忍殺二次創作【ジャスト・スナップショット・オブ・ゼム】その２

鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

（ディスコテーク＆ワイルドローズ）Act3 #4215tk

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酒は夜の訪れを早くする。ディスコテークは時々そう思う。ゲイバー「絵馴染」はチルアウトには最適な場所であった。客たちは奥ゆかしく適度なざわめきを保ち、他人に絡むような酔い方をする酔漢はいない。そして隣ではワイルドローズが酔い潰れている。1 #4215tk

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「あの……大丈夫ですか？」カウンターに突っ伏したワイルドローズに声をかけるのは、給仕の少女。マスターとの会話を聞くに、ヤモトという名のようだ。「お気遣いなく。いつものことです」ディスコテークはそう言って、手元のトビッコ・ギムレットを一息に呷った。2 #4215tk

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「程々にしときなさいよ、アータ」そう言ったのはカウンターの向こうに立つボンズヘアーの男。このバーのマスター、ザクロだ。「いくらサイバネでも、体に悪いわよ」「そうですね。実際気をつけます。水を」「アイ、アイ……ドーゾ」「ドーモ」3 #4215tk

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グラスを受け取ったディスコテークは、それをワイルドローズの前に置いた。「ローズ＝サン」「ウー」「水を置いておきます。適度に休んだら飲んでください」「ウー……」ワイルドローズが呻く。ディスコテークが溜息をつく。側で見ていたヤモトが、僅かに笑ったようだった。4 #4215tk

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「そっちの子、本当に大丈夫？」「いつものことです」ザクロの問いに、ディスコテークは素っ気なく答えた。実際、ワイルドローズはそこまで酒に強くない。自分から飲みに誘う癖に、いつも先に酔い潰れる。その方が騒がしくなくなるので、ディスコテークとしてはありがたいのだが。5 #4215tk

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「ならいいけど。……アタシもこの店開いて長いけど、ネコネコカワイイが店に来るとは思わなかったわ」「私は……」「わかってるわよ！本人さんじゃないんでしょ？言い方が合ってるか知らないけど」ザクロは肩を竦めた。「アータたちみたいなNERDZのお客が、ってことね」6 #4215tk

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「私を！」反射的に出かかった声を、ディスコテークは理性で押さえ込んだ。しかし、多少殺気が漏れてしまったらしい。ザクロが目を細め、ヤモトが僅かに身を引き、腰に下げた自衛用のカタナへと手をかける。ほんの一瞬だけ、バーの中のざわめきが止まったように思った。7 #4215tk

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ディスコテークは自省し、深く息をつく。ざわめきが戻って来る。「……私を、あの連中と一緒にしないでいただけますか？正直、不快です」「オーケイ。ごめんなさいね」手を軽く上げて見せたザクロが詫びを入れる。「アタシもあんまり詳しくないのよ。わざとじゃないわ」8 #4215tk

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「わかっています。……わかっています。水を」ザクロが黙ってグラスを差し出す。受け取ったディスコテークは、それを一息に呷った。「けど、それじゃあどうしてそんなサイバネを？アータ、男でしょ？」「……わかりますか」「伊達にニチョームに長くいないわ」ザクロが微笑んだ。9 #4215tk

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ディスコテークは少しだけ押し黙った。「……昔の話です。私はオムラ・メディテックに勤めるサラリマンでした」「アラ！カチグミじゃない」「そうだったのかもしれません。……ネコネコカワイイの誕生後、その管制チームの一員として、いくつかのライブに同行を」10 #4215tk

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ザクロは何も言わず、聞き入っている。ディスコテークは久しぶりに過去を思い出す。ネコネコカワイイのライブ。自らの仕事を誇らしく思っていたあの時代。「ですか、徐々に問題も出て来るようになってきました」「問題？」「NERDZです。彼らは熱狂の度合いが過ぎた」11 #4215tk

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ディスコテークの顔がしかめられる。「初めて彼らが暴動を起こし、ステージへと上がり込んできた時。我慢できなかった。彼女たちは俺たちの技術の結晶なんだ。それをむざむざと……！」荒くなりかけた口調に気づき、言葉を止める。「……結果は無残なものでした」12 #4215tk

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意図的にクールダウンした口調で、続ける。「私一人で止められる程、彼らは正常ではなかった。私は囲んで棒で叩かれ……ネコネコカワイイも破壊……暴れた連中の影響で、照明が」ディスコテークは溜息をつく。「囲んでいた暴徒もろとも、私の上に」13 #4215tk

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隣で聞いていたヤモトが、小さく息を呑む音が聞こえる。「……そのような状態になっても、私は生きていました。当然手術が行われました。しかし」ディスコテークはもはや誰も見ていない。俯きながら言葉を続ける。「身体の大部分をサイバネで置換する必要があった」14 #4215tk

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「そこで緊急処置として用いられたのが、ネコネコカワイイのスペアボディです」ディスコテークが顔を上げる。無表情な笑顔を湛えて。「実際、それが最適解でした。私は奇跡的に助かった。……ネコネコカワイイに、命を助けられたのです」15 #4215tk

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ディスコテークは肩を竦める。「その後、対NERDZの警備要員となる道もあったのですが、断りました。いかな相手とはいえ、ネコネコカワイイが暴力を振るうのはイメージ的に問題がありますので」「じゃあ、どうしたの？」「以前の業務を引き継ぎました」16 #4215tk

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「……しかしオムラは倒産。今はボランティアの広告塔です」「広告塔、ねえ」ザクロが腕組みをする。彼は目を細め、ディスコテークを見つめた。「昔、聞いたことがあんのよね。ネコネコカワイイに偽装したニンジャがいるって噂」ディスコテークはその視線を正面から受け止めた。17 #4215tk

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「私も」彼は言った。「ニチョームを根城にするニンジャの噂を聞いたことがあります」ディスコテークとザクロは静かに睨み合う。そしてほぼ同時にアイサツを交わした。「ドーモ、はじめまして。ディスコテークです」「ドーモ、ディスコテーク＝サン。ネザークイーンです」18 #4215tk

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ディスコテークは身を硬くするヤモトへと視線を走らせる。「そしてあなたもニンジャ。成る程」「ドーモ。ヤモト・コキです」ヤモトが小さくオジギする。ネザークイーンが酔い潰れたワイルドローズを見下ろす。「偶然とはいえ、ニンジャが来るとはね」 19 #4215tk

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「誤解なきよう言っておきますが、我々はプレイベートをここで訪れています」「わかってるわよ！ビジネスで来てたらこんな酔い方しないでしょ」ザクロが苦笑した。「それで？どうするの？まだ飲んでいく？」ディスコテークが肩の力を抜く。「いえ。ここでお暇します」20 #4215tk

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彼は奥ゆかしくお代の万札をザクロに手渡した。そして隣で突っ伏しているワイルドローズの元に屈み込み、彼女を背負う。ザクロが微笑んだ。「オタッシャデ。今後ともご贔屓にね」「ドーモ。オタッシャで」ディスコテークはアイサツを返し、「絵馴染」を後にした。21 #4215tk

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【 #4215tk 】

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（スタートアップ・カクレガ・ドージョー） #4215tk

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マウント・カクレガ。秘境、岡山県に存在する山の一つだ。普通の人間からすれば特筆すべきものは何もない。例え訪れる者があったとしても、恐るべきリアルニンジャの復活に気づくことはできぬだろう！その名はヴィルデフラウ。誰にも悟られず山野を駆けるオバケめいたニンジャだ。1 #4215tk