黄昏町(九板)十三日目

九板ちゃんはゾンビ映画ダメなタイプ。 初日/一日目→http://togetter.com/li/883761 前日/十二日目→http://togetter.com/li/888733 翌日/十四日目→http://togetter.com/li/890659
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@hiiragi_r_t_d

【十三日目】 【魂13/力5/探索2】 【異形】三ツ目(力+1、探索+2)、牙(力+2)、角(力+2) #hollytk

2015-10-21 21:29:06
@hiiragi_r_t_d

[ハンドアウト]気が付くと、君は病室のベッドに両手足を拘束されている。《力5以上で【拘束解除】、力4以下で【拘束状態/死亡時解除】》《開始地点[病院]shindanmaker.com/541541#黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541552 #hollytk

2015-10-21 21:30:31
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「ん……」 わたしは目を、開けた。 「天井……」 昨日のように、屋外ではないようだ。黄ばんだ天井から生えた錆だらけのカーテンレールに、ズタズタに破られた布切れがぶら下がっていた。 横を向くと、いくつもベッドが並んでいる。 「病室……ですか」 01 #hollytk

2015-10-21 21:32:30
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わたしは三つの目だけを動かし、周囲をギョロギョロと見回す。 薄暗い病室には頼りなさげに明滅する蛍光灯が一本だけ。窓の向こうにはすぐそこに黒ずんだコンクリートの壁が迫り、陰湿な空気をより重くしていた。 そして、両目の上、眉の上から真っ直ぐに伸びる、二本の角。 02 #hollytk

2015-10-21 21:34:42
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タクティカルナイフのように分厚く、鋭い刃を持った角。 「おおー……」 とても素敵です。酷い目に遭った甲斐があったというものです。 「次に会ったら、まずはお礼をしないといけませんねー」 わたしは角を撫でようとして、不自由に気付く。 手が、上げられない。 03 #hollytk

2015-10-21 21:36:38
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「……あれ?」 わたしは手を見やる。手首に分厚い革のベルトが巻き付き、ギシギシと音を立てていた。 両手の手首と、両の足首。巻き付いたベルトはベッドの下へと伸びている。 「どうしましょうか……ねえ?」 わたしはにやりと笑って、角をかざした。 04 #hollytk

2015-10-21 21:39:11
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ピンと伸ばしたベルトに、鋭い角の刃を当てる。しばらくごそごそやっていると、バチンと音を立てて右手のベルトが切断された。 「とりあえず、先に足のベルトを切りましょう」 寝たままの姿勢だと、角に力が込めにくいし。 05 #hollytk

2015-10-21 21:40:20
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わたしは体を起こし、前屈の要領で足首のベルトを切りにかかる。……とても間抜けな格好になっているが、そんな事を言っていられる状況でもない。 悪戦苦闘しながらも、足のベルトを切ることに成功したわたしは、ベッドから降りて辺りを見回す。 「ここ、どこなんでしょう」 06 #hollytk

2015-10-21 21:42:18
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広い病室には、ベッドが六つ。わたし以外が寝ている様子はない。湿気と黴臭い匂いの漂う病室は静寂に包まれ、わたしの息遣いだけが響く。 とりあえず、残った左手のベルトを切ろう。そう思ってわたしがベルトに角を押し当てた時、廊下から足音が聞こえた。 07 #hollytk

2015-10-21 21:44:15
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革靴が古びたリノリウムを叩く音が響く。 「……」 わたしは右手のベルトを諦め、ドアへ向き直った。 足音が近付き……立ち止まり……ドアを、開ける。 「……え?」 わたしは足音の主の姿を見て、呆然とする。 08 #hollytk

2015-10-21 21:46:12
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白衣を着た男は、死んでいた。頭は半分ひしゃげ、左目はあらぬ方向を向いたまま乾いている。 「元気すぎる患者がいると聞いてね。ほらおいで、注射の時間だ」 そう言った男の右手には、大きな注射器。 男は死んでいる事を感じさせない足取りで、わたしへと歩み寄ってくる。 09 #hollytk

2015-10-21 21:48:44
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「さあ」 「ひっ……」 固まっているわたしの腕を、男の左手が掴む。乾燥した感触に、わたしはやっとこれが現実だと認識する。 「離して……離せっ!」 腕を振り回すが、男の力は意外に強い。 「このっ……」 「だめだよ暴れちゃあ。針が折れたら危ないよ」 10 #hollytk

2015-10-21 21:50:30
@hiiragi_r_t_d

男は注射器の針をわたしに見せる。眼前に鋭い針を突きつけられて、わたしは思わず身が竦む。 「おくすり打って、大人しくしてね」 「い……嫌」 注射器の中で、毒々しい色の液体が光を反射する。 「これを打つとね、病気がしばらくおさまるんだ。少しの間だけれど」 11 #hollytk

2015-10-21 21:52:28
@hiiragi_r_t_d

「嫌……やめて……大人しくしてますから」 「大丈夫、痛いのは少しだけだよ」 「嫌、嫌、嫌っ!」 かぶりを振るわたしに、男が顔を寄せる。腐乱した頬が歪み、肉片がわたしの頬に落ちる。 「だめだよ、おくすり打たなきゃあ」 「ひぃっ……」 息が止まる。嫌だ。怖い。 12 #hollytk

2015-10-21 21:54:16
@hiiragi_r_t_d

わたしはがむしゃらに角を振り回す。鋭い角が男の頭に突き刺さる。柔らかな脳を掻き回す感触が、頭にダイレクトに伝わる。 「だめだよ、おくすり打たなきゃあ」 男は倒れない。同じ言葉を繰り返しながら、わたしの腕をがっしりと掴んで離さない。 頭が真っ白になる。 13 #hollytk

2015-10-21 21:56:13
@hiiragi_r_t_d

「嫌……どうして……」 わたしは強くなったのに。バケモノになるために、辛い思いをして、酷い目にも遭って、なのに。 わたしの目から、涙が溢れる。 「だめだよ、おくすり打たなきゃあ」 男はわたしの言葉に答えず注射器を刺した。太い針が、白い肌に呑み込まれていく。 14 #hollytk

2015-10-21 21:58:28
@hiiragi_r_t_d

「痛っ……やめて……」 身を震わせるわたしに構わず、針はずぶずぶと沈んでいく。 「うん、いい子だね」 男は何かを確認した後、シリンダを押す。 「ひぃっ……あっ……冷たっ」 シリンダの中から毒々しい色の液体が、わたしの中へと注がれていく。 15 #hollytk

2015-10-21 22:00:36
@hiiragi_r_t_d

毒々しい色が、静脈を通じて広がっていくのが肌の上からでも分かる。 「うぅ……嫌……」 気持ち悪い。身体に得体の知れない液体を、しかも無理矢理入れられた嫌悪感と喪失感が、涙となってこぼれた。 「どうして……どうしてぇ…」 「おくすり打って、大人しくしてね」 16 #hollytk

2015-10-21 22:02:11
@hiiragi_r_t_d

男はそう言い残して、わたしの腕を離すと病室を後にした。 わたしは紫色に染まった腕を抱えて、床の上で丸くなる。 「どうして……もう嫌……嫌……」 薬の回った部分がじりじりと痺れて熱を持つ。わたしは冷たい床にすがるように、泣きながら眠りに落ちた。 17 #hollytk

2015-10-21 22:04:17
@hiiragi_r_t_d

──────── 【十三日目】 【生存】 【魂-2/次回診断時のみ力-2、探索-2】 【魂11/力3(5-2)/探索0(2-2)】 【異形】三ツ目(力+1、探索+2)、牙(力+2)、角(力+2) 18 #hollytk

2015-10-21 22:05:59
@hiiragi_r_t_d

[病院]「元気すぎる患者がいると聞いてね」注射器を手にした男の腐った頬が持ち上がった。笑ったようだ。《拘束解除状態なら麻酔を打たれる【魂-2/次回診断時のみ力-2、探索-2】、拘束状態なら回避》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541541 #hollytk

2015-10-21 22:06:11