【アイドル・アルマゲドン】#4

ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

(……まず目に入ったのは崩壊した劇場の広場だった。焦げ臭い煙が立ち込め、視界が利かない。燃える街路樹を見遣りながらルーントリガーはアイドル第六感のざわめきを感じた。隣でセリカエルが蒼褪めていた。「このソウル…まさか…」破損した噴水の陰に隠れ様子を窺う。「…あれは」)

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(そこには、劇場の入り口の前で今まさに崩れ落ちたガブリエルと、その前で尊大に腕組みをする黒い翼を生やした悪魔アイドルの姿があった。)

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【アイドル・アルマゲドン】#4

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「ブザマだね。ガブリエル＝サン。君に軍団長は荷が重いんじゃないかい？」笑みを浮かべる悪魔アイドル。ルーントリガーの手に汗が滲むほどのプレッシャーを放っている。『私が悪魔の気を引くから、そのうちにガブリエル＝サンを』ルーントリガーは手振りでセリカエルに伝えた。『了解しました！』

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セリカエルも手振りで答える。これはアイドル達に通じるギョウカイヨウゴだ。時としてアイドルは言葉を用いることなく意思疎通を図るのだ。そしてルーントリガーは堂々と真正面から悪魔と向き合った。「ドーモ、初めまして。ルーントリガーです」「ドーモ、ルーントリガー＝サン。サタンです」

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「…！」ゴウランガ！彼女はサタンと名乗ったか！？それは古事記にも記されし悪魔軍の総大将の名！さしものルーントリガーも目を見張った。「あなた程のアイドルが下界に降りて来るなんて、何事だというの？」サタンは爽やかな笑顔を振りまいた。「何、前回は後れを取ったからね。キアイ入れてるのさ」

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サタンの羽が羽ばたかれると、彼女の腕の中にはイクが抱かれていた。「イク＝サン！？」「おっと、動かないでよ。この子は大事なレリックなんだ」イクは意識を失っているようだ。「あなた達はその子で何をしようとしているの？」「この娘は天魔界の扉を開く鍵なんだよ。今のままだと面倒でね」

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サタンは愛おしげにイクの横顔を撫で、空を見上げた。暗い雲を巻き込む渦が見える。「ボクらはいけ好かない神を引きずり降ろしてやるのさ。こんな下らないイクサも懲り懲りだ」「イクサはあなた達が始めたんじゃ…」「無駄話はお終いだ。そこの泣き虫を天界に送り返してやらなきゃ。あいつのように」

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ルーントリガーはセリカエルに支えられ後退するガブリエルを見た。せめて彼女達を逃がす足止めをしなければならない。ルーントリガーは駆けながら銃の撃ち放った！BLAM！BLAM！サタンは事も無げに銃弾をサイドステップで回避！距離を詰めたルーントリガーの脚が唸る！ガブリエルが何事か叫ぶ！

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「イヤーッ！」「ンアーッ！？」突然両者の間に割り込む暗緑の影！ルーントリガーは強かに殴り飛ばされ噴水に突っ込んだ！「ぐ、うう…」頭を振りながら射手が起き上がる。その背後で壊れた噴水が爆発的な水柱を噴き上げた。その中に赤く光る一対の目あり！「イヤーッ！」「ンアーッ！？」

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ルーントリガーは強かに蹴り飛ばされサタンの前に転がった！「この子が例の助っ人なのです？」ボンテージアイドル装束のアイドルが首を捻る。噴水から踏み出したドラゴンめいた金の鱗状アイドル装束、そして長い尾を揺らすアイドルが大きく伸びをした。「うーん、やっぱ地上はいいなー！」

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サタンを中心に三人のアクマアイドルが並び立つ。端の二人がアイサツした。「ドーモ、アスモデウス…なのです」「ドーモ、レヴィアタンだよっ」その眼前でルーントリガーは倒れ伏し、アイサツを返すこと叶わず！何たる恐るべきアンブッシュか！「こちらの陣営は揃った。で、ガブリエル＝サン？」

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ガブリエルは泣き出しそうな顔でサタンを見た。「その程度の戦力でボクらを止められるとは思ってないだろうね？今ならこちらに加えてあげてもいいけど？」「…あの子がここにいたらそんなこと許さない」「は、あいつは今頃天界のフートンに包まって寝ているだろうさ！」サタンは翼を広げ羽ばたいた。

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「今日はあのウカツ者に免じて見逃してあげるよ。神殺しの儀式を指を咥えて観ているんだね」飛び上がったサタンに続き、二人のアイドルも暗雲の空に消えた。

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……「そろそろ話してくれてもいいんじゃない？」荒廃した劇場で焚火を囲み、ルーントリガーはガブリエルに問いかけた。「貴女達の関係について」ガブリエルはしばらく火を見つめ、やがてぽつりと呟いた。「…私達とサタンは、かつては天界の友達でした」「あの悪魔が？」「そう、そうです」

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「千年前まで、私達は共に天の遣いとして地上を治めていました。私とサタンと、軍団長のミカエルで」「そのミカエル＝サンが、彼女の言う人物なの？」「そうです。二人はいつも、弱い私を助けてくれて…。ある日サタンが見つけたんです。『聖女』を。その彼女の三界を繋ぐ恐るべき力」

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「神は『聖女』を処分せよと命を下しました。でもサタンは彼女を愛していた。彼女は天界に反旗を翻し悪魔と共に対立しました」「…あなた達は？」「私は、私達は、『聖女』の身柄を保護しようとして…あの子は自ら命を絶ちました」「それで、サタン＝サンは？」「ミカエルとのイクサに敗れ、魔界に」

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「それが千年前の大戦の真実なのね」ルーントリガーは湯気を立てるチャを啜り呟いた。天使軍はサタン達の奇襲を受け壊滅。残されたのは彼女達のみだ。「ミカエルは今回のイクサから既に敗退しました。真っ先にサタンを説得しに行って…」「説得って、何を説得するの？『聖女』を守るって？」

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「…人間を守るのが私達の役目です。それだけは確かです」「よく考えることね。明日になったら、そんな余裕ないわよ」そう言うと、ルーントリガーはごろりと身を横たえタオルケットに包まった。ガブリエルは膝にセリカエルを抱いたまま、しばらく焚火を見つめていた。

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……翌朝。廃街の道路を漆黒のモーターサイクルが唸りを上げて走行している。倒壊した建物から滲み出るように出現したフェイスレスが襲い掛かるが、射手の銃弾とその上を飛行する天使の雷に打たれて消滅した。ルーントリガーとガブリエルが目指す先は、トーキョー・スゴイタカイ・タワーだ。

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鉄塔の上には不穏な暗雲が立ち込めている。そこがサタンの待ち構える儀式の場であるのだ。劇場にセリカエルを残し、二人は決戦に向かった。作戦はシンプルだ。ルーントリガーが敵を引き付け、ガブリエルがサタンを倒す。儀式が成功しイクの力を利用されれば、ジゴクの門が開き敗北が確定する。

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バイクを止め、ルーントリガーは空を見上げた。圧し折れ上部が欠けたタワーの足元でガブリエルが告げる。「イク＝サンの力を奪われればオシマイ。そのためには…」「分かってる。私が気張ればいいんでしょ」二人は頷き、拳を打ち付けた。「「ガンバロ！」」

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甲高い靴音を響かせルーントリガーが鉄塔を上る。第一展望台エリア内部は壁が崩れ、あちこちから鉄骨やコンクリートが露出している。射手はカラテ警戒し歩を進める。「ほ？あなた独りなのです？」KRAAASH！射手の側面の壁が吹き飛ぶ！「イヤーッ！」ルーントリガーは側転回避！

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壁の向こうから姿を現したアスモデウスが手首を振る。「随分と舐められたもの…ね、レヴィ？」KRAAASH！射手の頭上の天井が崩落！「イヤーッ！」ルーントリガーはバック転回避！「へへ、今度は避けられちゃった」落下してきたレヴィアタンが笑う。「ドーモ、レヴィアタンです」

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ドラゴンめいたアイドルがアイサツする。「ドーモ、アスモデウス…なのです」「ドーモ、ルーントリガーです」アイサツ終了からコンマ1秒後、三人のアイドルが駆け出した。