「イン・リタリエイション・フォー・ハーシュ・リアリティ」#3

テキストカラテな
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ジュセー @shiroboshi2

フジキド・ケンジはニューロンの闇の中で浮遊していた。邪悪な哄笑が闇を飾る。『グッグッグ……フジキドよ、実際情けない……長き怠惰がオヌシを腑抜けにしおった。レッサーのニンジャ風情に遅れをとるとは!』 21 #S57Ninja

2015-05-22 23:15:32
ジュセー @shiroboshi2

『黙れナラク!あのニンジャのジツ……ムナシ・ジツとは何なのだ。教えろ』フジキドは明確な決意と自我を持ってニューロンの同居人に問うた。ナラク・ニンジャへと。『なに?ムナシ・ジツ、とな……?』 ナラクは沈黙する。 22 #S57Ninja

2015-05-22 23:18:38
ジュセー @shiroboshi2

闇が静寂に包まれる。『……ナラク?』『グッグッグ……ムナシ・ジツ……グッグッグ……グッハッハッハ!ムナシ・ジツ!ムナシ・ジツとな!?』静寂は邪悪な哄笑によって瞬く間に切り裂かれた。『何が可笑しい』 23 #S57Ninja

2015-05-22 23:25:14
ジュセー @shiroboshi2

フジキドは苛立たしげにナラクに言う。『あらゆるジツやカラテを吸う強力なジツ。何か対策はないのか』ナラクは依然として笑い続ける。『グッハッハッハ、愉悦、愉悦!これが笑わずにいられようか!ムナシ・ジツ?斯様なジツなど存在するはずも無し!』『なんだと?』24 #S57Ninja

2015-05-22 23:32:45
ジュセー @shiroboshi2

『道理を考えよフジキド。あらゆるジツ、カラテを吸い無効化する。斯様なジツがあるのであれば、何故!彼奴に宿るニンジャのクランは世界を支配できなんだ!ムナシ・ジツなどあるはずもなし!彼奴めに宿るはコブラ・ニンジャのレッサー、実際サンシタよ!』 25 #S57Ninja

2015-05-22 23:36:57
ジュセー @shiroboshi2

『では奴のジツは』『左様!カナシバリ・ジツよ!裸眼の直視で非ニンジャすら殺せぬほどの弱小のニンジャ故、キンボシは譲ってやろう……その弱小ニンジャに苦しめられるとはオヌシも随分と腑抜けたものよ。先日の贋物めいた若造とのイクサを想起せよ。カラテだ!』 26 #S57Ninja

2015-05-22 23:42:11
ジュセー @shiroboshi2

ナラクが意識下に沈んでゆく感覚をフジキドは感じ取った。カラテ。先日の激しいイクサを思い出す。ニンジャスレイヤーを名乗り、最後は己のニンジャ性に呑まれた若者とのイクサを。それだけではない。これまで歩んできた血と屍の道を。カラテを。想起した。 27 #S57Ninja

2015-05-22 23:53:28
ジュセー @shiroboshi2

リタリエイションは淡く紅色の光をたたえる目で赤黒の殺戮者を見下ろす。殺戮者はピクリとも動かない。「……君のハイクを聞いてみたかったよニンジャスレイヤー=サン。同じ、復讐に生きる者としてね。最も……その様子では無理そうであるから、カイシャクをするがね」 29 #S57Ninja

2015-05-23 00:00:18
ジュセー @shiroboshi2

均整の取れたメンポの奥で少し残念そうな顔を作りながら彼は足を振り上げ、そして「イヤーッ!」振り下ろす!その瞬間、「……イヤーッ!」赤黒の影が勢いよく跳躍したのだ!地面にストンピング!蜘蛛の巣状の亀裂!「何!」リタリエイションは目を見開く。 30 #S57Ninja

2015-05-23 00:10:02
ジュセー @shiroboshi2

赤黒の影は勢いを殺さず連続バック転!リタリエイションとの距離が大きく開く。タタミ六、七枚ほどだ。リタリエイションは驚嘆する。「君は……やはりオバケだな。底が知れぬ。段々と恐怖心が湧いてきたよ」そして油断なきカラテを構える……否。ニンジャスレイヤーは睨む。 31 #S57Ninja

2015-05-23 00:13:49
ジュセー @shiroboshi2

油断なきカラテではない。ただ形を似せただけの贋物。偽りのカラテ。ニンジャスレイヤーは目を閉じる。これまで歩んできたイクサの日々を、瞼の裏に描く。暗黒の七日間。センセイとの出会い。ドラゴン。チャドー。「スゥーッ!ハァーッ!」 32 #S57Ninja

2015-05-23 00:20:58
ジュセー @shiroboshi2

(目を閉じた?もしや、気づいたか)リタリエイションは目を細める。しかし直ぐに口元に弧を描く……メンポの奥で。(イディオット。もう君は手遅れなのだ。この目を見ようが見まいが、 最早君はこの偽りのジツから逃れられない) 33 #S57Ninja

2015-05-23 00:32:23
ジュセー @shiroboshi2

ナムサン……彼のカナシバリ・ジツは実際弱い。だが彼はそれを利点として捉え、認識の歪みを目的として己のジツを鍛え上げたのだ。直接の殺傷能力は皆無であるが、その分燃費も良く持続性も高い。三十秒でも彼の目に睨まれれば、ジツは解けぬ。 34 #S57Ninja

2015-05-23 00:36:53
ジュセー @shiroboshi2

(長かったイクサであったが、もうそろそろ終わりにしよう)リタリエイションは偽りのカラテの構えから、跳躍しようとした。「……?」彼は訝しんだ。何故か?「スゥーッ……!ハァーッ……!」彼のニンジャ聴力は、ニンジャスレイヤーの呼吸音を聞き逃さなかったからだ。 35 #S57Ninja

2015-05-23 00:41:53
ジュセー @shiroboshi2

「スゥーッ……!ハァーッ……!」独特の呼吸音にリタリエイションは不審感を覚える。(何だ?何をやっている?)「スゥーッ!ハァーッ!スゥーッ!ハァーッ!」空気を揺るがすようなその呼吸に気圧されそうになるのを、彼はグッと堪えた。(ジツを隠し持っていたのか?) 36 #S57Ninja

2015-05-23 00:45:11
ジュセー @shiroboshi2

リタリエイションは迷った。ニンジャスレイヤーの奇妙な行動が何を意味するのか。彼は幾つかの可能性を探る。(ジツの予備動作か?あるいはカラテ?それか、単なるモージョー?) 「スゥーッ!ハァーッ!」リタリエイションが思考する間、呼吸音は響き続ける。 37 #S57Ninja

2015-05-23 00:57:06
ジュセー @shiroboshi2

(……今の奴は隙だらけだ!この隙にトドメを!)自分の答えを導き出したリタリエイションは、ニンジャスレイヤーに向かって飛びかかった!(仮に予備動作だとしても、中途であれば耐えられるはず!耐えられれば良い、そうすれば、その奇怪な行動を君は忘却する!) 38 #S57Ninja

2015-05-23 01:02:02
ジュセー @shiroboshi2

「ニンジャスレイヤー=サン!君は今ここで死ぬ!イヤーッ!」リタリエイションは右手を勢いよく突き出す。拳がニンジャスレイヤーに迫る、迫る!直撃の寸前……ニンジャスレイヤーは目をカッと見開いた。 「イヤーッ!」リタリエイションの拳をその胸板で受け止める! 39 #S57Ninja

2015-05-23 01:09:00
ジュセー @shiroboshi2

轟音が響く。「な……」リタリエイションは驚愕した。そしてまた迷った。(ニンジャスレイヤー=サンは確実に認識を歪められているはず )然り。赤黒の死神の胸板には歪んだ認識によるダメージが、偽りのダメージが確かに通っている。無傷ではない。だが彼は。 40 #S57Ninja

2015-05-23 01:14:36
ジュセー @shiroboshi2

彼は地を踏みしめ、リタリエイションを強い意志を孕んだ目で睨んでいる。燃えるような目で、瞳で。(私のジツが解けたとでもいうのか?)……否。解けてなどいない。だが死神は耐えた。不屈の精神で。チャドーによる精神統一による、頑健なる意志で。 41 #S57Ninja

2015-05-23 01:18:33
ジュセー @shiroboshi2

リタリエイションは己のジツに絶対の自信を持っていた。だが今、彼は揺らいでいる。己のジツが破られた、と、そう認識してしまっている。だが彼は迷うべきではなかった、万に一つでも。 ニンジャのイクサにおいて、迷いは一瞬であっても。「……イヤーッ!!!」42 #S57Ninja

2015-05-23 01:21:56
ジュセー @shiroboshi2

死神は億劫なサミングを突き出した。普段のイクサであれば、まず当たらぬであろう惰弱なサミング。だが、動揺しきったリタリエイションは。「グワーッ!?」彼の両目が抉り出される。死神はそれらを地に放り投げ、踏み潰した。途端に、彼の全身に圧倒的なカラテが漲る。 43 #S57Ninja

2015-05-23 01:29:10
ジュセー @shiroboshi2

ニンジャスレイヤーは腰を沈め、踏み込み……正拳を繰り出す!「イィィイヤァァァーッ!!」ポン・パンチ!「グワーッ!!」リタリエイションは大きく吹き飛ぶ、吹き飛ぶ、吹き飛ぶ!壁に打ち付けられる!当然巨大亀裂!「グワッ、アバッ……」 44 #S57Ninja

2015-05-23 01:36:36