トップダウンとボトムアップの超克

経営はトップダウンがよいのか、それともボトムアップがよいのか、意見が分かれる。しかし良い経営はこの二つが両方とも成立する。それがトップの「ファシリテータ」化、だ。
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shinshinohara @ShinShinohara

トップダウンかボトムアップか。経営手法でどちらがよいか意見が分かれる。曰く、トップダウンは愚かなトップが独走し道を誤りやすい。ボトムアップは、経営責任のない有象無象が好き勝手バラバラなことを言うようになり迷走しやすい。どちらがよいのだろうか?

2014-04-13 06:35:48
shinshinohara @ShinShinohara

トップダウンのメリットは経営判断の速さだ。正しい経営判断を一人で下せるならば、他社を出し抜ける。しかし十分な能力がトップにないのに速さだけモノマネすれば、すべての食材を焦がしたり落としたりする未熟な料理人のようになる。結末は悲惨なものになる。

2014-04-13 06:40:06
shinshinohara @ShinShinohara

ボトムアップのメリットは非常に多様な意見が各人にあることを利用し、経営者が思ってもみないような新しい視点の提供や現場の正確な状況把握が可能になることだ。しかし欠点は、誰かが取りまとめないと「言い合うだけ」に終わり、乱雑な意見のうちどれを採用すればよいのか分からなくなる。

2014-04-13 06:43:42
shinshinohara @ShinShinohara

私の考える最もうまくいく経営手法は、トップの「ファシリテータ」化だ。ファシリテータとは、みなが意見を言いやすくする空気を作るとともに、多様な意見を吸い上げながらそれを集約・整理し、議論を方向付けてさらに深化させる触媒のような役割を果たすことだ。トップがこうなら、きわめて強い。

2014-04-13 06:47:44
shinshinohara @ShinShinohara

ゴーン社長が日産の経営改革に取り組む際、最初に行ったことは社員の意見を徹底して聞くことだった。「日産をどうやって再生すべきか、その回答はすでに社員が持っていた」という。現場に何が起きているのか、経営側は何をすれば現場を活性化できるのか、ゴーンは全社員から「学んだ」のだ。

2014-04-13 06:51:23
shinshinohara @ShinShinohara

長崎大学は急ピッチで改革が進められている。これは、学長を筆頭に学部長たちがメンバーとなるワーキンググループが、反発している現場の意見を徴し、その意見も踏まえた建設的な方針をまとめるからだ。トップがみなから意見を聞こうとする姿勢があるとき、部下からの不平不満の声は小さくなる。

2014-04-13 06:56:15
shinshinohara @ShinShinohara

ゴーン社長も長崎大学の学長も「トップダウンの成功例」と評されるが、表現が誤っている。「トップがファシリテータ化した成功例」だ。トップが社員の誰からでも意見を聞こうとする姿勢を常に示し、実際に取り入れるとき、情報の風通しがよくなり、トップは誤った判断をしにくくなる。

2014-04-13 07:01:11
shinshinohara @ShinShinohara

トップが部下の意見も聞かずに突っ走るとき、「あの人には何をいってもダメだ」と社員は口を噤み、異なる視点の提供、現場の正確な情報を入れなくなる。正確な経営判断を下すための情報が乏しくなり、道を誤る。こうしたトップは「暗君」と呼ばれる。

2014-04-13 07:04:17
shinshinohara @ShinShinohara

「暗君」とは言い得て妙。情報に暗くて見えないからどちらに進めばよいのか分からない。部下も「よけいなことを言って罰せられてもつまらない」と黙るから、トップは暗がりの中で何の声もかけられず、手がかりを失ってさまよう。暗君は自ら周囲を暗くすることで自らの視界も暗くするのだ。

2014-04-13 07:09:03
shinshinohara @ShinShinohara

逆に「明君」は、自分とは異なる意見がないかと社員全員を見渡そうとする「明るさ」がある。その明るさがあるから社員は口を開くようになる。その意見が取り上げられる実感が湧くからさらに風通しのよい組織になる。明君は、みなの意見をよく聞き取り入れるから「明るく照らす」トップなのだ。

2014-04-13 07:13:46
shinshinohara @ShinShinohara

それでもなお「部下の意見を全部聞いていたら収集がつかなくなる」と渋るトップも多かろう。それは聞き方がまずいからだ。「あなたはどうして欲しい?」と聞けば、給料上げろ、休日増やせという「欲望」が前面に出てしまう。だが「あなたはどうすべきだと思う?」と聞くと、全然違ってくる。

2014-04-13 07:17:09
shinshinohara @ShinShinohara

「あなたはどうすべきだと思う?」と尋ねると、社員といえども経営者の視点に立つことになる。とりあえず出た意見に対しても否定せずに「なるほど」と前向きに引き取り、「ただその場合はこうした別の問題が出てくるように思うがそれはどうしたらよいか」と重ねて尋ねると、建設的意見を促せる。

2014-04-13 07:20:53
shinshinohara @ShinShinohara

トップが社員に「どうしたいか」と聞くなら、それは社員に媚びて人気取りをしようとしているに過ぎない。「どうすべきか」と尋ねるなら、それは社員にも経営に携わる責任感を植え付け、「会社のために俺も何かできることがあるかもしれない」と意識を変えさせる力となる。

2014-04-13 07:24:22
shinshinohara @ShinShinohara

トップのファシリテータ化、これこそがよきトップダウンとよきボトムアップの両方を実現する経営手法だ。ITの発達で、経営判断は膨大な情報の把握とスピードの両方を求められるようになった。たった一人ではカバーしきれない。トップがファシリテータ化することこそ、それを可能にするものだ。

2014-04-13 07:27:57