忍殺真昼のテキストカラテ【エンド・オブ・ア・ニンジャ】(原文のみ)
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「ドーモ、ヒートヘイズ=サン。ニンジャスレイヤーです」そのアイサツを切り出されたとき、ヒートヘイズが己の感情を抑えるのに必死だった。「……ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン。ヒートヘイズです」必死の気持ちでアイサツを切り返す。アイサツは絶対。古事記にもそうある。1 #4215tk
2015-07-12 13:03:04ヒートヘイズがニンジャになったのは数年は前のこと。かの聖ラオモトが健在で、ソウカイヤが幅を利かせていたころだった。粗暴なスカウトに連れてこられ、あの恐るべき首領の前に連れ出されてからというもの、彼は身の程というものを嫌という程思い知らされた。2 #4215tk
2015-07-12 13:06:44そしてネオサイタマの死神の噂。生来臆病だった彼のニューロンは、それだけで参ってしまった。ヒートヘイズはもはや出世を諦め、サラリマンめいてつまらぬ仕事に従事するつまらぬニンジャとなった。その代わりの丁寧さのためか、重用されたのはなんの皮肉か。3 #4215tk
2015-07-12 13:09:15ニンジャとなったときに得たジツと、常人の三倍の脚力。彼を生き延びらせたのはそれだ。聖ラオモトの死の直後に起こったザイバツの侵攻からも、かろうじて彼は逃げ切った。逃げて、逃げて……またつまらぬことでアマクダリという組織に拾われ……つまらぬ人生を再開した。4 #4215tk
2015-07-12 13:12:22ヤクザたちへの暴力はほどほどに。しかしアマクダリに恭順し、無駄な暴虐は働かずにここまできた。(ソウカイヤよりもうまくやれそうだ)過去よりも良い待遇に、そう微笑を漏らすこともあった。が、それも今日で終わりなのだ。ヒートヘイズの意識は再び現在へと舞い戻る。5 #4215tk
2015-07-12 13:15:16「イヤーッ!」「イヤーッ!」死神の牽制スリケンを摘み取り、投げ捨てる!「イヤーッ!」「イヤーッ!」踏み込みからの断頭チョップをブリッジ回避!ブリッジ姿勢のまま、彼は「カゲロウ・ジツ!イヤーッ!」逃走のためのジツを発動!その周囲の空気が揺らめいた。6 #4215tk
2015-07-12 13:18:21「ヌゥッ」死神の呻き。ヒートヘイズは安堵した。効いている。この恐るべき存在は決して死神ではない。己と同じ、つまらぬニンジャにすぎない。相手の視界が妨害されていることを確認し、ヒートヘイズは立ち上がった。「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーの恐るべきカラテが唸る。7 #4215tk
2015-07-12 13:21:17だが……ナムサン。そのカラテはてんで見当違いの方向を薙ぎ払った。(バカメ)ヒートヘイズはほくそ笑み、ゆっくりと後退する。カゲロウ・ジツは唯一彼の誇れるジツだった。相手の視界をハックし、妨害し、あらぬ幻を見せる。「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」死神の演武。8 #4215tk
2015-07-12 13:24:27ヒートヘイズの戦法は相手の初撃回避とその後のジツ発動にすべてを注いだ、おおよそ消極的なものだ。しかし、これまでそれを破ったものはいない。「サラバ」ぼそりと呟き、ヒートヘイズは一目散に駆け出した。生き延びてみせる。これまでもそうだった。これからもそれは変わらぬ!9 #4215tk
2015-07-12 13:27:14……「ハァーッ!ハァーッ!?」その数日後。ヒートヘイズはまたも死に物狂いの逃走を強いられていた。再び現れたニンジャスレイヤー。前のイクサのリピート。唯一違うのは、背後の殺意が離れる気配を見せないこと!「バカな!俺のジツは確かに効いたはずなのに!」11 #4215tk
2015-07-12 13:30:48「Wasshoi!」頭上を通り過ぎた赤黒い旋風が、タタミ三枚分先に舞い降りる。ヒートヘイズはたたらを踏む。彼は見た。死神を。その目に灯るセンコめいた赤い輝きを。「カゲロウ・ジツ。破れたり」「バカな、なぜ……!」「説明はせぬ。オヌシはここで死ぬことになるからだ」12 #4215tk
2015-07-12 13:34:18ヒートヘイズは立ちすくむ。ニンジャスレイヤーは……決断的にジュー・ジツを構えた。「ハイクを詠め、ヒートヘイズ=サン」「イ……イヤーッ!」ヒートヘイズはヤバレカバレの突進!カラテ・パンチを死神に見舞おうと「イヤーッ!」胸に衝撃。彼は己の体を見下ろした。13 #4215tk
2015-07-12 13:36:20「ア」ヒートヘイズは呻く。ワン・インチ距離に死神の姿があった。その腕は無慈悲に己の胸を貫通し、心臓を……「ハイクを詠め。ヒートヘイズ=サン」ニンジャスレイヤーが再度宣告する。「アバッ」ヒートヘイズは震え、血を吐き、死神を見返した。14 #4215tk
2015-07-12 13:39:27そして……彼は震える声でハイクを詠む。「し……死神の腕が/陽炎の檻を突き破った/インガオホー」「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーが心臓を握りつぶしカイシャク!「サヨナラ!」ヒートヘイズは爆発四散した。15 #4215tk
2015-07-12 13:42:03……ヒートヘイズの爆発四散痕を見下ろしていたニンジャスレイヤーは、次なるニンジャソウルの存在を探知し、その場をしめやかに立ち去った。後には何も残らぬ。ヒートヘイズの痕跡は、陽炎めいて消えていった。16 #4215tk
2015-07-12 13:45:19