ゆうさみ鎮その5 ～風邪をひきました～

色んなゆうさみ @yubarisamidare

ピピピ 「良い…データ…取れたよね…。五月雨ちゃん…もういいから…この結果だけでも…持って行って……ね？」 「…はい。」 +43.3 °？壊れてるんですかね？ 「良いデータなんて取れてませんよー。はい、もう一回わきに挿して下さいね。」 ピピピ 「良い…」 「はいはい。取りますよ」

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夕張さんのわきから温度計を抜き取ります。 「38.4 ℃ですか。それじゃあ。」 熱はまだ下がってないですけど、冗談を言ってる余裕があるから大丈夫ですかね。 立ち上がり、ドアの方に向かう。 「待って、一人にしないで！」 「もういいんじゃないんですか？」

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「良くない良くない良くない。治るまでずっと一緒にいて。」 「ふふ、子供みたいですね。こんな姿、第六水雷戦隊の娘達には見せられないですよ？」 「今は五月雨ちゃんしかいないからいいの！」 普段はしっかりもののお姉さんなのに、こういう時は甘えん坊さんです。

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コンコンとドアがノックされます。 「あ、噂をすれば来ましたよ。しっかりしてくださいね、隊長さん？」 ドアが開いて、卯月ちゃんが顔を出します。 「たいちょ～、無事ぴょん？」 卯月ちゃんに続いて弥生ちゃんも入ってきました。

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「うーちゃんが来たからにはもう大丈夫ぴょん。」 「卯月だけだと心配だから来た。睦月と如月、望月もあとから来るから。」 「卯月ちゃん弥生ちゃん、ありがとう。夕張さん、後で夕食をお持ちしますね。」 そう言って部屋を後にします。

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夕張さん、本当にみんなから好かれてるなぁ。 そんな中で私、特別になれるのかな…。 自室に戻ると、涼風が帰ってきていました。 今日は由良さんと遠征に行く予定でしたが、涼風に変わってもらっていました。 「涼風おかえり。ごめんね、遠征変わってもらっちゃって。」 「いいってことよ！」

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「遠征どうだった？」 「由良さんって綺麗で格好いいよなー。」 「だよねー。」 本当に綺麗で格好いい。 夕張さんの隣にはやっぱり由良さんみたいな人がふさわしいのかな…。

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白露、時雨、村雨、夕立、春雨がお風呂から帰ってきたので、みんなで間宮さんに行くことにしました。 「一番先に間宮とうちゃーっく！」 「白露、廊下を走ると危ないよ。」 「ごっはん～♪ごっはん～♪」 今日の定食は肉じゃが定食です。

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白露型・改白露型を合わせて9人。賑やかになりましたね。 私の隣には時雨、向かい側に村雨が座りました。 「で、今日はどうだったの！？」 村雨が箸を持つより先に聞いてきます。 「どうって…いつも通りだったけど。」 「いつも通りってことは進展なしね。」

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「夕張だからしかたがないね。」 時雨が口にじゃがいもを運びながら続けます。 「まぁ、そうね。夕張さん、他人からの好意に気づかないタイプよね。」 「でもね五月雨、そろそろ決めないと由良に取られちゃうよ？」 「由良がどうかしたっぽい～？」 「夕立はちょっと黙ってて。」

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「そういえば今日の遠征中は様子がおかしかったわね。」 「夕張が寝込んでたからね。由良は由良で自分の気持ちに気付いてないみたいだね。」 「でも、気付いちゃったら早そうじゃない？」 「たぶんすぐだろうね。夕張も断らなさそうだ。」 「やっぱり、夕張さんには由良さんがふさわし」

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「五月雨。相応しいとか相応しくないとかそういうんじゃないのよ？」 「五月雨が夕張の隣に居たいかどうか、夕張の一番になりたいかどうかなんだよ。」 「一番！？」 「白露もちょっと黙ってて。」 「それで五月雨、どうなの？」

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「私は…私は夕張さんの隣に居たい！夕張さんの一番になりたい！」 「うんうん。そうハッキリ言えるとこ、やっぱり私達の妹よね。」 「それを夕張に言えたらもっといいんだけど。」 「言える？」 「…無理かな。」 「でも、待っていたら進まないわよ？」 「夕張は鈍感だからね。」

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「頑張ってみる。」 「狼モードの夕立くらい攻めなさい。」 「それはちょっとやりすぎだと思う。」 食事が終わった後、間宮さんに頼んでおいたおかゆを受け取ります。 「頑張ってね、五月雨ちゃん。」 「間宮さん、聞いてたんですか！？」

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おかゆを持って夕張さんの部屋に向かいます。 ドアをノックすると 「はーい！！！はーーーい！！！」 って、すごく必死な夕張さんの声が返ってきました。 ドアを開けると、由良さんと大井さんがいました。 でも何故か、大井さんと夕張さんが取っ組み合っています。 「五月雨ちゃん！助けて！！」

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よく見ると大井さんが右手に長ネギを持っていました。 大井さんは私の方を見やると夕張さんから離れました。 「ちっ。命拾いしたわね。」 「今、命拾いって言った！さっきと言ってること違う！！！」 夕張さんは汗だくになって肩で息をしています。 「夕張さん！安静にしてないとダメですよ！」

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「だって、大井が。」 「由良さんもなんで止めてくれないんですか！？」 「いや、実際どうなるのか気になっちゃって…ゴメン。」 夕張さんをベッドに寝かしつけます。 「由良、大井、もういいから。ありがとね。」 落ち着いた夕張さんがお礼を言うと、二人は部屋からそっと出て行きました。

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「どうしてあんなことになってたんですか？」 「聞いてよ！大井がね… --- 「長ネギをおしりに突っ込むと風邪が治るって聞いたから試してみよう」 「ちょ！やだ！」 「あんた実験軽巡でしょ？」 「『兵装』実験軽巡だから！ネギは兵装じゃないから！！！」

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「兵装みたいなもんでしょ。ほら、なんだかってキャラクターも長ネギ持ってるじゃない。」 「いやいやいやいや。」 「後で感想、聞かせてね！」 「させるか！由良も、見てないで大井を止めて！！！」 「ちょっと待って、私も治るかどうか気になる。」 ---- ってね。ひどくない！？」

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「本当に治るんですかね…。」 大井さんがベッドの横に置いて行った長ネギを見つめます。 「え？五月雨…ちゃん…？」 夕張さんが涙目になります。 「もう、冗談ですよ。」 「ぐすん。」 「さ、おかゆ食べましょ？」

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「食べさせて。」 「子供じゃないんですから、自分で食べてください。」 「さっきので体力使い果たしたの。食べさせて。」 「もう、仕方ないですね。」 レンゲでおかゆをすくい、ふーふーして少し冷まします。 「はい。」 「あーん。」

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はっ、となり、レンゲが止まります。 これじゃあいつも通りだ。いつも通りじゃあダメなんだよね…。 『狼モードの夕立くらい攻めなさい。』 村雨の言葉が頭に浮かびます。 「五月雨ちゃん？早く早く。」 夕張さんが急かしてきます。

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レンゲをそのまま自分の口に運びます。 「もう意地悪しないで…んんん？？？」 おかゆを口に含み、夕張さんに口移しします。 「五月雨ちゃん！？なにする…ん！」 続けざまに2口目。 「夕張さん、美味しいですか？」 「味なんてわかんないわよ！」 夕張さんが顔を真っ赤にして反論します。

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「そうですか。でも、残さず食べてくださいね？」 再びおかゆを口にしようとしたところで 「五月雨ちゃん！自分で、自分で食べれるから！」 と、夕張さんに制止されました。 「遠慮しなくてもいいんですよ？」 「風邪、伝染っちゃうから…。」 夕張さんは耳まで真っ赤です。

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大井さんとの件もあって夕張さんが汗だくだったので、着替えと身体を拭く用意のため部屋を一度離れます。 「残さず食べておいてくださいね。」 「…うん。」 夕張さんはうつむきながら黙々と食べていました。