忍殺二次創作【ジャスト・スナップショット・オブ・ゼム】その２

鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

彼女が……然り、ヴィルデフラウは女だ……現代に復活し、目標に掲げたのはドージョーの復興である。偶然にも自らの住居にまで入り込んだニンジャ、トランスルーセントを第一の弟子としたヴィルデフラウは、岡山県の山々に潜むニンジャソウル憑依者に狙いを定めたのである。2 #4215tk

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結果は？……「イヤーッ！」「イヤーッ！」突如として巻き起こったカラテ・シャウトに、ヴィルデフラウはザゼンを中断する。新しく作った弟子たちの部屋からだ。そちらを見やると、奇怪な毛の塊が這い出てくる。「ドーモ、センセイ。オハヨゴザイマス」そしてアイサツ。3 #4215tk

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「オハヨ」ヴィルデフラウは優しくアイサツを返した。彼女にとって、弟子は子も同然だ。無論、この毛の塊めいたニンジャ、ケウケゲンも。「あの騒ぎはなんじゃ」「はぁ。マリントード＝サンの寝相が」「もういい、わかった」溜息混じりに彼女は立ち上がる。4 #4215tk

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「イヤーッ！」「イヤーッ！」カラテ・シャウトはまだ続く。「ソコマデ！」部屋を覗き込んだヴィルデフラウの一喝に、カラテ応酬を繰り広げていたらしい二人のニンジャの動きは止まる。「オ、オハヨゴザイマス。センセイ」先にアイサツしたのはトランスルーセントだ。5 #4215tk

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「オハヨ。また戯れあっておったか」「マリントード＝サンが悪いんです！」トランスルーセントは争っていたニンジャを指差す。その体は半透明であり、彫像めいた出で立ちだ。「ウェー……悪気はねえって言ってるだろうが」苦い声で反論したニンジャが、マリントード。6 #4215tk

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マリントードもまた一風変わったニンジャである。その肌は毒々しい紫。ぎょろついた目から覗く瞳孔は横に細長く変化している。弟子の中では一番大柄で、かつ豊満だ。ヴィルデフラウの弟子は、現在のところ全員が女である。「別に悪気があったわけじゃねえんだ。本当だよ」7 #4215tk

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両手を挙げてアピールするマリントードを、しかしトランスルーセントは睨みつける。「悪気があろうとなかろうと！お前にのしかかられたら実際死ぬ！」「死んでねえじゃねえか」「私だからだ！仮にケウケゲン＝サンだったらどうなってたことか」8 #4215tk

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実際、トランスルーセントの体は特殊だ。一言で言えばスライムめいており、衝撃を吸収する。だからこそ、マリントードに潰されても支障はない。「じゃあそれでいいだろ。迷惑かけたのは謝るよ」「よくない！また皮膚からドク・ジツを出されてはたまったものじゃないからな」9 #4215tk

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マリントードがバツの悪い表情を見せた。彼女は取り込んだ毒を放出するドク・ジツを得意とするニンジャだ。とはいえ、ここに来た当初はジツの制御が甘かった。無意識に毒を皮膚から放出していたのである。ヴィルデフラウの指導で、なんとか制御はできてきたのだが……10 #4215tk

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トランスルーセントは過去、それで痛い目にあった。彼女の体が毒を吸収しやすい性質を持つとわかったのはその時だ。以来、彼女はマリントードを目の敵にしている節がある。「そのくらいにせよ、トランスルーセント＝サン」「しかし……」「鬱憤は組手の時に晴らすが良い」11 #4215tk

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有無を言わせぬヴィルデフラウの一言に、トランスルーセントが押し黙った。ヴィルデフラウはついでマリントードを見下ろす。彼女は小さく首を竦めていた。「オヌシの寝相も、そのうちどうにかせねばならんの」「……ハイ」「ま、よい。飯にするぞ」12 #4215tk

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二人を引き連れ、ヴィルデフラウは部屋を出る。そこではケウケゲンが己の体毛を操り急ごしらえの食卓に料理を並べているところだった。恐るべきニンジャ器用さ！ちなみに今日の献立は、バイオイノシシの肉や川で獲れたバイオアナゴのスシなどである。13 #4215tk

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「おう、ケウケゲン＝サン。任せてしもうてすまなんだの」ヴィルデフラウが乱暴にケウケゲンの頭を撫でる。ケウケゲンはくすぐったそうな声を漏らした。その一方！「イヤーッ！」ヴィルデフラウは左手を一閃させる！「アバッ」マリントードが不明瞭な声を上げた。14 #4215tk

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「マリントード＝サン。アイサツくらい待たんか」「アバッ」ヴィルデフラウが呆れたように左手に握ったものを見やる。マリントードの舌だ。彼女の舌はカエルめいて長く、やろうと思えばカラテにも活かせる瞬発力とリーチを持つ。が、今の所このような場所でしか活躍しない。15 #4215tk

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ヴィルデフラウが手を放してやると、マリントードの舌はバネ仕掛けめいてその口の中へと収まった。「アー……ひどい目に遭った」「懲りないお前が悪い」トランスルーセントが呆れたように言う。ケウケゲンが小さく笑う。ヴィルデフラウは弟子達を見て、満足げな笑みを浮かべた。16 #4215tk

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今は未熟。しかし、鍛えれてやれば伸びる面々だ。（今日も一通りカラテを教えた後で、また目ぼしい奴らを引っ張ってくるかの）先ほどのザゼン中、山々に感じたニンジャの気配をヴィルデフラウは思い出す。ともかく、ようやくドージョーと言えるものが立ち上げられそうだった。17 #4215tk

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【 #4215tk 】

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◇客電◇以上で本日の掌編は終了です。さて、ここまでのシカナの作品を見てくださった方には周知の事実かもしれないが、私は割とよく女ニンジャを出す。絶対数が少ないはずなのにこんなに出すのもどうかと思ったが、結局自分の好きなようにやるようにした。わかってほしい◇以上です◇ #4215tk

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（ヴィルデフラウ・スカウティング） #4215tk

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岡山県に広がる険しい山岳地帯。そこを一陣の風が……否、ニンジャが駆け抜けていく。褐色の肌に銀色の髪をした、十フィートはあろう長身の女だ。彼女の名はヴィルデフラウ。現代の世に蘇った恐るべきリアルニンジャである。彼女は今、新たな門下生を探していた。1 #4215tk

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山中に漂う僅かなソウル痕跡を頼りに、彼女はニンジャを探す。今回向かっているのは、高地にある何らかの石窟寺院都市だ。目視とソウル感知から、彼女はそこに複数のニンジャが潜伏していることを掴んでいた。ひとまず程度を見て、素養のあるものを引き抜く算段なのである。2 #4215tk

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ヴィルデフラウは不意に足を止めた。「アイエエエ……！」遠くから響いた微かな悲鳴を捉えたからだ。そちらへと向き直り、目を細め、感覚を研ぎ澄ませる。彼女はそちらに一人のニンジャの気配を感知した。にやりと笑みを浮かべた彼女は、風めいてそちらに急行する！3 #4215tk

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……「アイエエエ！」「ダマラッシェー！」悲鳴をあげる女巡礼者。それを米俵めいて肩に担いたニンジャ、オースタリティは一喝した。灰色のフード付きローブに身を包んだその姿は、どこか厭世めいたアトモスフィアを醸し出している。彼は舌打ちした。4 #4215tk

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オースタリティは石窟寺院都市を根城とするニンジャ修道会の一員だ。ニンジャソウルに憑依されたために犯した罪へ贖罪の祈りを捧げ、その衝動を抑えるための修行に励んでいる。そして時折このように……モータルを近辺から攫う。抑えきれぬ邪悪な衝動をぶつけるための奴隷として。5 #4215tk

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このような場所で煩わされている暇はない。オースタリティは先を急ごうとして……つんのめる。肩にかかっていた重みがなくなっていたからだ。彼はその時ようやく、自らの手から女巡礼者が消えていることに気づいた。「なに？」彼は慌ててカラテ警戒！6 #4215tk