#東京定年 まとめ

蝉川夏哉さん(@osaka_seventeen)の嘘企画『東京定年』が形になる(かもしれない)過程をまとめてみました。  ↓↓↓ 実現しました ↓↓↓ 続きを読む
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蝉川夏哉 @osaka_seventeen

「救われたと思ってる会社は多いと思いますよ」運輸会社人事の渡辺は控えめに笑う。自動運転技術は進歩したが法令でドライバーは乗せなければならない。東京から地方に移った元ドライバーたちは今、車上の人だ。「給与も控えめで良いという人が多い」高齢者が今、日本の物流を支えている。 #東京定年

2015-01-05 01:33:24
蝉川夏哉 @osaka_seventeen

「美味しく召し上がれますように」笑顔と一緒に弁当を手渡す齋藤は大企業の女性執行役だった。呆けないために今も一日四時間、弁当屋で働く。「お寺巡りがね、夢だったんです」午前中で仕事は切り上げ、午後からは寺社仏閣めぐり。夢は奈良と京都の朱印帳完成だ。「人生、これからですね」 #東京定年

2015-01-05 01:43:15
蝉川夏哉 @osaka_seventeen

「暴対法と合わせ技で来られると、ね」広域指定暴力団の二次団体を束ねるAは溜息を吐く。新陳代謝の鈍った組織には高齢者も多く、構成員の多くは今では近県に散在している。「半グレやマフィアに良いようにやられてますから」かつては肩で風を切っていた歌舞伎町でも、Aの足取りは重い。 #東京定年

2015-01-05 01:49:46
蝉川夏哉 @osaka_seventeen

「利用者数は過去最高です。学芸員も増やせるかもしれない」大阪府南部の近つ飛鳥博物館は一時閉館も危ぶまれていたが、今では大河ドラマの影響もあって入場者数は過去最高を記録している。「生涯学習というのも、本当になるのかもしれません」地方の文教政策が、活力を取り戻しつつある。 #東京定年

2015-01-05 01:56:46
蝉川夏哉 @osaka_seventeen

「もう、帰れないんですか」成田で国際線を待つ小杉さと子の荷物には、位牌が入っている。国内に身寄りがないので、バーデンバーデンに住む娘夫婦を頼ることになった。「いつでも帰って来られるように、家は手入れして貰うようにしています」亡き夫との思い出の家を人に貸すつもりはない。 #東京定年

2015-01-05 02:06:19
蝉川夏哉 @osaka_seventeen

「夕方五時に”ふるさと”流すの、止めて貰えませんか」役所にそう連絡して来たのは高齢者共同生活施設の印南だ。介護施設に入るほどではないが独り暮らしの難しい高齢者を預かる。「帰ろうとするんですよ、東京に」彼らの忘れがたき故郷は長閑な田園ではなく、都会の雑踏だということか。 #東京定年

2015-01-05 10:17:31
蝉川夏哉 @osaka_seventeen

「もうジョギングするのが怖いです」傷害の被害届を出し終えた小橋は力なく項垂れる。親父狩りという言葉が地方では復活しつつある。「明治神宮の周りを走っている時は、こんなことはなかった」夜のコンビニで若者の喫煙を注意し、口論になった。高齢者と若者の不幸な邂逅は後を絶たない。 #東京定年

2015-01-05 10:25:01
蝉川夏哉 @osaka_seventeen

「喫茶、蕎麦、蕎麦、喫茶、古本屋、蕎麦……」駅前に新たに開店した店のリストだ。「夢追い人というんですか、皆さん熱心ですよ」不動産屋の神保はファイルを繰りながら感心する。退職金と貯金で一国一城の主を目指す人の数は多い。「ただ、この街に蕎麦屋は十軒も要らない気がしますね」 #東京定年

2015-01-05 10:40:44
蝉川夏哉 @osaka_seventeen

「講義によっては聴講生の方が多いですよ。それに熱心です」東洋史助教の藤宮はそう話す。「質問の内容も高度です。ゼミには参加できないが、突っ込んだ質問をしてくる」来春からは一般教養課程に聴講生をターゲットとした講座も開講するという。「大学にとってはありがたいパトロンです」 #東京定年

2015-01-05 10:44:49
蝉川夏哉 @osaka_seventeen

「”転進計画書”ね。シンブン屋が好きそうな名前じゃないですか。そんなあからさまな名前、付けるはずがない」財務省OBの曽呂利はシガーを揉み消す。「もっとも、それに類する試算はしていたと思いますよ。14年の末か15年の頭には、可否を判断できる材料は揃っていたと思いますね」 #東京定年

2015-01-05 10:53:22
蝉川夏哉 @osaka_seventeen

「都下の開業率は鰻登りですね。情報関連で言えば先進国の大都市圏でも1、2を争うんじゃないですか?」新興IT企業代表の茶村の口調に熱が入る。機会翻訳の進歩で英語と日本語は限りなくフラットになった。会計制度の変更もあり、恵比須に事務所を構えていてもNYと然して変わらない。 #東京定年

2015-01-05 10:59:22
蝉川夏哉 @osaka_seventeen

「この点について言えば、総務省の読みは外れたと思います」渋谷区役所の片岡が見せるデータは衝撃的だ。「地方は高齢者を受け入れれば人口が増えると思っていた。ところが若者がそれを上回る速さで上京している」都心の地価が下がり家賃も手頃になっているのだという。「嬉しい悲鳴です」 #東京定年

2015-01-05 11:02:56
糸畑要 @boreford

「池袋を埼玉に」豊島区は高齢者人口の流出によって急速に萎んだ。冗談から出た真が住民投票を求める運動へと発展しつつあった。その声に正面から対立したのは、労働移民開放によって流入した中華系新住民だった。池袋再開発を控えて東京に留まるため「全住民」による投票を訴えていた。 #東京定年

2015-01-05 23:17:53
蝉川夏哉 @osaka_seventeen

「ふるさと納税の一歩先ですね」属人自治体に関する法案を議員立法しようとする沖議員は当選二回。若手のホープだ。「土地によってではなく人が自治体を構成する。根室に住んでいても足立区民だと言えるわけです」マイナンバー導入は、個人と自治体の関わりさえも変容させようとしている。 #東京定年

2015-01-06 03:28:08
蝉川夏哉 @osaka_seventeen

泉佐野市の人口が急増している。「関空一本化工事に、高齢者の手は不可欠」そう言い切るのはある土木会社の社長だ。「三空港統合だのハブ空港化だの言いますが、作るのは労働者だ。人手がなければ始まらない」C滑走路が完成すれば横風でも離着陸ができるという。関西の玄関は再生するか。 #東京定年

2015-01-06 03:33:58
蝉川夏哉 @osaka_seventeen

「また酢醤油が入ってる」不思議そうな顔で肉まんを頬張る安岐美佐子は大手食品メーカーで商品開発をしていた。東京定年後の居住地に九州を選んだのは、東京から遠いという理由しかない。「しがらみからなるべく遠ざかりたかったんですね」食文化の違いなど、まだまだ面食らうことは多い。 #東京定年

2015-01-06 03:40:07
蝉川夏哉 @osaka_seventeen

「今年に入ってもう三人目です」出勤しなくなった職員は逃げるように転居していた。困憊する大林は高齢者福祉施設の所長だ。「今回自主退社した人は68歳。高齢者が後期高齢者を介護している」サポート外骨格があるとは言え老人に介護は重労働だ。「早晩、地方の介護は崩壊しますよ……」 #東京定年

2015-01-06 03:44:53
蝉川夏哉 @osaka_seventeen

「島暮らしを考えている後輩に電話で注意した。甘いものじゃない」電機メーカーを定年退職した鳥羽は一昨年、瀬戸内海の直島諸島へ転居した。東京定年のテストケースの一組だ。移住先は、猫好きの妻が決めたという。「何もかもが東京と違う。生活するということそれ自体が、驚きの連続だ」 #東京定年

2015-01-06 03:50:53
蝉川夏哉 @osaka_seventeen

「食事は納豆とキャベツとパスタ。大学生みたいな暮らしだ」そう言って笑う新島は、生活保護で暮らしている。「東京を出ても暮らしていけるだけの蓄えはあったはずだが……」体調を崩して入院すると、頼れる人がいない。娘夫婦は東京から離れることができない。「人生、誤算だらけですよ」 #東京定年

2015-01-06 03:54:42
蝉川夏哉 @osaka_seventeen

「法案が可決された時、国際社会には批難の声しかありませんでした。しかし現在では控えめな賛同の声すらあります」少子高齢化は先進国に共通の課題だ。東淀川大学の佐々は言う。「各国が非常に興味深い社会実験だと認識しています。中南海は既に実施を検討している、という話もあります」 #東京定年

2015-01-06 04:26:56
蝉川夏哉 @osaka_seventeen

「知ってますか? コンクリ製の排水溝の蓋って、砕くと手頃な石礫になるんです」学生運動時代の知識が半世紀経った今役立っていると話すのは反定協代々木派の長村田だ。「あの悪法は憲政史上の汚点です」選挙にも候補者を立てるが、闘争は続けるのだという。「帰りますよ、東京に。必ず」 #東京定年

2015-01-06 04:38:56
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