自閉症のあるお子さんの集団参加を促すアナログゲーム

自閉症があり一人遊びが中心のお子さんに、障害特徴である視覚優位の特性を生かしつつ集団参加を促せるようなアナログゲームを三種類、指導の実例とともにご紹介します。ブログ:http://ameblo.jp/houkagotouday/
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松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

先日ご紹介した「知的・発達障害のあるお子さんに「カタン」で療育したケース」togetter.com/li/815740 が好評を博したが、これは教室に備え付けてある50種類以上あるアナログゲームを通じて生まれたエピソードのほんの一部でしかない。

2015-05-05 20:52:02
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

「カタン」は子ども向けゲームとしてはルールが複雑な部類に入る。それゆえ、対象は小学校高学年以上だった。今回は、精神年齢としては3~4歳にあたる知的障害を伴う自閉症のお子さんを対象としたアナログゲーム療育を紹介したい。

2015-05-05 20:58:19
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

この発達段階の自閉症のあるお子さんのコミュニケーション面を概観すると、基本的な受け答えや簡単な要求などが可能であるが、感情表出が薄く、局限された興味の対象に固執する傾向がある。

2015-05-05 21:01:51
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

局限された興味の対象は、主として積み木・お絵かき・パズル、Youtubeの動画鑑賞など、視覚的刺激を与えるものが中心である。背景には自閉症の特性として、言語による理解よりも色や形といった視覚での理解が強いことがある。

2015-05-05 21:07:19
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

自閉症のあるお子さんの視覚優位について、たとえば、言葉で「歯磨きをしよう」などと指示を出す代わりに、歯ブラシを描かれた絵カードを見せるほうが本人にとってわかりやすいことは、障害児療育に携わる人びとの間ではよく知られるところである

2015-05-05 21:09:25
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

他方で、こうした視覚認知の強さと自閉症の障害特性から、家で何時間もYoutubeばかりを見ていたり、他の子が輪になって遊ぶ中一人参加を拒否してお絵かきに固執することが多く、こうした様子を観て、集団に参加できない(しない)ことを心配する保護者様は多い。

2015-05-05 21:16:01
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

一人遊びの傾向について、本人の興味や自由は尊重されるべきなのは大前提である。が、将来の自立を目指した療育という観点からすれば、こうした子たちも先々周囲の関係性を保ちつつ学習・就労をしていくのであるから、各人のレベルで、集団参加をしてその中での振る舞い方を身につけてほしい。

2015-05-05 21:20:16
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

自閉症の特徴である色や形といった視覚刺激に対する興味の強さを生かしつつ彼らの集団参加を促すために、美しいコンポーネントで彩られたアナログゲームが大きな役割を果たす。その筆頭がドイツAMIGO社の「虹色のへび」だ。sgrk.blog53.fc2.com/?no=47 v

2015-05-05 21:28:39
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

カードはヘビの頭・胴体・しっぽの3種類で、美しい虹色のグラデーションになっている。プレイヤーは一人一人山札をめくっていき、場にあるヘビの胴体に繋がるよう絵合わせしていく。頭・胴体・しっぽが揃ったら、最後に揃えた人がそのヘビをまるごともらえる。一番多くのカードを集めた人が勝ち。

2015-05-05 21:32:58
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

引いたカードの内訳により一体のヘビが長かったり短かったりするわけが、いずれにせよ最後に揃えた人が全部持っていく。そういう意味では戦略性のかけらもない単なる運ゲーにすぎない。だが、自閉症児の集団参加を促す上でこのシンプルなゲームの持つパワーには毎度目を見開かされる思いがする。

2015-05-05 21:37:34
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

「虹色のへび」を用いて一人遊び中心の自閉症児に集団参加を促す場合、最初は指導員と一対一で取り組むのが望ましい。お子さんに順番にカードを引いてもらい、へびの頭・胴体・しっぽを並べてもらう。先述したように色や形への興味が強い子たちなので、これはみんな意欲的に取り組んでくれる。

2015-05-05 21:43:46
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

重要なのは、ヘビが完成した時は、指導員が「へび完成!やったね!」とハイタッチしてそのカードをお子さんに持たせてあげることだ。そのカードが「報酬」であることを理解してもらうために必要なことである。

2015-05-05 21:44:41
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

ヘビの頭・胴体・しっぽを揃えるのがゲームの目的であること、そろえた結果もらえるヘビが喜ばしい「報酬」であることをお子さんが理解できたら、集団の中でプレイさせる。それまで他の課題で集団参加を拒否していた子でも、すでに馴染みのあるゲームであれば参加しやすい。

2015-05-05 21:51:47
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

ただし、この段階では虹色のへび」はお子さんにとって単なる絵合わせパズルでしかない。しかし子ども集団でのプレイを進めていく、「他の子どもがヘビを揃えて取っていく」というシチュエーションが生まれる。

2015-05-05 21:56:01
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

お子さんからすると、いつも全てもらえていたはずのヘビを、今日に限って見知らぬ奴が奪っていく。その奪われたヘビの大半は自分が並べて作ったものだったりする。これは悔しい。泣く子、怒る子もいる。それまで遊びとは一人でするもの、と思っていた子の眼前に「対手」が立ち現れる瞬間である。

2015-05-05 22:01:51
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

そんなお子さんの不満をまあまあとなだめ、ゲームを続行する。すると、ある段階で自分もヘビをもらうことができる。運ゲーだから当たり前だ。こうした経験を何度か繰り返すうち、お子さんは自分が他者と同じルールを共有しており、その条件が公平であることを徐々に体感していく。

2015-05-05 22:05:00
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

ワンゲーム終わったら枚数を数え、勝ち負けを決める。指導員は、勝ったら「優勝だ!やったね!」と大げさに喜んでお子さんとハイタッチ。負けたら「うわー残念!」とこれまたオーバーリアクションで残念がる。勝敗の概念を子どもたちに感じてもらうために必要なアクションだ。

2015-05-05 22:08:35
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

こんな形で「虹色のへび」を数回プレイしていくと、最初はただ言われるがままにカードをめくり並べていただけのお子さんが、徐々に勝利をよろこび、敗北を残念がるようになる。

2015-05-05 22:16:37
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

勝敗を理解しつつあるということは、「自分の他に同じルールを共有して競いあう他者がいる」ということが理解できつつあるということだ。これは実に実に感動的な光景だ。人との関わりが薄いと言われる自閉症児であるが、然るべき条件があれば他者と場を共有することができるのだ。

2015-05-05 22:17:58
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

「虹色のへび」をきっかけに集団参加ができるようになったお子さんに、次のステップとして、与えられた選択肢の中からより望ましい方を選びとる練習として有用なのが、独HABA社の「パカパカお馬」である。sgrk.blog53.fc2.com/?no=2402

2015-05-05 22:25:25
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

これは、自閉症のあるお子さんが興味のあるパズルとすごろくを組み合わせたゲームである。最初にゴールしたプレイヤーが優勝だが、そのためには「馬を納屋の前まで進める」「蹄・水・餌といった道具を全て揃える」という二つの条件を満たさなければならない。

2015-05-05 22:27:32
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

プレイヤーは手番のとき、二つの異なるサイコロを振る。一つは普通のサイコロの目が書かれており、手駒を先に進めることができる。もう一つのサイコロには各種の道具が描かれており、出た目の道具をもらうことができる。プレイヤーは、手駒を進めるか、道具をもらうか、どちらかを選ぶ。

2015-05-05 22:29:29
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

自閉症のあるお子さんは、コマを進めるか、道具をとるか、どちらか一方ばかりを選ぶことが多い。さらに言えば道具ばかり選ぶ子が8割を占める。道具は一人一枚配れるパネルにはめ込む形になっており、このパズルっぽい感覚が視覚優位の感性を刺激するのだろう。

2015-05-05 22:37:49
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

当然のことながら道具ばかり集めていると「道具はそろったが、手駒はスタート地点から一歩も動いていない」という状況になる。「道具が全部そろった!」と喜んだのもつかの間、慌ててゴールに向かうこととなる。

2015-05-05 22:40:18
松本太一@アナログゲーム療育 @gameryouiku

しかしたいていの子は次回以降、二つのサイコロの出目を見比べて「道具を揃える」「手駒を進める」を偏らないように選択できるようになる。中には「今数字のサイコロで高い目がでたから、道具は置いといて駒をすすめよう」という判断をできる子もいる。戦略的思考の萌芽である。

2015-05-05 22:43:17