黄昏町(九板)十四日目

手術を受けた。 初日/一日目→http://togetter.com/li/883761 前日/十三日目→http://togetter.com/li/890215 翌日/十五日目→http://togetter.com/li/890670
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@hiiragi_r_t_d

【十四日目】 【魂11/力3(5-2)/探索0(2-2)】 【異形】三ツ目(力+1、探索+2)、牙(力+2)、角(力+2) #hollytk

2015-10-23 00:31:25
@hiiragi_r_t_d

黴の生えた壁に手をつきながら、ふらふらと歩く。薬の影響か、奇妙な酩酊感と手足の痺れはなかなか治まらない。 幸運な事に、廊下には誰もいなかった。 「このまま、出口を」 建物には、きっと出口があるはずだ。歩く死者の恐怖を必死に振り払いながら、わたしは進む。 02 #hollytk

2015-10-23 00:34:24
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「はぁ……はぁ……」 痺れてガクガクと震える足から不意に力が抜け、リノリウムの床に投げ出される。 「痛っ……たぁ……」 わたしはそのまま、這いずりながら下階への階段を探す。 「早く……早く……っ」 誰かに見つかる前に。 03 #hollytk

2015-10-23 00:36:26
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這いずるわたしは、廊下が枝分かれしている箇所を見つけた。 あそこを曲がれば、階段があるかもしれない。わたしは力を振り絞り、少しだけペースを早める。 「はぁっ、はぁっ、はぁっ」 曲がり角まで3m……2m……1m… わたしは、角の柱に手をかけ、体を引き上げた。 04 #hollytk

2015-10-23 00:38:15
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そこには、階段などなかった。手術衣を着た集団が集まり、何やら話している。 手術衣の一人がわたしに気付き、視線を向ける。 「おや……?」 「う……あ……」 わたしは恐怖に眼を見開く。 マスクに隠された男の顔は、黒くグズグズに腐敗し崩れ落ちていた。 05 #hollytk

2015-10-23 00:40:08
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「君、特別室の患者を見かけなかったか?」 「ひっ……み、見てないですっ」 「大丈夫?」「立てるかい?」「手を貸そう」「い、いいですっ」 後ずさるわたしを、腐った男達が取り囲む。 そして男達のうちの一人が、手元のカルテに目を落としながら言った。 06 #hollytk

2015-10-23 00:42:22
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「特別室の患者は九板真筆。みんな、写真を確認してくれ」 「了解」「まひつって読むんですね」「……うん?この写真って」「おお」 男達がわたしを見る。そして一斉に、手を伸ばす。 「嫌っ、やめてっ、離せぇっ」 抵抗も虚しく、あっさりとわたしは担ぎ上げられる。 07 #hollytk

2015-10-23 00:45:06
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「手術箇所は」「カルテにあっただろ」「頭部の骨性腫瘍の切除」「注意深く、スピーディーに済ませろ」 頭部の骨性腫瘍?わたしは自らの頭に触れる。鋭い角が、存在を主張する。 「まさか、角……ッ」 「あと少しの辛抱だ」 「そん……な……嫌だぁっ!この……離せっ!」 08 #hollytk

2015-10-23 00:46:23
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わたしの渾身の肘鉄が、男の顔面に入る。昨日打たれた薬のせいか、わたしの肘は虚しく男の顔を撫でただけだった。 わたしの手足が、力無くだらりと垂れる。 男達はわたしを乱暴に手術台に乗せた。 一人が小振りな鋸を手に取る。わたしはそれを、虚ろな瞳で見つめていた。 09 #hollytk

2015-10-23 00:48:33
@hiiragi_r_t_d

「これより、手術を開始する」 カルテを持っていた男に鋸が手渡される。いくつかの電球が割れた無影灯が点灯し、鋸の歪な影をわたしの顔に落とした。 この鋸でわたしの角を切り落とすつもりなのか。 嫌だ。折角得た、わたしの力なのに。 10 #hollytk

2015-10-23 00:50:37
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わたしは鋸の刃を見る。男が鋸を、角に添える。 「奪われるくらいなら、いっそ……っ!」 わたしは鋸に手を伸ばし、握り締める。骨まで達する傷口から、ドクドクと血が流れる。 わたしは刃を引き寄せ、自らの首に添えて、思い切り引いた。 熱い鮮血が、男の手を濡らす。 11 #hollytk

2015-10-23 00:52:36
@hiiragi_r_t_d

「ざまあみろ、です」 慌てる男達を見ながら、わたしは満足気に笑った。 このままわたしが死ねば、角は奪えないはずだ。 しかし、わたしの意識が途切れる事はなかった。 首に触れると、傷口が塞がっている。 「な……にが……」 12 #hollytk

2015-10-23 00:54:30
@hiiragi_r_t_d

「良かった、どうにか間に合ったようだ」「手術を続行せよ」 唖然とするわたしを無視して、男達は仕事を進める。 角に鋸が添えられ、少しづつ刃が食い込んでいく。 「あ……あ……」 わたしは何もできないまま、ついに角はぽっきりと折れた。 13 #hollytk

2015-10-23 00:56:16
@hiiragi_r_t_d

折れた角がワゴンに乗せられ運ばれていく様子を、わたしは呆然と眺めていた。涙も出なかった。額に少しだけ残った、角の根元がじくじくと痛んだ。 「嘘……嘘……だよね……」 わたしは額に手を当てる。ギザギザに尖った切り口が、わたしの指を傷付けた。 「嫌…嫌だ……」 14 #hollytk

2015-10-23 00:58:21
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「大丈夫かい?」「もう少し切ろうか?」 わたしの顔を、男達がのぞき込む。 ふざけるな。わたしの角を奪っておいて、そんな、そんな顔をして、 「わたしを憐れむなぁぁぁぁぁっ!!」 わたしは男の顔を掴んで上を向かせ、剥き出しになった喉に噛み付いた。 15 #hollytk

2015-10-23 01:00:06
@hiiragi_r_t_d

牙が腐肉を掻き分ける柔らかい感触と、吐き気を催す腐った匂いが口の中に充満する。わたしはそれを無視して、更に牙を突き立てる。鈍い音がして、牙が頚椎を切り離した。 「はぁっ、はぁっ、ゲホッ、」 わたしが口を離すと、首を失った男はドサリとその場に崩れ落ちた。 16 #hollytk

2015-10-23 01:02:19
@hiiragi_r_t_d

「おい、鎮静剤!」「早く!」 男達がにわかに慌てだす。 「許さない……絶対に許さない」 わたしは男達が伸ばす手をかいくぐり、掴む腕を喰い千切った。麻酔は、いつの間にか切れていた。 「殺す……全員!殺すっ!」 三人目の首を喰い千切ったわたしは、咆哮を上げる。 17 #hollytk

2015-10-23 01:04:47
@hiiragi_r_t_d

四人目に飛びかかろうとしたわたしは、後ろから羽交い締めにされる。 「この……っ」 わたしは腕に噛み付くが、喰い千切るには至らない。 その首筋に、銃のような姿をした器具が当てられる。 「何を……がっ!?」 間髪入れず、器具から薬液が放たれた。 18 #hollytk

2015-10-23 01:06:04
@hiiragi_r_t_d

首筋に冷たい感触。触れてみるが、濡れてはいなかった。 「鎮静剤だ。落ち着くまでしばらく眠りなさい」 「あ…………く……っそ……」 目の前が暗くなり、床が急速に近付く。 まだ、まだあいつらを殺せてないのに。 19 #hollytk

2015-10-23 01:08:14
@hiiragi_r_t_d

わたしは、男の足を掴む。それがやっとだった。 意識が完全に失せ、角の欠片が床に当たって軽い音を立てた。 20 #hollytk

2015-10-23 01:10:20
@hiiragi_r_t_d

──────── 【十四日目】 【生存】 【魂-2/『角(力+2)』を失う】 【魂9/力3/探索2】 【異形】三ツ目(力+1、探索+2)、牙(力+2) 21 #hollytk

2015-10-23 01:11:20
@hiiragi_r_t_d

[病院]真っ黒な肌をした手術衣の集団が廊下を徘徊している。「特別室の患者を見かけなかったか?」《探索3以下+拘束解除で強制手術【魂-2/所持している異形をひとつ失う】探索4以上or拘束状態なら回避》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541541 #hollytk

2015-10-23 01:11:59