生長も早いため粉ワサビの材料などに使われている。
2014-12-25 22:40:43明治時代に日本に導入され、北海道などで野生化している。最大の産地はアメリカのイリノイ州ということである。非常に生命力が強く、根の一部が残っていれば容易に芽を出し、生育する。家庭菜園でも簡単に作れるが、庭などに植えると野生化して困るかもしれない。
2014-12-25 22:41:24そして一本でも。