ア・クルエル・ナイト・ウィズ・レイジング・フォース・フロム・ソー・サイレント・フィアフル・レルム #5

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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【ア・クルエル・ナイト・ウィズ・レイジング・フォース・フロム・ソー・サイレント・フィアフル・レルム】 #5

2015-01-23 22:56:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(これまでのあらすじ:シルバーキーとドラゴン・ニンジャは、岡山県の山中に隠されたドラゴン・ドージョーからポータルを通過し、狭間の空間に浮遊するキョート城内に侵入した。城は現在、ダークニンジャの暗黒の軍勢の支配下にあり、メイルシュトロムという謎の反乱分子とのイクサが激化していた)

2015-01-23 22:57:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(肉体を持たぬシルバーキーはエンブレイスというザイバツ・ニンジャの今際の際に呼び寄せられ、その身体に縛られる形で再生した。だがその結果、ダークニンジャの暗黒の軍勢のもとを容易に抜け出せなくなった。スパイ疑惑すらもかけられている。彼自身、エンブレイスの有罪無罪の真実を知らない)

2015-01-23 23:00:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(一方、ドラゴン・ニンジャは城内のニンジャの追跡を逃れ、深部に潜伏。そこで道に迷ったザイバツ・ニンジャのドモボーイを見出し、行動をともにする事となった。彼らのもとに迫るのはメイルシュトロムの邪悪なニンジャ軍団。安息の地はここにはないのだ)

2015-01-23 23:02:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(シルバーキーは自己の問題解決の為、このドラゴン・ニンジャと一刻も早く合流しなければならない。しかし状況はといえば、抜け出せないままに斥候部隊に参加させられてしまっていた。最終的に彼はどうしたか。……崖から飛んだのだ。)

2015-01-23 23:05:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「な……」スパルトイが崖のふちへ駆け寄り、エンブレイスが落下した闇に屈み込んだ。「なにやってやがンだ?」顔を上げてディミヌエンドを見た。「オイ!どうなってやがる、あいつ……マジでイカレたかよ」ディミヌエンドは否定できなかった。「死にかけてから、ずっとおかしかった」1

2015-01-23 23:09:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「間者だッて事がいよいよ確定するのを恐れて、自害の機会を伺ってたかよ」スパルトイは低く言った。「テメェの責任だぜ、ディム」ディミヌエンドはスパルトイに何か言おうとしたが、とりやめた。「後にしよう」彼女は二刀を構え、向き直った。「しょうがねえ」スパルトイは同意。並び立った。 2

2015-01-23 23:13:53
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崖のふちは既に包囲されていた。ディミヌエンドはデジャヴめいた感覚をおぼえる。包囲敵の先頭に立つニンジャが代表的にオジキした。「ドーモ。ペイルシャークです」一秒後、影めいて付き従うゲニン達が一斉にオジキした。ドオオオン!包囲の後列で、邪悪なスモトリがイクサ太鼓を打ち鳴らした。3

2015-01-23 23:18:33
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0100111っておるのか」「俺にはわかるのだ!」「声が大きいぞ」「イサオシ?なんと耳あたりの良い言葉よ」「黙れ」「我らの……否!あの者のイクサの行き着く果て010110「喋りすぎだ。お前の寝言として流してやる」「なあ。俺は思うんだよ……奴は……きっと誰をも01010100 (5

2015-01-23 23:27:55
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シルバーキーが身を起こすと、身体に被さっていた細かな石くれが、パラパラと音を立てて床に散った。「へへへ……見ろよ」彼は怪我の無いことを確かめ、立ち上がった。「勝ったぜ。こんな風に命を賭けるのは最後にしてえが」落下の感覚はあまりに長く、闇の中に静止しているかのように錯覚もした。6

2015-01-23 23:33:58
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そのおぼつかなさを思い起こそうとするだけで、得体の知れぬ怖気に襲われた。それから不意に気がつき、鼻を拭った。血だ。嫌な痛みがニューロンを苛んでいる。夢を見た筈だ。それは会話だった。誰の会話だ?痛みが増した。彼は顔をしかめ、こめかみを押さえた。「……誰だ?」彼は気配に振り返った。7

2015-01-23 23:42:21
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薄ぼんやりと光る背中が遠ざかろうとする。「オイ……」シルバーキーは反射的に後を追った。一瞬、思い留まり、瓦礫の散らばる周囲を見渡したが、結局彼はその者に続いた。「待ってくれ。ここは……」だが、光る影はシルバーキーに気づいていないようだ。走り、立ち止まり、壁に手をやり、歩く。 8

2015-01-23 23:51:06
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やがて彼らはひび割れた壁を前にしていた。まるで気づかれる様子が無いので、今やシルバーキーはタタミ数枚程度しか距離を取っていなかった。その者は間違いなくニンジャだった。その背格好をよく確かめようと目を細めるが、落下中のまどろみが残っているのか、焦点がどうにも合わせづらい。9

2015-01-23 23:56:00
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その者は時折、頭上の闇を見上げた。不安げだった。彼もまたこの地点に迷い込んだのだろうか。崖から落下したのだろうか。あるいは、別のルートから辿り着いたのか。目の前で彼は何度も壁を行ったり来たりしていた。それはパントマイム・パフォーマンスじみてもいた。シルバーキーは見守った。10

2015-01-24 00:09:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

やがてその者の指先は、壁のひびの奥にある何かを捉えた。その者はびくりと身を震わせ、後ずさった。シルバーキーが怪訝に見守るうち、その者は逡巡したのちに、まっすぐ、壁に向かって歩き出したのだ。そして壁の中に消えた。「オイ!」シルバーキーは目を見開いた。「何だってんだ?」11

2015-01-24 00:12:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

オオオオ……頭上では唸る風の音が亡霊めいて、シルバーキーの心を乱した。彼は壁に近づいた。そして影が触れていた壁のひびに、自らも指を差し入れた。確かな感触があった。彼はそれを押し込んだ。ガゴン……「オッ」シルバーキーは後ずさる。まるでさっきの影と同じだ。苦笑しかかり、凍りつく。12

2015-01-24 00:16:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ひび割れのすぐ横の壁に長方形の切れ込みが生じ、シャッターじみて、上へせり上がっていった。隠された扉が開いたのだ……ちょうど、影が消えていったあたりの壁のところに。「つまりだ。つまりこれは……」シルバーキーはブツブツと呟きながら、秘密の戸口をくぐる。13

2015-01-24 00:19:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

壁の中は両手が広げられぬ程の狭い通路だった。やがてそれは急な階段に変わった。シルバーキーは両手を壁に当て、支えながら、階段を昇って行った。単調な道ゆきに、彼は先程の落下に似た感覚をおぼえ始める。やがて前方に踊り場が見えた。先程の光る影は踊り場にある戸口に消えた。「待ってくれ」14

2015-01-24 00:27:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シルバーキーは戸口の中へ進んだ。黒塗りの壁の廊下。ここは捻じれた空間だ。まるで彼がかつて生業としていた夢治療のようでもある。だがこれは似て非なるものだ。この地はローカルコトダマ空間ではない。キョート城、オヒガン……彼は追いついた。開け放たれたフスマの先に影は立っていた。15

2015-01-24 00:40:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そこは茶室程の大きさの部屋だった。その先はショウジ戸に隔てられている。光る影はそこで立ち尽くしている。水晶のショウジ戸を前に。「……」シルバーキーは横に並んだ。影を見た。やはりだ。キョート城へ潜り込んで以来、鏡越しに見る顔だ。彼は思わず呟く。「あんた、エンブレイス=サンだ」16

2015-01-24 00:45:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

エンブレイスの輪郭が歪み、消えた。シルバーキーは認識がぐらぐらと揺らぐ不気味さに、思わずよろめいた。離人症めいていた。彼が見、追ってきたのは、彼自身の記憶なのだ。否、彼自身?違う、彼、すなわちエンブレイス……記憶、「シルバーキー。シルバーキー。俺は……」彼はブツブツと呟いた。17

2015-01-24 00:49:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シルバーキーは鼻血を拭い、踏みとどまる。エンブレイスのビジョンは消えたが、この茶室は残った。水晶のショウジ戸も。ショウジ戸に隔てられた先には台座があった。その上に100101エンブレイスは手を当て、驚嘆に0100101シルバーキーはショウジ戸に手を当て、台座の上のものを見る。18

2015-01-24 00:53:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

台座の上に、変わらず、それはあった。手のひらほどのサイズの立方体は、台座から数インチ浮き上がった状態で静止していた。それが、エンブレイスが偶然に見出したもの……恐るべき密度をもって、この茶室を、踊り場を、階段を定義したもの……力あるジュエルの姿だった。 19

2015-01-24 00:58:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「グワーッ!」シルバーキーは強烈な動悸にうめき声をあげた。水晶のショウジ戸越しに、ジュエルがシルバーキーに向かってなんらかの呼びかけを行っているのだ。シルバーキーは心を閉ざそうとした。両目から血が流れ出した。彼の感応力に、このジュエルの力は、強すぎる!「グワーッ!」20

2015-01-24 01:01:48
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