#完全ノープラン艦これ与太話 【メリークリスマス・デビルダム】#5~#6
爆発寸前まで加熱していたブラックピーコックの憎悪が、憤怒が、引いていく。かわりに、氷のように冷たい悲痛が全身を切り裂いた。「ア、ア、」「ピーチャン……!早く……行け……!ニ、ゲロ……!」「キエーッ!」スウィートポイズンのヤリめいたサイドキックが、モルワイデを打つ。 #KZNPLN
2015-02-28 22:18:57「グワーーーッ!」モルワイデを吹き飛ばした伊良湖はがくがくと震え、口からオハギ塊を床に落とした。「……アー、フゥー……オハギ……オハギ切れちゃうよ……オハギィ……」伊良湖はぐらりと首をもたげ、床のオハギ塊を口だけで咀嚼する。 #KZNPLN
2015-02-28 22:21:08「ア、ア……アーーーッ!」ブラックピーコックは絶叫し、決別じみて床を蹴り、モルワイデの姿を視界から外した。そのまま、地上のBポイントへ続く階段を駆け上がる。崩落したダミー地上工場。潮風が頬を撫でる。海が近いのだろう。視界がまた開け、廃工場の先に檻が見えた。 #KZNPLN
2015-02-28 22:24:54檻に囚われた北方棲姫はひどく衰弱した様子で、弱々しくこちらを見た。「メル……メル……!」ブラックピーコックはうわ言のように呟き、フラフラと檻に吸い寄せられる。メルカトルは力を振り絞り、叫んだ。「……エ、レ……カエレッ!ダメ!カエレッ!」 #KZNPLN
2015-02-28 22:27:55聖夜の近付く雪の夜空に、閃光が走った。ブラックピーコックはばたりと倒れ込む。「ア……ピーチャン……アア……」ゴウゴウとエンジン音が轟き、奥に鎮座していたクロームシルバーの巨大艦艇輸送機が動き出した。「アー、全く。基地型の処理を駆逐艦に任せるなッての」 #KZNPLN
2015-02-28 22:31:35大型艦艇輸送機『小野妹子』はその腹に檻を呑み込み、VTOL上昇を開始する。神経毒を含むスタングレネードにより全身の自由を奪われ、だが意識はハッキリとしたまま、ブラックピーコックはそれを見ている事しかできなかった。もうじき、日付が変わる。今日はクリスマス・イヴ。 #KZNPLN
2015-02-28 22:34:32彼女の元へ、雪の積もる廃工場をひたひたと忍び寄るサンタクロースは、だがその袋に絶望と死を詰め込み、ホワイトクリスマスを血で染めるだろう。ブラックピーコックは食いしばる歯すら、叩きつける拳すらも動かす事は叶わない。小野妹子は空に溶け、あっという間に見えなくなった。 #KZNPLN
2015-02-28 22:36:53明滅する視界に艦影は最早なく、モルワイデは血の涙を流し、虚空を睨み続けた。わかっている。敵はニンジャだ。ブラックピーコックはきっと殺されるだろう。力を失い、だらしなく伸びた巨腕の鎖。この巨腕はもう、伊良湖を殺す事も、彼女を救う事もできぬ。それがただ、悔しかった。 #KZNPLN
2015-02-28 22:40:33ひたひたと、足音が聞こえる。嗚呼、やめろ、来るな。殺すならば、早く殺せ。聞きたくない。見たくない。愛する者を奪い去った悪魔の、足音が奏でる凱歌など、絶望を背負った凱旋など。呪われろ。聖なる夜に、ただ、モルワイデは運命を呪い続け、そして、 #KZNPLN
2015-02-28 22:43:24「ヘェーヘェーヘェー……やっと追いついた」動けぬブラックピーコックに、スウィートポイズンが歩み寄る。「よくも、オミナントに楯突いてくれたな。ヒヒヒ!あのガキはケムトレイル=サンあたりが好きにするだろう。ところで」スウィートポイズンは下卑た笑みを浮かべる。「お前だ」 #KZNPLN
2015-02-28 22:49:08「ウーッ!ウーッ!」ブラックピーコックはもがいた。だが、動かぬ。涙を流し、もがき、それでも動けぬ。「そうだなァー……美味しいモナカ、好きですか!?伊良湖、とーっても美味しいモナカ、あげちゃうよ!……よく見たら、上玉だ。ヒヒ、しっかり楽しもうかね」「ウーッ!」 #KZNPLN
2015-02-28 22:51:13CRAAASH!轟音を上げ、地下からの扉が階段ごと吹き飛んだ。「……あァー?誰だァ……」スウィートポイズンはぐらりと首をもたげ、振り返った。直後!「イヤーッ!」「グワーッ!」鎖に繋がれた巨腕がスウィートポイズンを掴み、振り上げた!「グワーッ!?何だ!?グワーッ!」 #KZNPLN
2015-02-28 22:53:03「キサマ、死に損ないめ……!」そう言うが早いか、スウィートポイズンは違和感に気付く。己を掴むは、巨腕ではない。……顎だ。巨大な顎が己を噛み、暴れ、そのまま壁に叩き付けた。「グワーッ!」大顎はギュルギュルと巻き取り機構に引かれ、元の位置に戻る。逆十字じみた黒翼に。 #KZNPLN
2015-02-28 22:55:28「モ、ル……?」ブラックピーコックは目を疑った。それは錯覚だった。ありえぬ事だ。目の前に立った重巡洋艦の姿が、彼女には一瞬、最愛の友の白く大きな影に見えたのだ。ありえぬ事だ。目の前の重巡洋艦は、底知れぬ憎悪で、赤黒く燃えているのだから。 #KZNPLN
2015-02-28 22:58:28「ドーモ、スウィートポイズン=サン。ブラックフェザーです。プレゼントのアンコは要らない。貴様の命を置いていけ」赤黒の重巡洋艦は低く、深く、無慈悲に宣告した。両翼の大顎が鈍く光った。敵を殺し、彼女を救う為に。 #KZNPLN
2015-02-28 23:01:41#完全ノープラン艦これ与太話 【イン・ザ・ファイナル・デイ・オブ・オミナント】12250017【メリークリスマス・デビルダム】#5終わり。#6に続く。 #KZNPLN
2015-02-28 23:02:29#完全ノープラン艦これ与太話 【イン・ザ・ファイナル・デイ・オブ・オミナント】12250017【メリークリスマス・デビルダム】#6 #KZNPLN
2015-03-02 20:59:36「ドーモ、スウィートポイズン=サン。ブラックフェザーです。プレゼントのアンコは要らない。貴様の命を置いていけ」重巡洋艦羽黒、ブラックフェザーは赤黒の炎で銀世界を焼き、決断的にオジギした。「ドーモォ……ブラックフェザー=サン。スウィートポイズンです」伊良湖も返す。 #KZNPLN
2015-03-02 21:03:49