- kaimu_0409
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「なんだこれ……」 まるでユグドラシルの時とは違う光景だった。 ユグドラシル時代であれば〈遠隔視〉によって生じた視界は、画面として端っこに浮かび上がった。ちょっと小さかったりするので必要なときは画面を大きくすることもあった程度のものだ。50
2015-09-26 23:03:49しかしながら現在、まるでもう一つの視界が同時に展開されている。 奇妙というか奇怪すぎる感覚だった。しかしだからと言って問題があるわけではない。平然と、ごく当たり前のように操ることができる。まるで完全に自分が変わってしまったような、そんな感じさえあった。51
2015-09-26 23:04:02モモンガの僅かな混乱を無視し、〈遠隔視〉がアンデッドの姿を捉える。 名前は「ゾンビ」。名前の色は青。レベル的に相手にもならない程度のものだ。そのままモモンガは周囲のアンデッドを調べていく。どれもこれもゾンビだ。52
2015-09-26 23:04:15モモンガは「ふぅ」とどうやってか知らないがため息をつき、〈遠隔視〉を解除する。そして維持にMP消費が激しい〈完全不可知化〉もだ。 自分の力がどの程度かには確証がないが、魔法がそのままの強さで使えるのであれば何の問題もない。53
2015-09-26 23:04:27出来れば一体ほどゾンビを殺して強さを確かめたいが、それをするとこの廃墟都市内のすべてのアンデッドが敵に回る可能性も存在する。 ゾンビであればモモンガが同じアンデッドであるので襲いかかってこない確率の方が高いのだし、ここは情報収集を優先させるべきだろう。54
2015-09-26 23:04:40CM:オーバーロードアニメ第1巻好評発売中です!56 pic.twitter.com/9UbF8R21C0
2015-09-26 23:05:28調べれば調べるほど分かったことは文化レベルが低いということだ。まるで映画か何かのセットのように、現代機器という物が一切置いてない。線などは地中に埋めているかもしれないが、それでもこれでは生活ができるはずがないというレベルだ。 竈なんてユグドラシル以外では初めて見た。57
2015-09-26 23:05:36「──ユグドラシルか。いや違うな。あまりにも違う」 薄々とモモンガは気がついていた。 これは決してゲームではあり得ないことに。だが、そうなると自分はなんだ、ということになる。まずこの骨の体でどうやって動いているというのか。58
2015-09-26 23:05:51今までの自分を培っていた常識など既に崩壊しているが、まだこの新しい常識に付いていけないモモンガは大通りに出る。見ればこの都市の主なる通りらしく、ずっと見て行けば門のような物が見えた。のような、というのも崩壊しているからだ。59
2015-09-26 23:06:55「しかし、なんだ? 爆発でも起きたにしては完全に倒壊しているわけでもない。台風でも通り過ぎたのか?」 この都市の歴史に思いをはせたモモンガはふと、一つの反応に気がつく。 「何?」 アンデッドの反応が遠ざかっていくところだった。60
2015-09-26 23:07:25「……これは?」 ゾンビの移動速度ではない。何かが駆けるような速度で、しかも自分から遠ざかっていく。 モモンガは目を細める。 ゾンビではあり得ない、知的な行動だ。61
2015-09-26 23:07:42「逃がさんよ、情報源」 ふわりと体が中空に浮かんだ。走るよりも〈飛行〉の方が早い。相手はジグザグに移動しているのでどうやら都市の構造に熟知しているようだが、その差は飛ぶことで打ち消す。62
2015-09-26 23:07:55空から一直線に相手に向かって追いかけるモモンガは一つの影を捉えた。フードつきのマントを着た小柄な人影が後ろを幾度も振り返りつつ、狭い路地を駆けていく。 モモンガはその人影の前に降り立つ。たまたま後ろを振り返っていたタイミングであったため、その人影はモモンガの体にぶつかる。63
2015-09-26 23:08:28小柄な人影はぶつかった衝撃を殺しきれず、トスンと尻をついた。フードの下から金の髪がこぼれて見えた。 「……こんばんわ、曇ってはいるが良い夜だな」 「ぃっ」 挨拶に対する返答はなく、ただ息を飲む音だけが聞こえた。64
2015-09-26 23:08:49「幾つか聞きたいことがあるんだが、構わないかな?」 フードの下からモモンガを上目使いで見つめる真紅の瞳があった。 (子供か? ストリートチルドレン……にしては臭いがない。まぁ、アンデッドだからだとは思うが……いや、小ざっぱりしすぎているな)65
2015-09-26 23:09:03「……もう一度聞くぞ、幾つか聞きたいことがあるんだが、構わないかな?」 子供はぶんぶんと首を縦に振る。 「……私は……鈴木悟というがお前──君の名前は?」 真紅の瞳が円を描いたようだった。66
2015-09-26 23:09:31「……ぁ、ぅ……ぁ……ぁ」 発せられたのは掠れたような声であり、子供が何を言ったのかはさっぱり聞き取れない。 (日本語ではない? プレイヤーでもないのか?)67
2015-09-26 23:09:44「お前の名前は?」 「……あ、ぅ……あ……ぁ」 少し馬鹿にされているような気もしたが、外国の名前というのはそういうものなのだろう。 「あうああ、か? 変わった名前だな……ん?」子供が首を横に振っている。「違うのか? ではもしかして喋れないのか?」68
2015-09-26 23:10:07再び首が横に振られる。 そして必死に声を出そうとしているようだが、まるで意味のある言葉には聞こえてこない。 「親は何処に……」 ここまで言ってモモンガは相手がアンデッドであることを思いだす。親などいるはずがない。しかしながら子供の反応は少し奇怪だった。69
2015-09-26 23:10:19俯き、そして頭を振ったのだ。 まるでいたけど、いなくなったような反応だった。 (……どうしよう) それじゃ、と言って別れた方がいいのだろうか。奇妙な発音を繰り返す子供を見下ろしながらモモンガが考え込んでいると、非常に小さく意味のある言葉が聞こえてきた。70
2015-09-26 23:10:33「──ィーノ・──ァスリス・インベ──ン」 繰り返し聞こえる言葉はやがて明確にモモンガに意味を教えてくれた。 「なまえはキーノ・ファスリス・インベルン」 それは少女の名前だった。71
2015-09-26 23:10:49Sugar and spice and all that's niceルート。もしくはモモンガさんラノベ主人公っぽいルート。 というかこれ無理。二度とやらない。ニンスレの人凄い……。
2015-09-26 23:11:53