【セント・ミリオン・スクール】#1

この学園は…あまりにもあのエピソード…そしてあの物語に…
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ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

◆◆「ゴキゲンヨウ」「ゴキゲンヨウ!」「ゴキゲンヨウですわ!」早朝の空に若々しい声が響き渡る。優雅な装飾の施された校門の前で奥ゆかしい制服を着た少女達がアイサツをする。それを受けるのは数人のシスターだ。女生徒達はにこやかに校舎へと歩き出した。今日も青春と研鑽の一日が幕を開ける。

2015-10-16 00:10:17
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

ここは聖ミリオン女学園。礼拝堂を中心に据えられたこの学園は、猥雑な都会の喧騒を遮る森に囲まれたネオサイタマの外れに位置する名門だ。ほとんどの生徒が上流階級の出である由緒正しい学び舎は、実際荘厳なアトモスフィアに満ちてる。…そこに停車したタクシーはいかにも似つかわしくないだろう。

2015-10-16 00:12:56
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「…ここが、聖ミリオン女学園」不安そうに去りゆくタクシーを見送った少女は、威圧的ともいえる校門を見上げながら呟いた。少女は卸し立ての制服を念入りにチェックし、敷地内へ足を踏み入れた。その日、イク・ナカタニの新しい学園生活が始まった。◆◆

2015-10-16 00:16:26
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

◆◆「もう、やめにしましょう」「スミマセン。仰る意味が分かりませんね」知的かつ温厚無害な笑みを浮かべた女が首を傾げた。後ろで纏められた髪が揺れる。「アリサも何の確証なくこんな話はしませんよ。校長殿」タタミ1枚離れた卓上で手を組む女に、探偵はプリントを放った。女は眉を上げる。

2015-10-18 00:11:17
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「こんなもので何かの解決を図ると?…フフッ、私達の間で、それはあまりに滑稽ではありませんか?」肩を震わせながら校長はゆっくりと立ち上がった。「ほら、貴女も笑いなさい。…アイドルなら」「イヤーッ!」恐怖に駆られた探偵は電撃的速度でサイリウム・ダートを投げ放った!「ンアーッ!」

2015-10-18 00:13:52
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

胸に8本ものダートを受けた校長が吹っ飛び、黒檀の机の向こうで椅子を蹴倒して倒れ込む。探偵は注意深くザンシンした。彼女のアイドル調査が正しいなら、相手はこの程度で不覚を取るようなサンシタではない。不気味な感触を払い、新たなダートを握った。「……とまあ、前置きはこの程度にしておいて」

2015-10-18 00:16:53
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

不自然な角度で校長が立ち上がる。ダートが零れ落ちた胸には血の染みすらない!「ドーモ、ルーントリガーです」その手には一振りのシナイ・ブレード。一瞬で白黒のセーラー衣装に変わった校長はアイドルだ!「…ドーモ、ディティクティブです」アイサツから0コンマ1秒後、探偵がダートを投擲!

2015-10-18 00:20:48
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「イヤーッ!」「イヤーッ!」ルーントリガーのシナイがすべて払い落とす!返す刀でディティクティブの足を払う!「ンアーッ!?」そして体勢を崩したディティクティブに4連突を放った!「イヤーッ!」「ンアーッ!」探偵は校長室の壁に激突!「弱敵!」ルーントリガーがシナイを突きつけ見下ろす。

2015-10-18 00:24:46
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「ファハハハ!」解けた髪が超自然的にざわめく。探偵は震えた。「ファハハハ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「アバーッ!」……◆◆

2015-10-18 00:28:20
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

◆◆豊かなラベンダーの香りが鼻腔を満たす。あまりに美しい光景に、イクはしばし己の居場所を見失いかけた。「いいところでしょう?」微笑むアズサは向き直った。「ここを知っているのは私だけ。今日からは二人だけの秘密の花園ね」「なんで私を学園に呼んだのですか?」「あなたは特別だから」

2015-10-20 00:11:36
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「特別?」「そう、貴女になら私の後を任せられると思ったの。私の生徒会を」アズサはイクの手を引いて金属片を握らせた。天使めいたエンブレムだ。「貴女には才能がある。だから、私の側に来てもらえないかしら」「私が、生徒会に?」アズサが頷く。そしてさらに強く手を握った。「…アズサ=サン?」

2015-10-20 00:14:54
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「それだけじゃない。貴女なら、もっと上の…」アズサはそこで言葉を切って唇を噛んだ。「とにかく、そういうこと」……イクを促してアズサは校舎へと戻っていった。彼女はそれを見下ろす女生徒に気付くことはなかった。◆◆

2015-10-20 00:17:38
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

◆◆放課後。苛立たしそうに廊下を歩いてくるのはウミだ。彼女は爪を噛みながら床を蹴る。「…わたしは悪くないのに、あんな恥を…それもこれもあの小娘のせい…」そこで彼女は正面に佇む影を見た。生徒会の一員のアユムである。「ドーモ」「ドーモ」両者は手を合わせてオジギした。これは符号だ。

2015-11-01 00:32:00
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

このアイサツを交わす時は彼女達のみに関わる出来事の際だ。「…校長先生が、時計台に来るようにと」言葉少なにアユムが言った。「分かりました。アリガトゴザイマス」そして二人はすれ違った。アユムはじっと、ウミが見えなくなるまでその後ろ姿を見送り、小さく呟いた。「……アイドル…ナカヨシ」

2015-11-01 00:36:12
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

時計台の中には、生徒会のメンバーだけが入ることが許される地下がある。ウミはエンブレムを取り出し、秘密の鍵穴へと差し込んだ。そこには彼女達の修行のためのドージョーがある。実際広いタタミ部屋で、校長が正座をしてウミを出迎えた。「ドーモ」「ドーモ」校長はウミに座布団を勧めた。

2015-11-01 00:38:34
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「…ウミ=サン。最近、心を乱しがちではないですか?」「…スミマセン」ウミはドゲザした。怯える内心を隠そうと唇を噛み締めた。しかし、校長は穏やかに告げた。「顔をお上げなさい。恥じることはありません」ウミは目を見張った。生徒会を中心とするソサエティ、ナカヨシの和を乱すことは罪だ。

2015-11-01 00:42:15
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「貴女は強い愛によって行動した。それは素晴らしいことです」校長はウミの傍に寄り、少女の顎を撫で耳元で囁いた。「…そろそろ、次の段階に移ってもいいでしょう」「本当ですか…?ヤッタ…!」ウミは狂喜した。頬が赤みを増し声が上擦る。「これで私もお姉さまと同じに!」「…フフ。メデタイ」

2015-11-01 00:47:23
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

◆◆「ねえイク=サン聞いた?2年生のウミ=サン、退学しちゃったんだって!」「…え?ウミ=サンが?」「生徒会役員だったのにね。ヘンなの!」タマキは首を傾げるが、イクほどのショックは受けていないようだ。ウミとは数日前に会話をしたばかりだ。その人物が、こうもあっさりといなくなった。

2015-11-02 00:35:47
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「タマキ=サンはあまり驚いてないのね」「そうだね…今年度になって4人目ともなると、そう驚きはしないかな」「そんなに!?」「この前は2年生のユリコ=サンだったかな。ボク達の学年でもいたよ。ここのの生活は厳しいから」イクは…イクは納得しなかった。ウミの様子。ただの退学?ありえない。

2015-11-02 00:37:57
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

ふと、教室の向こうの景色を見る。何者かに監視されているような感覚。思えば、この学園に足を踏み入れた時から妙な胸騒ぎがした。それが今、何らかの形で己に降りかかるような予感がした。(((アズサ=サンなら何か知ってるかな…)))◆◆

2015-11-02 00:40:14
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

◆◆アズサは礼拝堂地下のドージョーで正座した。イク、ウミ、校長、己自身。そして……考えを巡らせる度に踏み込むべきではないと何かが警告する。だが彼女はあえてそれを無視して探索を続けた。長年の生徒会の活動が麻痺させているこの学園の暗黒を捉える。それは果てしない恐怖を伴った。

2015-11-03 00:32:29
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

魔の手は今や大切な妹分にまで伸びている。それどころか、既に彼女は大切な後輩を失った。あの日、校長から告げられた事実は、すべてにおいて曖昧にぼやかされ、彼女達はそれを漠然と受け取った。それが慣習である。それがこの学園の病巣そのものだ。彼女は知るものとして抵抗しなければならない。

2015-11-03 00:35:17
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

彼女だけが校長がどのような存在か知っている。生徒会長とは即ちナカヨシのリーダー。5人のグランドマスターを統べる存在だ。その彼女だけが校長から直々に教えを受けることができる。即ち。「…アイドル」それは伝説上の怪物に過ぎないと思われた。だが確かに実在した。恐るべき悪夢だ。

2015-11-03 00:38:49
ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

「アズサ=サン」「アイエッ!?」突然背後から声をかけられアズサは飛び上がった。「マツリ=サン」気配もなく立っていたのはクラスメイトのマツリであった。彼女もまたナカヨシの一員である。「シスター・フウカが礼拝堂で待っているのです」「分かりました。すぐに行きます」アズサは立ち上がった。

2015-11-03 00:42:17