『放課後のプレアデス』はなぜ生まれたかーSUBARUとGAINAXの「スピリッツ」を考える

『放課後のプレアデス』公式サイト…http://sbr-gx.jp ◆2011年にYouTube版が配信され、2015年4月からはTVシリーズが放送された、アニメ『放課後のプレアデス』は、SUBARUブランドの自動車メーカー富士重工と、アニメーション制作会社GAINAXのコラボ企画から生まれました。 なぜ、自動車メーカーがアニメーション制作会社と組んで、クルマもろくにでてこない、いわゆる「魔法少女モノ」アニメを作ったのでしょうか。富士重工側に光を当てつつ考えます。
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翠坂満月/藤 @Fuji_Midoryzaka

「宇宙へのこだわり」(5)…「統ばる」後、富士重工は(当初目的の航空機ではなく)自動車部門を中心に成長を遂げる。富士重工の乗用車シリーズに「スバル」と名付け、後に六連星「昴」の意匠を採用する。「統ばる」時の空への思いは、宇宙の六連星として、表象されることとなる。 #sbr_gx

2015-06-28 12:18:30
翠坂満月/藤 @Fuji_Midoryzaka

「宇宙へのこだわり」(6)…空への思いは確かに受け継がれ、「T-1」「エアロスバル」の製造、「YS-11」「B787」の開発への参加、「MRJ」への技術者協力として表れる。そして宇宙へ、GXロケット開発に参加しー開発中止の憂き目をみる。 #sbr_gx

2015-06-28 12:23:47

弁解:富士重工はH-2Aロケットにも参加しているようだが、仔細がわからず触れられなかった。
GXロケットについては開発にも参加しているものの、H-2との競争に勝てず、計画中止となってしまった。
「宇宙」へのこだわり、としては片手落ちの感があるが、(1)天体をエンブレムとして採用し続けていること(2)空のその先には宇宙があること(3)富士重工の社内カンパニーとして「航空宇宙カンパニー」となっていること、を持って、「宇宙へのこだわり」を推測可能とさせていただきたい。

翠坂満月/藤 @Fuji_Midoryzaka

#sbr_gx ここまでみてきた富士重の「宇宙へのこだわり」は、国産軍事航空機開発を志した中島に端を発し、参画しのちに自身も飛行機会社をつくる川西、戦争を経て分割、平和産業への転換と統合、自動車部門への進出を導いた北謙治・松林敏夫・百瀬晋六、その後の富士重工内の→(後続)

2015-06-28 12:35:00
翠坂満月/藤 @Fuji_Midoryzaka

(承前)→「世代交代を経ての変革」のなかで、起こったことである。空を目指し、戦後自動車部門へ転進、躍進を遂げ、なお空を、そしてその先の宇宙を目指し「変革」し続ける富士重の姿は、先に紹介した記事で触れられた「変革」を経たガイナックスにも通ずるものがあろう。 #sbr_gx

2015-06-28 12:42:49

「すばる」が伝えたかったこと

(あるいは、なぜ自動車メーカーの宣伝アニメのはずが、魔法少女「すばる」を生んだのか?)

翠坂満月/藤 @Fuji_Midoryzaka

こうした共感のもとコラボした両社にとって、妥協できない点は、両社の「ものづくりへの誇り、それを貫き通すスピリッツ」に忠実であることに違いない。当初企画の「EyeSightの宣伝アニメ」はこの忠実さによって、『放課後のプレアデス』へと「変革」していった。 #sbr_gx

2015-06-28 12:48:08
翠坂満月/藤 @Fuji_Midoryzaka

(以下、ネタバレ注意。せめてYouTube版を見てからお読みいただくと、理解しやすいはずです。)

2015-06-28 12:50:53
翠坂満月/藤 @Fuji_Midoryzaka

『放課後のプレアデス』は、主人公のすばるが知らされないままに、親友のあおいが別の中学校へ進学し、離れ離れに、ひとりぼっちになってしまうことから始まる。彼女が学校の展望室へ向かう途中、謎の生物にコンパスを奪われ、追いかけた先で「あおい」と再会する。(第1夜) #sbr_gx

2015-06-28 12:55:32
翠坂満月/藤 @Fuji_Midoryzaka

再会した「あおい」は別世界から来た存在で、「勝手にいなくなったのはすばるの方だ」という。コンパスを奪った「プレアデス星人」の宇宙船を直すべく「エンジンのかけら」を集めるため、すばるはされるがまま他の少女たちとかけら集めに駆り出され……、というのが導入だ。 #sbr_gx

2015-06-28 12:58:46
翠坂満月/藤 @Fuji_Midoryzaka

YouTube版ではすばるとあおいの葛藤を中心に、TV版ではそれに加え、他の少女たち一人一人の葛藤や、5人が集まった理由、そしてすばるが出会う少年みなと(敵役)の姿と心の変化が、緻密に描かれている。どちらも短い尺でありながら、丁寧につくられている。 #sbr_gx

2015-06-28 13:02:16
翠坂満月/藤 @Fuji_Midoryzaka

TV版終盤、あおいは「やっぱりすばるはすばるだ」と言う。平行世界論的な、可能性の「分岐」で異なる道を歩んだ(「いなくなった」のがどちらの側か)すばると「あおい」だが、根底は、本質は異なっていない、同じであると、自分に言い聞かせるような、セリフである。#sbr_gx

2015-06-28 13:07:52
翠坂満月/藤 @Fuji_Midoryzaka

TV版最終話、すばるたちには可能性の「分岐」をやり直すチャンスが与えられる。にもかかわらず、全員がもとの世界を−−やり直さないことを選ぶ。目覚めたすばるは(自ら別の学校へ進んだ)あおいに、意を決して話しかけ、そして仲直りを果たす。あおいはあおいだったのだ。 #sbr_gx

2015-06-28 13:11:20
翠坂満月/藤 @Fuji_Midoryzaka

世界はつねに変化し、我々は選択を、「変革」を迫られる。そして「やり直し」は効かない。"過ち"をなかったことにはできない。けれども、どんなに「変革」しつづけても、変わらないもの−−「貫き通すスピリッツ(=真意、魂)」を、我々は持っている、信じているのだ。 #sbr_gx

2015-06-28 13:16:31
翠坂満月/藤 @Fuji_Midoryzaka

YouTube版主題歌「放課後のプレアデス」にも、そのメッセージは織り込まれている。「君との約束」として、「掴んだ夢のかけら」を「離さない」で「笑顔のまたたく場所」「未来へ」「一緒に行こう」と「私たちは旅をする」……「スピリッツ」を持ち「変革」する姿が描かれる。 #sbr_gx

2015-06-28 13:54:15
翠坂満月/藤 @Fuji_Midoryzaka

(「君との約束」の「君」って誰だ?それは過去/先人たちかもしれないし、ともに旅する「私たち」の仲間かもしれないし、あるいは、ともすれば「スピリッツ」を見失いかねない、自分自身かもしれない) #sbr_gx

2015-06-28 13:55:59
翠坂満月/藤 @Fuji_Midoryzaka

TV版のOP/EDも同様だ。「泣きじゃくりながら旅をしてた」が「なんにでもなれるはず」と信じ、「今ならこわくない」と「約束のドアを開けて まぶしい笑顔になれ」と、また「私たちはいつでもゆける」と、過去からの「変革」を歌い、その根底には「スピリッツ」がある。

2015-06-28 14:01:33
翠坂満月/藤 @Fuji_Midoryzaka

そうした「スピリッツ」の存在を体現するために、「すばる」というキャラクターが生み出された。魔法少女モノの体裁をとったのは、おそらくガイナ側の(特に、佐伯監督の)要請、つまり「すばる」をきちんと描くための手段であって、それはガイナックスの「スピリッツ」の表れだろう。 #sbr_gx

2015-06-28 13:21:36
翠坂満月/藤 @Fuji_Midoryzaka

(まさか「ガイナックスは魔法少女モノしか描けないとでも言うのか!」と誤読する人はいないと思うが……単に作話上の複数の「可能性」のなかから「選択」された結果に過ぎないことを、一応補足。)

2015-06-28 13:31:18
翠坂満月/藤 @Fuji_Midoryzaka

(蛇足ついでに。最近のガイナックス(先の記事でいう「新時代期」)の作品は「天元突破グレンラガン」「キルラキル」のような、情熱的で大胆豪快な作風がウケているが、そのなかであえて魔法少女モノで、しかも繊細な心の機微を描くという「選択」は作り手には「こわい」はずだ) #sbr_gx

2015-06-28 13:36:00
翠坂満月/藤 @Fuji_Midoryzaka

先に紹介した記事は佐伯監督について「制作陣の中で唯一『旧エヴァ』に参加したガイナスタッフ」だと指摘している。彼自身、ガイナックスの「変革」の中を生き、そして初監督作品として、伝えたい想いを存分に表現したことだろう。彼も「スピリッツ」を持ち、信じる者に違いない。 #sbr_gx

2015-06-28 13:26:38
翠坂満月/藤 @Fuji_Midoryzaka

(自身佐伯監督については「ストライクウィッチーズ6話の人」ぐらいの認識で、少女の心の動きや葛藤を、感動的に描ける演出家、ぐらいにしか思っていなかったので、先に紹介した記事の指摘はとても刺激的だった。感謝)

2015-06-28 13:29:01
翠坂満月/藤 @Fuji_Midoryzaka

(閑話休題)つまり『放課後のプレアデス』は、富士重・ガイナのそうした「スピリッツ」をメッセージとして、ガイナックスの「スピリッツ」によって丁寧に描かれて「つくられた」作品である。ファンシーな魔法少女モノアニメの根底にある「スピリッツ」を忘れず、鑑賞したいものだ。 #sbr_gx

2015-06-28 13:42:21

むすびに

翠坂満月/藤 @Fuji_Midoryzaka

以上縷々述べてきたが、『放課後のプレアデス』が、単に「クルマ会社とコラボした異色のアニメ」というだけではなく、そのコラボの根底にある「スピリッツ」をよく表現した、「すばる」の作品であることを感じ、作品を見なおす契機となれば、4年待った1ファンとして、嬉しいです。 #sbr_gx

2015-06-28 14:05:51