「完成度の高い憲法を押し付けられた」矛盾

改憲派と護憲派に別れて言い争う現状はなぜ生まれたのか?憲法を押し付けられた不幸と、完成度の高い憲法を持つ幸福とに引き裂かれる、その矛盾にあるのではないか。
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shinshinohara @ShinShinohara

内田樹「街場の戦争論」、半分読んだ。現憲法は改変されるか無効化されようとしているが、それはどう考えるとよいのか。ヒントがいくつも提示されていて刺激を受ける。

2015-01-18 22:48:53
shinshinohara @ShinShinohara

現憲法を素晴らしいという人と「みっともない」という人。なぜこんなにも意見が違うのだろう?それは「実に見事な憲法を押し付けられた」ということに尽きるのかもしれない。

2015-01-18 22:50:51
shinshinohara @ShinShinohara

日本は戦争に負け、先勝国アメリカに憲法を押し付けられた。これは事実。この屈辱的状況の中で制定された憲法など、その内容がどんなものであろうと許せない、という拒否反応が出るのは、誇りある人間ならやむを得ぬ心理だろう、という意見には理がある。

2015-01-18 22:54:58
shinshinohara @ShinShinohara

もしアメリカの押し付けた憲法が、もっと露骨に日本国民に屈辱的な内容であったなら、日本人はもっと分かりやすく拒否反応を示せたろう。「いつかこの屈辱を晴らす日を迎えるため、日本人はもっと分かりやすくアメリカに反感を持てたし、憲法を自主制定する」という目標を明確に持てただろう。

2015-01-18 22:59:13
shinshinohara @ShinShinohara

ところが与えられた憲法は非常に完成度が高かった。少なくとも西洋が血で血を洗う歴史を乗り越えてようやく得られた経験と知恵が、惜しみなく反映された内容であった。世界でこれほど人類の歴史を冷静客観に踏まえた憲法は見当たらないだろう。戦後日本人が魅了されたのも無理はない。

2015-01-18 23:03:34
shinshinohara @ShinShinohara

「どれだけ素晴らしい内容であろうと、屈辱的な形で押し付けられたものは断固廃棄すべきだ」という意地が湧くのも一理。「否定するにはあまりに惜しい、ケチをつけるにはあまりに完成度の高い内容」と守りたくなる気持ちが湧くのも分かる。矛盾した感情に引き裂かれているのが、戦後日本人の状態。

2015-01-18 23:07:45
shinshinohara @ShinShinohara

もしアメリカがもっと身勝手でひどい国であり、押し付けられた憲法ももっと露骨にアメリカの国益を前面に出した内容であったなら。自主憲法をいつか設定し、その折にはもっと素晴らしい内容の憲法にしよう、と考えることができたろう。だが、すでに現憲法の完成度が高いために、皮肉なことが起きる。

2015-01-18 23:11:21
shinshinohara @ShinShinohara

現憲法が制定された当時の状況が許せない人も、その内容が申し分ない、と考える人は憲法をいじることには反対することになる。このため、憲法をなんとしても変えたい、という意思を持ち続ける人は、「民主主義なんてくそ食らえ」という考えの持ち主に絞られて来てしまうのだ。

2015-01-18 23:15:51
shinshinohara @ShinShinohara

自民党の新憲法草案では、非常事態を宣言することで憲法を停止し、政府が何でも決定できる内容になっている。ナチスがワイマール憲法を停止し、独裁政治に移行したのと同じ狙いがある。結構露骨に狙いが書かれており、隠そうともしていない。麻生氏の「ナチスに見習う」そのものだ。

2015-01-18 23:20:10
shinshinohara @ShinShinohara

憲法を改正するにしても、独裁制を許さない内容のものだってよいはずである。なのに露骨に、国民から権利を剥奪し、支配者に全権が委譲される内容になっているのはなぜか?憲法を変えようと考える人は、現憲法の内容が嫌いな人、つまり民主主義が嫌いな人であるからだ。

2015-01-18 23:23:02
shinshinohara @ShinShinohara

今世紀に入ってから「トップダウン」をもてはやす論調が続いているのは、その下地作りと見てよい。愚かな民衆の意見など聞いていたら一向に方針が決まらない、それよりもトップに全権を委任し、全ての決定をトップにしてもらえば、即断即決で解決し、スピードの早い変化についていける、と。

2015-01-18 23:27:40
shinshinohara @ShinShinohara

トップダウンの事例としてアップルのスティーブ・ジョブズ氏や、韓国のサムスン電気などを挙げ、変化の早い電気業界で成功を納められるのは、トップダウンで仕事を進めているからだ、日本のようにボトムアップで決定する仕組みでは出遅れてしまうと。だが、この論は大きな勘違いがある。

2015-01-18 23:30:59
shinshinohara @ShinShinohara

ジョブズ氏もサムスンも、「ボトムアップ」であることを無視し、トップダウンであるというコジツケであることをまず考えなくてはならない。ジョブズ氏は部下の優れたアイディア、意見に耳を傾ける人であった。そうでなければ燕市の鏡面磨きの技術を見つけられるはずがない。

2015-01-18 23:34:41
shinshinohara @ShinShinohara

サムスンが世界中で成功したのは、部下の意見を聞くからだ。それぞれの国に在住した部下が「こういう商品作りをすれば成功します」という報告を上げる。トップはそれを承認し、ゴーサインを出すだけ。ボトムアップだからこそ現場に即応した変化ができ、しかも成功をおさめることができた。

2015-01-18 23:38:21
shinshinohara @ShinShinohara

むしろ日本企業はトップダウンを採用することで決定が恐ろしく遅れるようになった。トップに責任が集中した結果、決断を下せばすべて自分の責任になってしまうとトップが恐れるようになり、慎重居士になってしまった。

2015-01-18 23:41:51
shinshinohara @ShinShinohara

あとで責任逃れができるよう、言い訳が可能になるよう、「その決定を下したのは、あらゆる情報を集めた上でやむを得ずそうしたのだ」と言えるようにしたい。このため、決定を下すまでに部下にありとあらゆる情報を集めさせ、十分な証拠を揃えてから決定を下そうとする。このため決定が遅くなるのだ。

2015-01-18 23:45:02
shinshinohara @ShinShinohara

トップダウンだと皮肉なことに、部下の責任を問うようになる。「こうすべきだとお前は言うが、それでうまくいく保証がどこにある?お前が責任を取れるのか?」決定を下した責任を部下に擦り付けようとする。このためトップダウンは「無難な決定」に落ち着きやすい。

2015-01-18 23:48:14
shinshinohara @ShinShinohara

だが、ジョブズ氏やサムスンの場合は部下に意見を挙げさせる。どうすべきかという方針も出させる。トップはそれに承認を与えることが仕事。意見を採用された部下は士気を高め、「俺の案が採用された、何がなんでも成功させてやる」と燃える。だからスピードも早く、成功率も上がる。

2015-01-18 23:51:24
shinshinohara @ShinShinohara

しかしトップダウンは部下の意見を聞かないから部下の士気は下がる。指示待ち人間を増やし、言われたこと以上をやらなくなる。トップは自分の責任で失敗したのではないという言い訳探しに必死になる。こうして組織が硬直する。

2015-01-18 23:53:39
shinshinohara @ShinShinohara

日本企業はトップダウンの採用でひどい目にあい、海外企業はボトムアップでスピードを増し、ますます差が開いている。この実態を無視し、「トップダウンで決定のスピードを上げるべき」という頭の中でこねくり回したリクツが日本人を支配している。その象徴が政治に現れている。

2015-01-18 23:57:06
shinshinohara @ShinShinohara

自民党の新憲法草案は、国民から権利を剥奪しトップダウンの国(独裁政治)にすることを狙ったものだ。だが、そうすることで、かえって狙いは外れ、ますます国の決定は遅れ、迷走するようになるだろう。その実例はすでに戦中に見ることができる。

2015-01-19 00:00:49
shinshinohara @ShinShinohara

東条英機など、戦争遂行の勇ましい言動を行っていた人間たちがことごとく「私は戦争に反対だった。しかし空気がそれを言うのを許さなかった」と言い訳をした。トップダウンの社会を形成することに戦中の日本は成功したが、それによって実現したのは「無責任システム」であった。

2015-01-19 00:03:27
shinshinohara @ShinShinohara

戦艦大和のレーダーに油を差していた元少年兵の話を直接聞いたことがある。レーダーが敵機を認めて報告すると、その報告書に何人もの判子が押されないと応戦体制に移れず、決定が下された時には敵機が頭上を飛んでいた、という。これで勝てるはずがない、と。

2015-01-19 00:07:48
shinshinohara @ShinShinohara

トップダウンにすると、責任を取りたくないトップはなるべく部下の責任にしたくなる。だからたくさんの部下の判子を押させてから自分が最後に判子を押す形態にしたがる。判子の数だけ自分の責任が軽くなり、部下のせいにできるからだ。

2015-01-19 00:10:08
shinshinohara @ShinShinohara

ボトムアップの方がなぜ、トップの大胆な決断を促せるのだろうか?それは「部下に任せた」と言い訳ができるからだ。自分は承認を与えただけ、という形だと、中間管理職も自分の上司に「部下に任せた私の責任です」と、かえって言いやすくなる。ボトムアップの方が決断を早められる。

2015-01-19 00:13:52