茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第1483回『二百十日、びっくりするくらい凄い小説』

脳科学者・茂木健一郎さんの4月26日の連続ツイート。 本日は、昨日ちょっと感動したこと。
3
茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート第1483回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日は、昨日ちょっと感動したこと。

2015-04-26 07:21:34
茂木健一郎 @kenichiromogi

夏目漱石が好きで、『三四郎』や『坊っちゃん』、『吾輩は猫である』、『こころ』、『それから』などは旅先で読みたくなると買うので、文庫本がたくさんあった。たいていの作品を繰り返し読んでいるのだけれども、(『坑夫』みたいなやつも大好き。『趣味の遺伝』とか)きのうびっくりした。

2015-04-26 07:23:26
茂木健一郎 @kenichiromogi

久しぶりに『二百十日』を読みかえしたのだ。たまたま読んでいなかったというか、おそらく大学生以来くらい? それで、びっくりした。すげえへんな小説で、ポストモダンである。二人の青年が、阿蘇に登山して、ず〜っと会話している。小説ほとんどが、二人の会話。弥次喜多みたい。

2015-04-26 07:24:28
茂木健一郎 @kenichiromogi

その会話の内容が、「華族や金持ちはけしからん」とかずっと一人が言っていて、あげくの果て、「豆腐屋にする」とかよくわからないこと言って、阿蘇にどんどん登っていくんだけど、噴火がすごくて、地響きがして、灰が降っていて、おまけに風が強くなってきて、「これは、二百十日だ」と。

2015-04-26 07:25:44
茂木健一郎 @kenichiromogi

それで、最後は、ずーっと怪気炎を上げていた青年が、「やっぱり豆腐屋にしよう、君もいっしょにやろう」ってオテロの第二幕の幕切れのヤーゴみたいに呼びかけ、突然終わるという、全体としてよくわからない、しかし感動する小説。それが、『二百十日』。こういうヘンなの書いているから、漱石は偉い。

2015-04-26 07:27:50
茂木健一郎 @kenichiromogi

『二百十日』が書かれたのは、『坊っちゃん』と同じ1906年だっていうんだから、わけがわからない。『坊っちゃん』は普通の意味でよくできた小説だが、『二百十日』はおそらく永遠にポピュラーにならない、しかしベートーベンの後期ソナタのように高度な芸術性を持っている、そんな作品である。

2015-04-26 07:30:40
茂木健一郎 @kenichiromogi

『二百十日』の中に、「ゆでたまご」の「半熟」についてのどうしょーもないジョークが出てきて、そこのやりとりがほとんど奇跡なくらいくだらなくて凄いんだけど、そんな場面をほいほい書いてしまう漱石は、のっていた。おそらく、彼にとって小説を書くことが解放であり、救済であったからだろう。

2015-04-26 07:32:06
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート第1483回『二百十日、びっくりするくらい凄い小説』をテーマに、6つのツイートをお届けしました。

2015-04-26 07:33:29