やたらと真っ赤な<守護戦士> ~FoX Tailの昼下がり~

ログホラTRPGの世界観を舞台に、一緒に遊んだ人たちのPCを巻き込んで、自分のPCの一日を妄想してみたりとか。 今回はキャラを絞って短めに。
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Dateryu/伊達龍之介 @Dateryu

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2015-04-26 21:31:29
Dateryu/伊達龍之介 @Dateryu

"間違えるのは寂しかった大人だ" いつだったか、そんな言葉を聞いた覚えがある。 人は、時として過ちを犯す。 きっとそれはおそらく誰にでも例外なく起こりうることなんだろう。 そしてそれは俺も例外ではなく、俺の目の前にいる無愛想な盗剣士もそうだったりする訳で… <1>

2015-04-26 21:37:56
Dateryu/伊達龍之介 @Dateryu

「大将、コーヒー一杯で何時間粘る気だ。いい加減迷惑なんだが」 「腹が減って死にそうなんだ。そっとしておいてくれ、ウェイ」 目の前の盗剣士……ウェイが不機嫌さを隠そうともせず客である俺に退店を促す。 別にウェイって名前だからウェイターではない。一応コイツも俺のダチである。 <2>

2015-04-26 21:43:05
Dateryu/伊達龍之介 @Dateryu

この異世界に来て最初の夏も終わりに差し掛かったある日。 俺は戦友である葛ノ葉ねーさんの経営する喫茶店<Fox Tail>で何をする訳でもなくダラダラと過ごしていた。 で、あんまりにも居座りすぎたんでこうしてウェイターのウェイに睨まれている。 仕方ねーじゃん、金ねーんだし。 <3>

2015-04-26 21:52:10
Dateryu/伊達龍之介 @Dateryu

「腹減ったな……何か食わせてくれよ」 「日替わりパスタセットは金貨15枚だ」 「手持ちがねーんだ、ツケといてくれ」 「断る」 「けち」 「店長呼ぶぞ?」 「すみませんでした」 俺、再びテーブルに突っ伏す。 <4>

2015-04-26 22:01:28
Dateryu/伊達龍之介 @Dateryu

これは割りとどーでもいい話だが、実のところここ3日ばかし水とメニュー作成のメシしか口にしていない。 原因が主に某神社の暴食子狐であることは今更詳しく語る必要もないだろう。 まぁ、金が入るたびにパーっと使ってしまう自分の悪癖もあると言えばある、の、だが…! <5>

2015-04-26 22:08:36
Dateryu/伊達龍之介 @Dateryu

「黄昏れてるわねえ。これ、余り物だけど」 入れ替わりでやって来た葛ノ葉ねーさんが差し出したのは、オリーブとバジルの香り漂う夏野菜の冷製パスタが盛られた白い皿であった。 「恩に着るぜねーさん!いただきますっ!」 …ジト目でこっちを見てるウェイター君は気にしない方向で。 <6>

2015-04-26 22:15:24
Dateryu/伊達龍之介 @Dateryu

カランカラン。 もぐもぐとズッキーニの食感を楽しんでいると、来客を告げる入り口のベルが鳴る。 「失礼します、の」 「お」 「あら、いらっしゃい」 「げっ…い、いらっしゃいませ…」 目元が隠れるくらい長い前髪が特徴的なその少女の名はカペラ。 彼女もまた俺の知り合いだ。 <7>

2015-04-26 22:21:23
Dateryu/伊達龍之介 @Dateryu

「珍しいな。今日は一人かい」 「ええ。ご一緒よろしい、です?」 「おう」 いそいそと俺の向かいに座るカペラ。 なんというか、最初に会ったときよりずっと活き活きとしている。 こうして見ると実に普通の女の子である。 <8>

2015-04-26 22:27:38
Dateryu/伊達龍之介 @Dateryu

差し出されたお冷のグラスを両手で行儀よく飲むカペラの姿からは、孤独と妄執と泥に塗れ、世界に牙を剥こうとしたかつての姿は想像できなかった。 それに、よく見ると結構ムネも…… 「いつか刺されるわよ、伊達くん」 ……頼むから俺の心を読まないでください葛ノ葉ねーさん。 <8>

2015-04-26 22:41:02
Dateryu/伊達龍之介 @Dateryu

「……お待たせしました。牛肉とキノコのラグーソースパスタです」 「あ…ありがとうございます、ですの…」 カペラとウェイのギクシャクしたやり取り。 ……当初はガチの殺気向け合ってた者同士だしね、仕方ないといえば仕方ないのかもしれないが。 まぁ、これくらいが一番平和なのだろうか。

2015-04-26 22:47:48
Dateryu/伊達龍之介 @Dateryu

殺気といえば、最初に会った時のウェイも相当なものだった。 選択肢を奪われ、それでも愛した女性を取り戻すべく、自らの手を汚そうとした不器用な盗剣士。 レベル差こそあれ、あのウェイの剣の冴えは本物であった。 もしあの時無慈悲に斃していたら…きっとこうはならなかったろう。 <10>

2015-04-26 22:57:02
Dateryu/伊達龍之介 @Dateryu

「? どうしたんですの、伊達さん?」 「いきなりニヤけて気持ちが悪いぞ、大将」 「いんや、何でもねーよ」 二人がそうやって平和にしているのが嬉しくてたまらねーだけさ、とは流石に恥ずかしくて言えなかった訳で。 <11>

2015-04-26 23:01:51
Dateryu/伊達龍之介 @Dateryu

人は誰でも過ちを犯す。 だからこそ人には赦しが必要なのだ。 ウェイにも、カペラにも………そして俺にも。 ヴァイス……悪徳に堕ち、冒険者の不死性を棄てたあの死霊術師に見舞った最後の一撃の感触は、未だに俺の手に残っている。 <12>

2015-04-26 23:08:14
Dateryu/伊達龍之介 @Dateryu

自分で自分を赦すのは難しいことだ。 事実、俺の過ちは俺の手の中にしかと刻まれているし。 だからせめて、俺は過ちを犯した誰かを赦してやりたい。 それで自分が赦されるとは思っちゃいないけれど…… …ごめん、やっぱり俺も赦してもらいたいんだと思う。 <13>

2015-04-26 23:16:24
Dateryu/伊達龍之介 @Dateryu

それから俺はカペラと、時々ウェイを冷やかしたり、葛ノ葉ねーさんを巻き込みながら、取り留めのない話をして一日を過ごした。 そんな、何気ない昼下がりの1ページが、少しだけ救いになった気がする。 <了>

2015-04-26 23:26:03